139話
じーさんと三郎さんが先走って、周りの人に、里香が妊娠したって言ってしまったらしい。
「で、でも大丈夫だぜ真司くんっ。開田グループのなかでしか言ってないからさっ」
正座してる三郎さんが慌ててそう弁明した。
「グループの人が、たとえば持ち帰って、その人の家族に言ってたらどうするの?」
「そ、それは……」
「人づてにドンドンと誤解が広がっていったら?」
「……ごめんなさい」
しゅん……と三郎さんがうなだれる。
「おれぁ……お祝い事はみんなで祝いたくてよぉ」
……まあ、悪い人じゃ無いんだ。
祝ってくれようとしている。その気持ちはうれしい。
「わかったよ。でもあやふやな情報を広めたことで、里香が迷惑するんだ。今後は気をつけてね」
「え? ゆ、許してくれる……?」
……正直今も腹は立っている。
けど……まあ三郎さんは家族みたいなもんだし。
それに反省してるしね。
いつまでも怒ってても仕方ない。
「うん」
「やった! 真司君ごめんよー! 里香ちゃんもごめんねー!」
ちら、と里香を見る。
「ごめんね、うちの人たちが暴走して、君に迷惑かけちゃって」
「う、ううん。いいの。それに……」
「それに?」
里香が頬を赤らめていう。
「し、しんちゃんと結婚したら……その人達も、家族になるし……」
だから許すってことだろうか。
なんて心の広い子なんだろう。ますます好きになってしまうじゃないか!
「ふぉふぉふぉ、結婚は秒読みじゃのぅ。いつする? 式場は抑えよう」
……このジジイ。
やっぱり、ちゃんとお説教してくれる人を呼んで、正解だったな。
そのときだ。
ピンポーン……♪
「なんじゃ?」
「お爺さま」
「げえ……! りゅ、流子ぉ!?」
高原じーさんの直系のお孫さん、開田流子ちゃんが、贄川次郎太さんといっしょに、やってきたのである。




