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137話



 里香の家で、ぼくは里香ママこと山雅やまがさんに報告した。

 妊娠では無く、単なる生理不順だったそうだ。


 ……ぼくはほっとしていた。それは別に、今から子供を持つことに、ぼくが不安を抱えていたからじゃないよ?


 ぼくが一番気にしていたのは、里香のことだ。

 彼女は凄い今回の件で、ひとりで抱え込んでしまっていた。


 子供ができてしまったらどうしようってね。

 里香は多分、まだ親になる準備ができていないんだ(マインド的に)。


 その準備ができるまえに、子供を作ってしまったら、きっと子供を不幸にしてしまう。

 そう考えての、不安だったのだろう。里香は責任感が強いし、やさしいんだ。


 それはぼくがよく知ってる。

 クリスマスの日、元カノに酷いことされて落ち込んでいるぼくを、里香が救ってくれた。


 そんな優しい彼女だから、生まれてくる子供を、不幸にしてしまうかもって思ってしまったんだろう。

 本当に優しい子だ。


 だから、里香の不安が解消されて、ぼくはほっとしているってわけ。


 さて。


「この大量の花輪どうしようか……」


 先走ったアホのじーさんが、ぼくらに花輪を送ってきたのである。

 もう……あの人は……。


「ど、どうしようしんちゃん……?」

「大丈夫だよ里香。そのうち来るから」

「だれが……?」


 そのときだ。


「わしじゃよ」

「じーさん……」


 開田かいだのじーさんが、ニコニコしながら、ぼくらのもとへやってきた。

 玄関先に立つ彼は、そりゃあもう、幸せそうな顔してらっしゃる。


「ひ孫用のベビー用品を買っておいたぞ! あと……家も」

「「家ぇ……!?」」


 里香とダリアが驚いている。

 山雅やまがさんは言葉を失っていた。そりゃそうなる……。


 このじーさんの頭いかれっぷりを知ってるの、この中じゃぼくくらいだからね。

「じーさん」

「大豪邸を用意したぞ! じぃじもいっしょに住めるようにな!」

「じーさん、ちょっと顔貸せ、な?」


 ……あまりにもじーさんが人の話聞かなそうだったので、ちょっと怒ってしまった。


「おお、なんだ真司よ……?」

「うん、ちょっと」


 ぼくはじーさんと……。


「三郎さんも、ちょっとツラ貸せ、な?」

「ひぃ! し、真司君……? お、怒ってるぅ?」


 花輪の後ろに隠れていた三郎さん。

 そのデカい図体を、それで隠せると思ったんだろうか……。


 しかし怒ってるかって?

 はは。


「もちろんでしょ」

「ひぃ!」


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