136話
「え!? 妊娠じゃなかったの!」
……里香のお母さん、山雅さんが驚いた調子で言う。
ぼくらはうなずく。
「諏訪医大で調べてもらったんですけど、妊娠じゃ無かったんです」
「うっそぉー……絶対赤ちゃんできたんだーって思ってたのに……」
山雅さん、ちょっと残念そう。
まあ孫ができるかもって思ったのかもね。
「でも生理は1ヶ月くらいきてなかったんでしょ?」
「うん。でも、それも別に妊娠だからってわけじゃないみたい。精神状態が普段と変わったから、その影響かもねって」
里香のいう普段と変わったって言うのは、ぼくと付き合って、その後えっちまでしたことを指しているらしい。
「そっかー……そうなんだ。ちょっぴり残念ね」
「残念……って、お母さん怒らないの?」
「え? なんで? お祝い事でしょ?」
「そりゃ……でも、高校生でもし妊娠なんてなったら……世間体とか……」
すると山雅さんは微笑んで、里香の頭をなでる。
「世間体なんて気にしないよ。里香が幸せなら、里香が望んでいるなら、あたしは否定しないよ」
「まま……」
きゅっ、と里香がお母さんに抱きつく。
「あなたが望んで、真司君が覚悟を決めてるんだったら、あたしはとめはしないよ! たとえ高校生でそうなってもね。それでとやかく言うやつが現れたら……ママがぶっとばしてやっから!」
……娘第一に考えてくれている、山雅さん、ほんと良いお母さんだなぁって思った。
ピンポーン……。
そのとき、ドアチャイムが鳴った。
「あーしみてくるわ」
ダリアが玄関へと向かう。
そして……。
「なんじゃこりゃー!」
ダリアの叫び声だ。ど、どうしたんだっ。
ぼくは里香達といっしょに玄関へ向かうと……。
「な、なにこの大量の花!?」
そう、どこの芸能人あてのですかってくらい、大量の花輪が届けられていた。
【祝 出産】という文字を見た瞬間……。
ぼくは悟った。
「……三郎さん、じーさん。あの馬鹿ふたりは……」
このこと知ってるの贄川兄弟だけだし。
次郎太さんが口を滑らせるわけないし……。
そうなると三郎→本家のじーさんのラインが見える。
……うん、これはちょっとお説教だね。




