134話 暴走ジジイ、制御するターミネーター
《次郎太Side》
「いやぁ、よもやよもやだなぁ、兄貴ぃ」
開田家に仕える男、贄川三郎、および兄の次郎太は、開田家へと戻ってきた。
「まさかあんなことになるなんてなぁ」
「……三郎」
屋敷に戻る前に、次郎太は三郎に釘を刺しておく。
「なんだい兄貴?」
「わかってると思いやすが、上田様と松本様の件、高原様には……」
「わーってるって、内緒でしょ?」
……わかっているのだろうか。
どうにも弟は口が軽いところがある。同じ環境で育ったはずなのに、弟はお調子者になってしまった。
「大丈夫大丈夫、おれ、口堅いから」
「……だといいですが」
次郎太はため息をつきながら、しかしこの弟のことだから……。
「次郎太よ!」
その日の夕方。
次郎太が高原と孫の流子のために、夕飯を作っていたところ……。
「聞いたぞ! 次郎太!」
……高原の顔が、キラキラと輝いている。
ああもう……と次郎太は、半ばこうなることを予想していたので、ため息をつくしかなかった。
「なぜ真司と里香のこと、黙っておったのだーもー! じぃじは今から楽しみだぞい!」
……ぞいって……。はぁ……。
「高原様。あまり、あのお二人に干渉するのはよろしくありません」
「む? なぜじゃ? 喜ばしいことではないかっ?」
この老人は本気で、喜ばしいことだと思っているようだ。
まあ確かにそうだ。うれしいことではあるだろう。
「お二人はまだ、未成年です。ソンな状態で、この件が知られてしまったどうでしょう?」
「むう……」
「世間の目というものがございます。おふたりはまだ学生、周りから奇異な目で見られてしまうのは必定かと」
「しかし……しーかーしー! じぃじは祝いたいぞい!」
……ぞいって。
子供かこいつは。
「それにまだ、お二人がどのようにするのか、決めておりませんぜ」
「なんじゃと! そんな……こんな嬉しいことを、無かったことにしようとするのか!? ゆるさーん!」
「許す許さないもございません。決めるべきは、当事者でございやす」
「ぐぬぅうう……しかしぃ~……」
はぁ、と次郎太はため息をつく。
この老人の行き過ぎたところは、次郎太も承知しているところ。
ほっとくと大暴走を起こしてしまうので、釘を刺しておく。
「上田様たちがどうするのか、決めるまでは、黙って見守ってあげるのが吉だと思いやす」
「むぅうう……わかった。おぬしの意見を尊重しよう」
よかった……と次郎太は安堵の息をつく。
とりあえずは、時間を稼いだ。
あとは真司たちが、どう選択するかだ。
……その前に。
「三郎ぉおおおおおおおおおおおおお!」
「ひぃいいい! ごめーんにいちゃーーーーん! 高原様がPS5買ってくれるって言うからぁ!」
「貴様何歳だぁああああああああああああああああああああ!」




