123話 ある変化
《里香Side》
時は移ろい、3月頭。
松本里香は目を覚ます。
「…………」
このところ、一つの大きな悩みを抱えていた。
1月下旬に真司たちと旅行し、そこで彼氏と初めて結ばれて……そしてちょうど一ヶ月が経過する。
「……来ない」
そう、だというのに、来るべきものがこないのだ。
最初は、そんなに気にしていなかった。
でもさすがに、ここまで来ないと不安に駆られる。
「りかちゃーん」
「ママ……」
母が心配して、里香の部屋へとやってくる。
かつて水商売をしていた母の山雅は、今は高級レストランでシェフとして働いている。
山雅は心配そうな表情で、娘の里香に尋ねてくる。
「どうしたの? 具合悪いの?」
……あまり母を不安がらせたくなかった。
母は今、新しい仕事を始めたばかりだ。
休ませるわけには行かない。
「ううん、大丈夫。ちょっと重いのが来て」
そいって、里香はお腹をさする。
「なるほど……まっててね!」
そういって母は一度退出し、湯たんぽを持って現れる。
「はいこれ! お腹に当てて、今日はゆっくり休みなさい」
母は気を遣ってくれる。その優しさを嬉しく思う一方で、【嘘】をついてることが、とても彼女の心を傷つけた。
「うん……ありがとう」
それでも母に迷惑をかけたくないからと、嘘をつく。
「やっちゃんもお仕事やすむ!」
「もう、娘の生理くらいで仕事休めるわけないでしょ。ほら、いったいった」
「ちぇー。じゃあねりかちゃん」
母が出て行った後……里香は不安で押しつぶされそうになる。
「……どうしよう。なんて言えばいいの?」
まさか、真司と旅行へ行ってから、つきのものが来ていないなんて……。




