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121話 里香悩み、ダリア聞く



《ダリアSide》


 真司の祖父の家に、ダリアたちは泊ることになった。

 その日の夜。


 ダリアが眠ってると、自分の布団の中に、誰かが入ってきた。

 一瞬真司か……? と期待する自分がいて、自己嫌悪する。


 恋人がいるのに、真司がそんな不義理なまねはしない。

 わかっていても、やっぱり期待する自分がいて、ほんと、だめだなぁって思った。


「……りかたん?」


 消去法で、里香となる。

 思った通り里香が、不安そうな顔でやってきていた。


 ダリアはため息をつく。

 多分真司関連だろう。この子の心が揺らぐのは、いつも真司に関することで、何かが起きたときだけだ。


 ダリアは里香をぎゅっと抱きしめる。

 少しだけ、彼女のこわばった表情がほどける。


「……どったん?」

「うん……あのね……元婚約者のことなんだけど」

「ああ……流子ちゃんね」


 今日初めてきかされた、真司の婚約があったという事実。

 多分それに驚き、嫉妬してしまって……。


「お兄ちゃんに、申し訳ないって思ったのね」

「……すごい、どうしてわかるの?」

「まあなんとなく」


 里香が小さくつぶやく。


「……いつも、しんちゃんにたくさん、愛してもらってるのに。元カノというか、元婚約者ごときに、揺らいじゃったわ。しんちゃんは、あたしのこと一番って言ってくれてるのに……」


 信頼を裏切ったみたいにおもえて、そんな自分に自己嫌悪した訳だ。

 ダリアは苦笑しながら、頭をなでる。


 それは奇しくも、ついさっき自分が義兄に感じたのと同じ感情だったからだ。


「それはね、人間だったら当たり前に起きる反応だから」

「そうかな……?」

「そうだよ。人はロボットじゃ無いんだから。嫉妬するし、自分が嫌になることもある。でもあんまり自分を責めちゃあいけないね。辛いだけだから」


 よしよし、と里香の頭をなでる。

 里香がダリアの体にきゅっとだきつく。


「どうすれば、揺るがないかな」

「どうにもできないよ、人間なんだから」

「そっか……」

「そうだよ。また辛くなったらいつでもおいで。お姉さんがよしよししてあげるからさ」


 ね、とダリアが言うと里香が少しだけ微笑んだのだった。

 そして小さな声で言う。


「……愛の証、ほしいな。赤ちゃんとか……」

「いや……それは早すぎでしょ」

「だ、だ……だよね。あはは……無理だよね……赤ちゃん。だってあたし達、高校生だし……ね」


 でも、その表情は真剣だった。

 本当の真司との間の赤ん坊がほしいようだった。


「そうだよ。さすがに高校生で出産は、アウトだよ。お兄ちゃんも覚悟できてないだろうし。準備も覚悟もないままだと、生まれてくる子が不憫だよ」


 ……それに対して、倫理的なアドバイスしかできない自分がいた。

 

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