116話
本家のじーさんの家に、挨拶に来たぼく。
そこへ……。
「失礼しやーす! お嬢さま連れてきましたー!」
ターミネーター贄川三郎さんが、部屋に入ってくる。
「お嬢さま?」
ダリアと、そして里香が首をかしげる。
ダリアもだけど、里香は会うのはじめてだったっけ?
「おお、来たか流子よ!」
部屋に入ってきたのは、白髪の美少女だ。
艶のある白髪に、ウサギみたいに赤い目。
小柄で、上品な佇まいの、和服の美少女。
思わず里香も見とれてしまっている。
「やぁ、真くん」
「しんくん!?」
里香がぎょっ、と目を剥く。
「こんちは、るーちゃん」
「るーちゃん!?」
里香がまたぎょっとする。
久しぶりのるーちゃんだ。
「元気してた? るーちゃん」
「ああ、息災だ。真くんも元気そうで何より」
ぼくらが話してると……。
「しんちゃん!!!!」
ぷくーっとおもちみたいに、里香が頬を膨らませていた。
あれ、どうしたんだろう?
「このちっこい子誰!?」
「だれって……元婚約者」
「こんやくしゃぁああああああああああああああああああああああ!?」
里香が絶叫して頭を抱える!
え!? ど、どうしたんだろ!?
「あばばば、婚約者……婚約者……」
「りかたん落ち着いて、元だって言ってたよ」
「はっ!? ほ、ほぉう……良かった……で、だ、だれなのあんたっ?」
里香がるーちゃんに尋ねる。
るーちゃんは微笑みながら、流麗な所作で頭を下げる。
「初めまして。開田流子と申します」
「かいだ……? え……じゃあ……?」
ちら、と里香が本家のじーさんを見やる。
「うん。この人の孫」
「そ、そうなんだ……」
ダリアが得心いったようにうなずく。
「仲よさげなのは、親戚だからなんだね」
「うん。小さいときから一緒だったから」
へえ……と里香がむくれた顔で言う。
「好きなのっ?」
「まあ」
「まあ!? きー! しんちゃんの浮気者ー!」
「えええええええええええ!?」
な、なんでそうなるのっ!?
ぼくが好きなのは里香だけなのにっ!
「落ち着きたまえ、君。真くんの好きは異性としての好きじゃないぞ」
「え、そ、そうなの……?」
こくん、とぼくはうなずく。
親戚だしね。
「そ、そっか……あ、でも元婚約者ってのは?」
「そこの頭のオカシイ祖父が、勝手にワタシと真くんをくっつけようとした時期があったのだよ」
「………………イカレテるわ」
「だろう?」
くつくつ、とるーちゃんが笑う。
本家のじーさんは特に気にした様子もなく、孫であるぼくらのやりとりを見ていたのだった。
「三郎、録画できておるか?」
「ばっちりっすよぉ高原様! 4K画質で!」
……うん、クレイじぃじだ。今日も。はぁ。




