115話
ぼくは開田のじーさんの家に来ている。
じーさんがなぜか、ぼくと里香がやったことを把握していた……。
まあ、考えてみても、あのとき停まった熱海のホテルは、開田グループのホテルだった(三郎さんいたし)。
だから、まあ把握しててもおかしくないわけで……。
でも里香にこのことを言うと、絶対に気持ち悪がられる……。
じーさんのきもいっぷりは、家族のぼくでもドンびくほどだからね。
あとで二人きりのときにケアしておこう。そうしよう。
「里香、ダリア。よく来た。じぃじは会いたかったぞい♡」
ぞいじゃねえよ。
ニコニコ顔のじーさんに、ふたりは頭を下げる。
「ま、松本梨香です。しんちゃ……信二君の彼女です」
「改めて、上田ダリアです。その説はどうも。これを」
そういって、ダリアが包みをじーさんに渡す。
え? 包み?
三郎さんが受け取って、目を剥く。
「こりゃあ高原様の好物、栗粉餅じゃねえか!」
はて、と里香が首をかしげる。
「なぁに、くりこもち、って」
「長野のマイナなおかし。じーさん好きなんだ」
しかし、いつの間に……。
「あーしが作ったの」
「作った? すご……」
タッパに入ってるのは、どう見ても店で売られてるような、栗粉餅だった。
見た目は栗きんとん。
もちのうえに栗のペーストが乗ってる感じ。
てかすご……。
「わしのために作ってくれたのか! うぉおおお! 感激じゃああああああああああああああ!」
じーさん、大興奮。
もう……やめてほしいなぁ。
「でもいつの間に?」
「家を出る前にぱぱっとね。前に好きだって聞いてたし」
な、なるほど……しかし手土産か。
考えもしなかったな。
さすがダリア。気が利く妹だ。偉い!




