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113話



《ダリアSide》


 ダリアは義兄の真司、友達の里香とともに、真司の祖父の家にやってきた。


「わ、わー! 中もすごい豪華ねえ」

「え、そうかなぁ」


 学校なんて比じゃないレベルの、長くて広い廊下。

 そしてそこら中に壺やら、掛け軸やらと、豪華な装飾品。


 部屋も数え切れないほどあって、これで『そうかなぁ』と義兄が言ったことに、ダリアは驚愕する。


「こんなの普通じゃない?」

「ふつうじゃないよお兄ちゃん……」


 えー、と納得いってない様子の真司。

 これで普通だったら、じゃあ里香が前にすんでいたぼろアパートはなんだ?


 鶏小屋か?

 

「ささ、奥で高原さまが待ってるよーん」


 贄川三郎と名乗った黒服に中を案内してもらう。

 里香はあちこち見ながら「わーすごい!」と純粋に感心している。


 ダリアは……恐怖すら覚えた。

 なんなのだこの金持ちっぷりは。


 令和日本に、こんな武家屋敷みたいなものが存在してる時点でおかしい。

 黒服のお手伝いさんと何人もすれ違った。おかしい。


 ……極めつけは、ここまで異常な空間の中、一人平然と歩いてる真司だ。


「お兄ちゃん……がちのマジの、お金持ちだったんだね……」


 思えば真司が住んでいるのはタワーマンションだ。

 しかも父と母は別に暮らしてるとのこと。


 ……子供ひとり(正確にはダリアと入れて二人だけども)で住むには、十分過ぎるほどのマンション。

 それをぽんと買い与える……開田高原なる人物。


 やばい、相当やばいやつができてもおかしくない……。

 急に怖くなってきた。


 ダリアが震えていると……ふわ……と真司が手を握ってくる。


「迷子になると大変だからね~」


 ……まったく、この義兄は。

 どうして、こうも優しいんだろうか。


 思えば自分が闇に沈みかけていたとき、誰よりも早く自分を助けてくれた。

 真に富めるものは、弱い人を呼吸するかのごとく、助けるのだろうか……なんて。


 そんなことを思ってしまった。


「どうしたの、ダリア?」

「ううん、お兄ちゃんかっこいいなーって思って」

「えー、照れるなぁ」


 金持ちだからって、真司は真司。

 優しいお兄ちゃんだって……ダリアはそう思うのだった。


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