第27回:真夏の温泉旅行《前編》
【SIDE:西園寺恭平】
夏だ、海だ、スク水だ!!
海の香り漂う素晴らしき蒼い世界、俺達は今、夏の海にやってきた。
真夏の海は日差しが強く、暑いけれど、抜群の天候は心地よい。
「……どうして人は海を見ると海だ、と叫びたくなるのだろうか。なぁ、麗奈?」
「いや、私に聞かれても困りますよ」
「では、なぜ人は海を見るとスク水だ!と叫びたくなるのだろう?」
「そんな変態は貴方だけです。消えてください」
海を眺めながら、麗奈が俺の隣で冷静に突っ込みをいれる。
暑い季節なのに何だか冷えるな……特に心が寒いです。
……妹が冷たい、麗奈が冷たいよぉ。
俺の涙は潮の香る海の味がするぜ……笑えねぇ。
「些細な疑問に笑顔で答えてくれる妹が欲しいよぉ……」
「そんなの私に期待されても困るんですけど。エレナにでも聞いてください」
俺はゆっくりとこちらに歩いてくるエレナに目線を向けた。
興味津々とばかりに蒼い海を見渡している。
「うわぁー、海だぁ!ねぇ、おにーたん。海だよ、海っ」
大きなアーモンドのような瞳がキラキラと輝く海を映している。
エレナはずっと病院に入院していたから海を見るのは初めてか。
「エレナ、どうして人を海だって叫びたくなるんだろうね」
「海がそこにあるから。だって、ウキウキするじゃない。こんなに解放感があって、すっごく広いんだよ。もう叫ばなきゃダメ?むしろ使命感に溢れるもん」
「やっぱり叫びたくなるよな」
「うんっ!海だ~っ!」
やはり、俺の事を理解してくれるのはエレナだけだよ。
俺達は軽くハグしあうと、麗奈はどこか呆れるように、
「……ずいぶんと仲のいい従兄妹ですね。兄妹みたいですよ」
「褒めないでくれ、照れるじゃないか」
「小学生相手に変態度が増してます。どうでもいいですけど」
と言うわけで、俺達3人で旅行にやってきました。
1泊2日の温泉旅行、今まで以上に兄妹の仲を深めるチャンス。
俺達はまずは海に入ろうという事で水着に着替えてくる。
さぁて、妹達はどんな水着かな……俺はものすごく楽しみにしていた。
俺はブーメランパンツにしようと思って、意外に恥ずかしかったのでやめました。
フィット感が違うから好きな水着ではあるのだが。
さて、マイエンジェル達が来るの待つまで妄想でもしてよう。
『やぁ……お兄さん、恥ずかしいから見ないで』
頬を赤く染めながら、水着に身を包む麗奈。
『私、おにーたんのためなら……何でもするから』
まるで透けそうなほどの白い肌が魅力的なエレナも加わる。
『『私たちだけのお兄ちゃんっ♪』』
……ふはは、俺はどれほどの幸せものなんだろう。
美少女ふたりに囲まれてここはまさに夢の妹パラダイス。
やばい、興奮しすぎて鼻血が……すみません、自粛します。
真夏の妄想はアバンチュールで危険だぜ……。
「お待たせしました」
ようやくやってきた麗奈の声に振り向くと……あれ?
期待に満ちた俺の前はスク水ではなく、大人びたビキニ水着を着た麗奈がいた。
白い肌の脚線美には目を引かれるが、ちょっと胸辺りが寂しかったりする。
「……スク水は?お約束は?」
「まず一言目がそれですか。別にお兄さんに見せるために着たワケじゃないですから」
あ、拗ねちゃった……。
麗奈のスク水に期待してたんだからしょうがないじゃない。
俺は麗奈が拗ねるので何とかしようと褒めまくる。
「それも可愛いね。今までないくらいに新鮮かも。へぇ、麗奈もそういうお年頃なんだ。似合ってて、すごく可愛いよ」
「棒読みですか……お兄さんって、スク水じゃなかったらテンション低いですね」
「そ、そんなことないよ?ホントだよ?」
妹ゆえにお兄ちゃんの弱点をよくご存知で。
スク水マニアである以上、テンション4割ダウンはしょうがない。
少々、気落ちしつつそのままエレナの登場を待つ。
「おにーたん~!!」
元気のいい声でこちらに向かってくるエレナ。
太陽の眩しさを身体に浴びて、とびっきりの輝きを見せるその姿。
キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!!!!
可愛らしいの笑顔の金髪美少女が着ているのはなんとスクール水着だった。
スクール水着、それは男が愛してやまないロマンと言う名の幻想。
紺色のスクール水着、それは天使の名を持つ羽衣。
黒色のスクール水着、それは憧れを現実に変える妄想の象徴。
白色のスクール水着、それは魅力を凝縮した甘い果実。
だから、俺はスク水が大好きだ、愛してる!
「よしよし、エレナ、すっごく似合ってる。いやぁ、エレナはそれを着るために生まれてきたんだよ。もうっ、超プリティー!」
「えへへ、おにーたんに褒められちゃった」
俺が頭を優しく撫でると嬉しそうに笑う。
スク水は人類の宝物なんですよ!
スク水を着こなすその魅惑、さらに砂浜を駆ければ推定Dカップの胸が揺れる。
神はなぜこのような美少女をこの世界に生み出したのでしょうか。
「恭平おにーたん、大好きっ」
そう言って俺に甘えるように抱きつくエレナ。
おおっ、生スク水と胸の感触が俺の右腕に……。
人間とは本当の感動を覚えた時に何も言えなくなってしまう。
……生きていてよかった、この世界でこれほどスク水が似合う子は他にない。
「ホント、私のときよりテンション高いですね。別にどうでもいいですけど」
麗奈も魅力なんだけど、スク水の前には太刀打ちできるものはない。
俺達はそのまま準備体操をして海に飛び込んだ。
「恭平おにーたん。あれって何?」
「あれ?あぁ、クラゲだよ。多分、刺されたら痛いから近づかない方がいい」
「ふーん。クラゲかぁ……食べられるのかな」
いや、食べちゃダメだし、食べられるクラゲもいるみたいだけど俺は食べたくない。
エレナの事が心配ではあったんだけど、なんと彼女は泳ぎが得意だった。
長い髪が水面に綺麗になびいて、まるでその姿は人魚姫。
「すごいね、エレナ……昔より全然早いし」
泳ぎが得意な麗奈もびっくりするくらいに上手かった。
「エレナ、どうしてそんなに泳ぎが上手いんだ?」
「私はこう見えてもスイミングスクールに通っていたの。水とひとつになれるってすごく気持ち良いね。きゃはっ」
他の生徒が羨ましいぜ、あらゆる意味で(主に胸の部分)。
エレナも楽しんでいるようで何よりだな。
俺は麗奈の方を見ると彼女は口を膨らませるようにして俺と視線が合う。
「……お兄さんも泳いでくればいいじゃないですか」
「ひとりで泳げ、と?麗奈、おいで……ほらっ」
軽くその手を引いて浅瀬で一緒に泳ぐ。
彼女はなぜか何も言わずに俺についてくる、また珍しいな。
「……ごめんなさい」
小さな声で麗奈が言葉を発する。
「何が?」
「いろいろと、です……」
何やら麗奈にも考える事があるんだろう。
「そんな顔してないで楽しんでくれ。ホントに麗奈は可愛いな」
「お兄さんはそればかりですね」
「女の子は皆、可愛い。そういう奴はダメか?」
「いえ、それがお兄さんらしいと思いますよ。だから、私も……」
静かに瞳を瞑ると彼女は穏やかな表情で言う。
「……お兄さん、遊びましょうか」
気持ちを切り替えて麗奈もにっこりと笑顔を見せる。
何があったのかは知らないが、何かに悩んでいる様子。
ハッ、まさか麗奈が俺への想いに気づいてしまったとか言う超展開!?
『もうっ、私我慢できない。妹のままじゃ嫌なの!』
……ありえないか、自分で言うのもアレなんだけどさ。
麗奈は今、何を思って俺と接しているのだろう。
水の冷たさが俺達を包み込むように触れる。
「麗奈ちゃんはもっと自分に素直になったほうがいいよ」
いつのまにか後ろまで来ていたエレナが麗奈に優しい声で話しかける。
「麗奈ちゃんはおにーたんや私に甘えていいんだよ。昔から人に甘えるのが苦手なんだよねー」
彼女は麗奈に微笑みながら言葉を続ける。
「私は今が楽しいの。おにーたんがそばにいて、麗奈ちゃんもいてくれる。今が本当に楽しいから、麗奈ちゃんにも楽しくなって欲しい。せっかく、一緒にいられる時間が限られてるんだから楽しまないとね」
「えぇ。わかったわ、エレナ。それなら……えいっ」
「何、麗奈ちゃん?うわっ、冷たい」
水を掛け合って遊ぶ妹達を見ていると本当に心から幸せに思えてくる。
俺も彼女たちと楽しく接することにする、いやっほっー!
「おにーたん、ほらっ!おにーたんも私たちと遊ぼう」
エレナの無邪気さは人を本当に和ませる。
「お兄さん。早くしないと海の底に沈めます」
「それは勘弁してください」
それはともかく、美少女たちと一緒に夏の海を楽しむのは男として幸せの事だと思う。
「ふふっ、ホントに可愛い子達だな。お兄ちゃんは幸せだぞ」
夏の海と天使たち、ふたりの笑顔を見つめながら俺はそう誓うように心に秘めていた。
最後にもう1度言わせてくれ、スク水万歳ッ!!




