97.熱林の植物を採取してみました。
『ブルール、湯加減はどうだ?』
『ああ、丁度良い。結構落ち着くな。風呂っていうのはさ』
ブルールはだいぶご満悦のようだ。
気に入ってくれているようで何よりだな。
ブルールは自分で体を洗えないので俺がブルールを洗ってあげている。
まあ洗うといっても洗剤とかはもちろん無い訳で、お湯で汚れを落としているだけなんだが。
今までブルールはお風呂に入ったことがないだけあってか、かなり体が汚れていた。
そのためすぐに浴槽が汚れまみれになってしまったので、俺は何度も【浄化魔法】をかけるハメになった。
まあ、MPの増えた今の俺なら数回【浄化魔法】を使った所でまだまだ余裕はあるんだけどな。
『カンガの前世ではこういう事をするのが常識だったのか?』
『まあ、そうだな。これに加えてシャワーっていうものもあったが』
『シャワーっていうのは何だ?』
『何て説明すればいいんだろうな……? ホースから温かいお湯が出てくるイメージか? それを使って体の汚れを落とすんだ』
『そんなものがあるのか。異世界って面白いもんだな』
この世界にシャワーはないんだろうか?
まあブルールが知らないだけかもしれないけど。
そういえば俺、あんまりこの世界の人間の事を知らないよな。
ケロマと話すようになっても、結局ケロマは元日本人だから現地人とは違うし。
魔物の俺が直接現地人と話す訳にもいかないし、ケロマから聞くのが手っ取り早いか。
気が向いたら今度聞いてみよう。
しばらく温まってから浴槽を出て、タオルで水分をふき取る。
あっ、ちなみにタオルでふき取る前に【水操作】で体に付着した大半の水分はおとしていたりする。
そうしないとタオルがいくつあっても足らないからな。
『グリザー、待たせたな。入っていいぞ』
『ああ、ありがとう。では入らせてもらうとしよう』
浴室から出た俺はグリザーに声をかける。
するとグリザーは入れ替わるように浴室へと入っていった。
「グリザーさんって本当クールよね。それに比べてカンガったら……はぁ」
ケロマはため息をつく。
そんなにグリザーのことを気に入っているならグリザーをストーキングすればいいと思うんだが。
その方がせいせいするわ。
……でもそれだとグリザーが可哀想か。
とりあえず成行きに任せよう。
グリザーが浴室に入っている間、俺はブルールやケロマと話をして待っていた。
ケロマは意外にも普通に話していて、そんなに怒っていなかった。
本当、ケロマって気分屋だよな。
やっぱりいちいち反応しない方が良いのかもしれない。
そういう所がなかったら、結構頼りになるんだけどな。
俺がはぐれてしまったときとか、熱林の戦いの件もケロマがいたから良い結果になった訳だしさ。
そこはうまくやっていくしかないんだろうな……
受け流したりして、少しは対応できてきたが、やっぱりまだ疲れるわ。
しばらくしてグリザーが浴室から出てきたので、俺達はそのまま植物採取へ向かうことにした。
『カンガ殿、これは初めて見る植物ではないか?』
『いや、それもフワンネツゴウ草。ちょっとしおれかけているけど、さっきのと同じ草だ』
地上に上がり、植物採取をしている俺達。
そして何故か俺はグリザーの植物鑑定人になってしまっている。
どうしてこうなった。
『そうなのか。いやぁ、カンガ殿は丁寧で助かる。ブルール殿に頼んでも、首を振ってしか教えてはくれないし、ケロマ殿は一切話を聞いてくれないのだ。本当、カンガ殿だけが頼りだな』
グリザーは満足そうにそう言っている。
そう。
俺だけでなくブルールもケロマも【観察】を使えて、グリザーだけが【観察】を使えないのだ。
そしてブルールはしっかりと鑑定結果を伝えてくれないし、ケロマはそもそも話を聞いてくれないのだとか。
だから植物の区別がつかないグリザーは俺の所に聞きにくるようになったという訳だ。
というかケロマの奴、なんでグリザーの話を聞いてやらないんだろうか?
無視するなんてひどくないか?
別にグリザーとケロマは仲が悪い訳でもなさそうなものだが。
『どうしてケロマはグリザーの話を聞いてくれないんだろうな?』
『拙者にも分からぬ。ただ、ケロマ殿は何かを必死に探している様子だったな。それに絶対に振り向かせてやるみたいなことを言っていた気もする』
絶対に振り向かせてやるって……
それ、俺に対して言っているのか?
何か恐ろしいことをしてきそうで怖いんだが。
た、助けて、グリザーさん。
『ケロマの奴、恐ろしいことを考えていそうだな……何かあったら頼むぞ、グリザー』
『……カンガ殿も色々と大変なのだな。分かった。何かあったらそのときは拙者を頼ってくれ』
グリザーもケロマの恐ろしさを認識しつつあるようだ。
いいぞ。
そのままケロマ包囲網を固めるのだ。
後はブルールだけだな。
……まあ冗談はそれ位にして、さっさと植物採取を終わらせるか。
さすがは熱帯というべきか、植物の種類は今までいた場所に比べて豊富だった。
既に三十種類位は集まっただろうか。
もうそろそろ十分かな。
『よし、グリザー。そろそろ住処に戻ろう。ブルールとケロマを探して住処に戻るか』
『そうだな、そうしよう』
俺とグリザーはブルールとケロマを探すことにした。
ブルールは木の上にいた。
どうやら木の上にも植物が生えているらしいので、あちこちの木を登っていたのだとか。
木の上に植物が生えるなんて、さすがは異世界。
想像つかないわ。
一方ケロマはバッグにはちきれんばかりの植物を入れていた。
それも一種類の草だ。
あいつ、何を入れているんだ?
ちょっと【観察】をかけてみるか。
フワンネツド草
フワン大陸の熱帯に生息する植物。
高温と湿気が必要なため、熱帯でしか見ることはない。
この草の成分は土を固くする効果があり、建築に有用な植物である。
ふうん。
フワンネツド草ね。
何でそんなものを必死に集めているのか分からないんだが。
ケロマが建築をする訳でもないだろうしな。
とにかくケロマを呼び戻すか。
『おーい、ケロマ! そろそろ住処に戻るぞー!』
俺が【念話】をとばすと、ケロマはハッと我に返ったように振り向いてきた。
「あっ、カンガ、今いくねー!」
ケロマが何やらニヤニヤしながら俺の方へ向かってきた。
何か企んでいそうだな、コイツ。
警戒しておこっと。
住処に帰った俺達は、共有スペースにて採取した植物を出して、整理することにした。
俺とグリザーが集めたのは三十二種類。
地上にあるあらゆる植物を集めたから、結構種類は集まったな。
ブルールが集めたのは二十七種類。
そのうち十種類はかぶっていたから、実質十七種類新しく集めてくれたんだな。
木の上にしか生えないようなものもたくさん取ってきてくれたみたいだし、助かるわ。
そしてケロマが集めてきたのは……
『ケロマ……お前、これだけしか集めていなかったのか?』
「うん……ごめんなさい」
ケロマが集めてきたのは―――三種類。
そのうち被っていないのは一種類のみ。
フワンネツミン草という催眠効果のある草だけ。
さっきパッと見た通り、フワンネツド草ばかり集めてきたようだ。
一応他にも二種類は集めていたのな。
バッグの底の方にでも入れていたんだろうか。
まあ結局大差はなかったんだけど。
『なんでフワンネツド草ばかり集めていたんだ?』
「つい、見た目が気に入っちゃって……ごめんなさい」
『見た目が気に入るって……他の草と大差ないだろ』
「そうよね……分かったわ。私がどうかしてた。とりあえず邪魔になるから私の部屋に置いておいて、次に外に出るタイミングで地上に戻してくるね」
『分かった。是非そうしてくれ』
いちいち外に出られても困っちゃうしな。
後で戻してくれる分には構わないだろう。
あの草のどこに魅力を感じるのか意味分からないが。
さて、色々と草も集まったことだし、集めた草で【細工】とか色々してみますか。




