95.新しい住処をみんなで作ってみました。
巨大な猿。
見るからに強そうだが、実際はどうなんだろうか?
【観察】で確認してみよう。
ジャイアントシンミアlv60
HP 1260/1260
MP 113/ 113
攻撃力 1012
防御力 978
魔法攻撃力 802
魔法防御力 878
素早さ 912
スキル 不明
こいつがリーバンの言っていた要注意の魔物か。
こりゃ確かに危な過ぎるな。
全ての能力が高すぎる。
能力を見ることはできるから、地龍とかワイバーンクラスではないんだろうか?
こんなに強いというのにな。
一体どんだけ強いんだよ、そいつらはさ。
まあ俺自身が強くなったから【観察】で確認できる強さの相手が増えただけなのかもしれないが。
とにかく今の俺達じゃ、この巨大な猿相手に勝ち目はなさそうだな。
「みんな、今すぐ逃げるわよ! 私達に勝ち目はないわ!」
ケロマも同意見のようだ。
勝てそうもない相手に出会ってしまったら逃げる一択だよな。
逃げるだけなら何かしらの方法で足止めをしたり防御するだけで何とか凌げたりするしさ。
という訳で、俺達は全力で巨大な猿から逃げることにした。
巨大な猿はてっきり追いかけてくるものだと思っていたが、その様子は見られなかった。
そのため俺達はあっさりと逃走に成功することができたのだった。
『結局追ってこなかったな。まあそのおかげで助かって良かったんだけどさ。一体何だったんだ、アイツ?』
「多分私達が倒した鷲が目当てだったんでしょうね。川の龍さんの話では食べ物に目がない魔物ということだったし」
確かにその可能性は高そうだな。
食べ物に目がないのであれば、倒されたばかりの鷲であれば鮮度も落ちていなくて魅力的な食料になりそうだしさ。
まあどうして自分で狩らないのか不思議だが。
あれだけの強さがあれば自分で狩った方が早いだろうに。
『どうしてアイツ、自分で狩らずにわざわざ横取りするような真似をするんだろうな?』
『そうだな……オレの推測ではあるが、もしかすると強すぎるからこそ、そうしているのではないかと思う』
『どういう事だ、ブルール?』
強すぎるからこそ他の魔物の獲物を横取りする?
強くなると姑息になるというのだろうか?
よく分からないな。
『この熱林には魔物が数多くいる。だがオレ達を襲ってくる魔物はほんのわずかだろ?』
『確かにその通りだな』
襲ってくるのは俺達と同程度、もしくは強い魔物のみ。
弱い魔物は俺達に近寄ろうともしない。
あっ!?
それってもしかして……
『あの猿は強すぎるが故に、近寄っても獲物に逃げられてしまうということか?』
『恐らくそうだろう。あの図体じゃ隠れて狩りという訳にもいかないだろうしな。一種の生存戦略といった所か』
なるほどな。
だからこそ他の魔物の獲物を横取りしようとしているのか。
自分が生きる為に。
強すぎるが故に孤立していたんだな、アイツ。
なんだか可哀想になってくるな。
だからといって助けてあげようとは思わないけど。
俺、関わりたくないし。
『まああくまでオレの仮説にすぎないから、鵜呑みにだけはしないよう気を付けてくれ。それを過信しすぎて油断するなんて元も子もないからな』
『ああ、分かった。忠告ありがとな』
ブルールの仮説が合っていれば、俺達が魔物を倒したときに巨大な猿が現れた場合、倒した魔物を置いておけば逃げられる可能性は高いということか。
だが、心配なのはそういうときじゃないときにアイツと遭遇しちまったときだよな。
そうなると俺達を食べようとしてくるかもしれないしさ……
『今回は良かったが、魔物を倒したときじゃないときに遭遇したらかなり危なそうだな……』
「あっ、その心配はしなくていいわ。もうあの猿には【追跡】をかけておいたから、後は近づかないようにすればOKよ」
おっ、さすがケロマ!
こういうときに頼りになるわー。
初めてケロマがいて良かったと思えた瞬間かもしれない。
【追跡】スキルの正確さは、遠くにいたケロマ達が俺と合流できたことで証明済みだもんな。
頼りにしていいだろう。
『ケロマ、巨大な猿の様子はどうなんだ?』
「そうね。あの場所からずっと動いていないから、多分食事中なんじゃないかしら? ブルールちゃんの仮説通り、私達が倒した鷲を横取りしたのかもね」
なるほど。
ならとりあえずホッと一安心といった所だな。
俺達は気を取り直して、熱林を進むことにした。
ザーッ
滝の音がする。
滝から流れ落ちてくる水しぶきがくるせいか、この辺りは比較的涼しい。
この辺りだったら過ごしやすくて良さそうだな。
後は掘っても大丈夫そうな地盤を探すだけか。
みんなにも聞いてみたが、涼しくて良さそうということで俺と同意見のようだった。
そこで手分けして住処に良さそうな土壌を探すことにした。
『なあ、この辺りが良いんじゃないか? 土も硬くて丈夫そうだぞ?』
ブルールが地面を足でトントン叩きながらそう言っている。
確かに見た感じ、地盤は固くてしっかりしているように見えるな。
よし、ここに住処を作ろう。
『確かに良さそうだな。よし、そこに住処を作るか!』
こうして俺達の新たな住処作りが始まった。
俺は【加工】で作り出した尖った壁を【念力】で動かして採掘する。
ブルールは”ここ掘れワンワン!”みたいな感じで地面を掘っている。
一方、グリザーとケロマは水魔法による水圧で地面をえぐり取っていた。
互いの力が干渉して邪魔しないようにするのが大変だった。
だが、そこさえ気を付ければ、採掘スピードは一人で行うときよりも段違いだ。
結局数時間かけただけで、ただ住処のスペースを作るだけでなく、住処の中の部屋の形もしっかりと整えることができてしまった!
力を合わせて作るって凄いことなんだと実感したわ……。
部屋の紹介をしよう。
まずは玄関スペース。
俺達の中で一番大きなグリザーが入れる、二メートル位の入口を通るとそこにたどり着く。
大体十畳くらいのスペースだ。
結構広々としているな。
そこを通り抜けると、共有スペースに出る。
そこは二十畳くらいあるから、全員そこで過ごしてもだいぶ余裕がある。
料理はこの部屋でみんなで食べることになるだろう。
共有スペースからはみんなのそれぞれの部屋に行くことができる。
俺の部屋、ブルールの部屋、グリザーの部屋、そしてケロマの部屋だ。
もちろん俺の部屋とケロマの部屋は一番離れた所に配置しておいた。
何されるかたまったものじゃないからな……
ケロマにはそのことで色々言われたが、適当に言いくるめて納得してもらった。
「遠い方がなかなか会えなくて、会えたときにロマンがあるだろ」とか言ったっけ。
「確かにその方がロマンがあっていいわね!」って感じですぐ納得してたわ。
どこにロマンがあるんだか俺にはさっぱり分からなかったが。
言った俺が言うのもなんだけど。
それぞれの部屋は五畳くらいの広さだ。
一人で過ごす分にはこれ位の方が落ち着くだろう。
ちなみに浴室もしっかり作っておいた。
十畳くらいでちょっとゆったりできる空間だ。
共有スペースから行くことができるぞ。
暑くてベタつく熱林では欠かせないよな、やっぱり。
雨漏りしない程度に天井に微小な穴を開け、通気口を確保することももちろんぬかりない。
そして侵入対策としては、入口にケロマが作ったセンサー的な物をつけておいて、ケロマの【追跡】がついていない人物が通ったら、その瞬間に麻痺効果のある電撃が放たれるようになっている。
とてもハイテクだよな。
あと、俺とブルールには必要ないが、【暗視】のスキルがないグリザーとケロマには明かりが必要になる。
そこはケロマが【研究】のスキルを使って照明器具を作りだしたのでそれで問題なさそうだな。
どうやらその照明器具、発光する植物による明かりを使用しているそうで、電気などはいらないそうだ。
こうして快適な俺達の記念すべき新居が完成したのだった!




