93.仲間と合流しました。
他にも邪龍の影響を受けた場所があるそうなので、他の場所も黄金の葉で浄化しておいた。
『これでこの一帯に残っていた呪いは全て浄化されました! 本当に助かりました!』
リーバンはニッコリとした表情を見せて感謝の意を示してきた。
『いや、俺だって助けてもらったし、お互い様だ』
『持ちつ持たれつの関係ということですよね。素晴らしいです。あっ、この気配は……』
リーバンが急にキョロキョロと辺りを見渡し始めた。
何かの異変に気が付いたのだろうか?
『どうしたんだ、急に?』
『いえ、大したことではないんですけどね。どうやらカンガさんを追っていた人間がこの洞窟内に入ってきたようです』
うわっ、マジかよ。
どんだけしつこいんだ、アイツ?
【気配探知】位しか探索スキルを持っていないくせに、よくこの場所までやってこれたもんだな。
執念って怖いわ。
『どうにかして帰らせることはできないか? アイツしつこいんだよな』
『そうですね……あの者はどうやら魔物に対して尋常ではない思い、いや恨みを抱いているようです。それをまずは何とかしないといけないでしょう』
『アイツの魔物を狩る事への執着はものすごいもんな。それを何とかするなんてまず無理だろ』
『いや、そんな事はありませんよ。私にお任せください』
そう言うとリーバンはうつむいてブツブツと呪文みたいなものをつぶやき始めた。
リーバン、一体何をしようとしているのだろうか……?
しばらくするとリーバンは何かを唱え終わったようで、顔を上げた。
『はい、大丈夫です。これで帰ってくれることでしょう』
えっ!?
何でそんなことが言い切れるんだよ?
だってあの人間だぞ?
壁に全力で何度ぶつかっても立ち向かってくるような執念を持った奴だぞ?
『どうしてそんな事が言い切れるんだ?』
『そうですね。まず、彼の一部の記憶を消させて頂きました』
へ?
記憶を消す?
何かとても恐ろしい事をしているんだが、この龍。
『まあ魔物に対する恨み自体はあまりに根深いものだったので、一日経てばその恨みの原因となる記憶は戻ってしまうでしょう。でもカンガさんに関連した細かい記憶などは戻らないと思うので、しつこく追いかけられることはないはずです』
強く刻まれた記憶は戻るということか。
そうだとしても恐ろしすぎる力だけどな。
リーバンが地龍クラスの力を持つ龍だということをすっかり忘れてたわ。
『はい、やっぱり帰っていきましたね。帰りやすいように道標なる物を作っておいた甲斐がありました』
『道標? この洞窟に作ってあるのか?』
『いえ。人間にかけた幻術の中にそういう物を作っておいただけです。そうすれば帰ってくれると思いまして』
記憶を奪うだけでなく、幻術までかけているのか……
それを平然とやってのける辺り、やっぱり格の違いを感じさせられるわ。
できることに関する認識が俺とは違いすぎる。
『あっ、また侵入者が来ました。今度は違う人間―――とウルフとリザードマンですね。珍しい組み合わせです。魔物使いでしょうか?』
人間とウルフとリザードマン。
その組み合わせはケロマ達だろう。
よくこんなに離れていても俺の居場所が分かるもんだな。
ケロマの【追跡】の力ってハンパないな……
『しつこいですね。ではまた幻術で……』
『い、いや、ちょっと待ってくれ! そいつらは多分俺の仲間だ! 手出ししないでほしい!』
『……あら? 確かによくよく見ればターニャの目で見たことのある人達ですね。私としたことが大変なことをしてしまう所でした』
ふう、危ない危ない。
記憶を消されちまったら完全に俺、孤立しちまうもんな。
ケロマはともかく、ブルールやグリザーと別れることになるのは痛すぎる。
俺一人で生きられないこともないけどさ。
やっぱり一人じゃ寂しいもんな。
というか、リーバンってどれ位の範囲を見ることができるんだろう?
俺の目に届く範囲じゃない所も見えているようだが。
ただ、その範囲でも侵入者である恐らくケロマ達のスキルを見破れなかった辺り、遠い場所にいる相手に対して把握する能力はそこまで高くないのかもしれないな。
それでも凄すぎるけど。
しばらくこの場で待っていると、聞きなれた声が聞こえてきた。
「あ、カンガだ! みんなー、カンガがいたよー!」
そう叫ぶケロマ。
するとケロマに加えてブルールやグリザーの姿も見えてきた。
『うわっ、カンガの近くに龍がいるんだが、大丈夫か?』
『大丈夫だろう。見た所カンガ殿が囚われている感じではなさそうな上、相手に敵意も無さそうだからな』
そう言いつつも、恐る恐るリーバンに近付いていく三人。
やっぱり龍に近づくのって怖いよな。
『あなた達はカンガさんのお仲間ですね。はじめまして、私は川の龍こと、リーバンと申します。以後、お見知り置きを』
リーバンがそう言うと、三人ともビクッと驚いていた。
まあいきなり話しかけられたら驚くよな。
『驚かせてしまったようですいません。でも私はあなた達に敵意は持っていません。是非お話でもどうですか?』
ブルール達は三人で顔を見あっている。
そしてケロマが前に出た。
「ええ、是非お願いするわ!」
こうして俺はみんなと合流することになり、みんなとリーバンはしばらく談笑をすることになった。
『皆さんはホージュ熱林に行かれるのですか?』
「ええ、確かそういう名前の場所だったはずよ」
『そうですか。では宜しければそこまで私がお送りしましょうか? この地底湖から熱林の川まで繋がっているんですよ』
「本当ですか!? 助かります!」
ケロマって他人と話すときは普通なんだよな。
いつもこうやっていてくれれば普通の女の子でいいんだけど。
というかリーバンもこの世界の人間の言葉が分かるんだな。
まあ、ターニャと意思疎通できるんだからそれも当たり前か。
俺達はお言葉に甘えて、ホージュ熱林までリーバンに送ってもらうことにした。
『ホージュ熱林まで何をされに行かれるんですか? あまり外部の者は立ち寄らないイメージなのですが』
『ああ、それはな、そこに住処を作ろうと思ってな。かつての俺の住処は色々あって使えなくなってしまってさ』
『あら、それは可哀想に。今度は長く使えるといいですね』
うん、本当にそうなんだよな。
結局なんだかんだで前の住処で過ごしたのって二十日とか三十日とかそこらじゃないか?
結構短いんだよな。
今度はもっとゆっくりできる住処を作りたいものだ。
『でもあそこに住処を作るのであれば、あの魔物には注意しないといけないですね……』
『あの魔物って?』
『はい。その魔物はジャイアントシンミアと言います。熱林にあるあらゆる食べ物を食べ荒らすという噂です。くれぐれも気を付けて下さい』
『ああ、分かった。忠告ありがとな』
熱林にある食べ物を食い荒らす奴がいるのか。
なら不用意に外に出ない方が良さそうだな。
別に俺はフワンタクサ草という、普通じゃ食べられないものさえあればなんとかなるしさ。
わざわざ元々食べられる物を取りに行く必要はないだろう。
しばらくリーバンの背に乗っていると、洞窟の出口が見えてきた。
『あの先にホージュ熱林があるのか?』
『はい、その通りです。結構蒸し暑いので、そこはご辛抱下さい』
確かにまだ洞窟の中にいるというのに熱気が伝わってくる。
いかにこの外が蒸し暑いのかということだよな。
『では参りますよ……』
こうして俺達はついに、目的地であるホージュ熱林に足を踏み入れることになった!




