92.呪いの理由を聞いてみました。
川の龍、リーバンに乗って進んでいく。
川を進んでいっていたみたいだが、途中で洞窟の中へと入っていった。
首長竜のような体をしているリーバンでさえ楽々と入れるほど洞窟の中は広々としていた。
『私の住処はこの洞窟の中、地底湖にあります』
『そうなのか。普段もそこにいることが多いのか?』
『はい。今回はカンガさんの気配を感じて外に出てきました。何やらお困りのようでしたのでちょうど良かったです』
『ああ、本当に助かったよ、ありがとう』
わざわざ俺に会うために外の川まで来てくれたのか。
何だか悪い気がするな。
それからもしばらく洞窟の中を進んでいたリーバンだったが、途中で動きを止め、こちらに顔を向けてきた。
『そういえばカンガさん、ちょっと聞いてもいいです?』
『ん? どうしたんだ、突然?』
『あなた、インビジブルブレスレットを身につけていますよね? 一体どうやってそれを手に入れたんですか?』
うっ……そういえばこの龍、透明化しているはずの俺を普通に見破ってきているよな。
その上、身につけているインビジブルブレスレットの正体までもお見通しか。
さすがは龍といった所だろうか。
あなどれないな。
恩もあるし、嘘をつくとかえって面倒なことになりそうだから素直に答えておくか。
『俺が作った』
『カンガさんが? 何やら未知の力を感じますし、何となくそうだろうとは思ってはいましたが……もしかしてあの黄金の葉もカンガさんが?』
『そうだな。黄金の葉も俺が作った物だ』
『そうですか……すごい力をお持ちなのですね。その節はお世話になりました』
リーバンはちょこっと首を下げて感謝の意を示し、再び先へと進み始めた。
黄金の葉で俺がターニャを治したことを知っているんだよな。
ならばターニャがどうして呪いにかかっていたのかも知っているんだろうか?
ちょっと聞くだけ聞いてみるか。
『ちょっと聞きたいんだが、ターニャが呪いにかかっていた理由って知っていたりするか?』
『ええ、知っていますよ』
『その内容を詳しく聞いてもいいか?』
『そうですね……分かりました。お話しましょう。ですが、その事に関しては私の住処に到着して落ち着いてからお話しましょう。長くなると思うので』
話が長くなる……か。
どうやら何か事情がありそうだな。
呪いなんて物騒な状態になる位だから只事ではないとは思っていたんだけどさ。
あまり厄介なことじゃなければいいんだが。
こうしてしばらく静かに川の龍に乗って時間を過ごすことになった。
『カンガさん、到着しましたよ』
リーバンに声をかけられて目が覚めた。
というか、いつの間にか寝てしまっていたんだな。
あまりに心地よかったからつい寝てしまったぞ。
『すまない、つい寝てしまった』
『別に構わないですよ。さあ、その辺りの陸地にどうぞお上がりください』
俺はリーバンに言われる通り、近くにある陸地へと飛び乗った。
『さて、私の住処に到着したことですし、呪いについて話そうと思いますが、よろしいですか?』
『ああ、構わないぞ』
『では、話しますよ』
一呼吸おいてから、リーバンは話を始めた。
『ターニャが呪いにかかった理由。それは私にかかった呪いを引き受けてくれたからなんです』
『呪いを引き受ける……? どういう事だ?』
『ターニャには【状態引受】のスキルがあります。それで私にかけられた呪いを代わりに引き受けてくれたのです』
つまり、ターニャは自分からすすんで川の龍の身代わりになったということか。
あんなに辛そうにしていたのに、そんな重度な呪いをよく引き受けようと思ったな。
それだけターニャにとって川の龍は大事な存在だということか。
『私は危ないからと言ってターニャの申し出を断りました。ですが、どうしてもとターニャは言うので……』
『なるほどな。で、そもそもリーバンはどうして呪いを受けることになってしまったんだ?』
『それはですね……邪龍バラドゥスの仕業です』
邪龍……
何かいかにもって感じの存在だよな。
そいつがリーバンに呪いをかけたのか。
一体何のために?
『どうして呪いをかけられることになったんだ?』
『それは私も聞きたい位です。邪龍は非常に気まぐれで、気に食わない者がいると呪いをかけたり、時には町を殲滅させたりもします』
『それは恐ろしすぎる奴だな……この近くに住んでいるのか?』
『いえ。彼は世界中を放浪していますので、特定の場所にとどまるということをしないです。現在は恐らく南の大陸にいることでしょう』
違う大陸にいるのか。
ちょっとホッとした。
そんなに危ない龍なんかに目をつけられたらたまったもんじゃないからな。
川の龍でも呪いを受けたり、苦しむような相手に勝てる訳がないしさ。
『邪龍って呪いをかけることに特化した龍なのか?』
『そうですね。生物に呪いをかけ、死滅させたり、自然に呪いをかけることで土地を枯らしたりもします』
『そうなのか……なかなかえげつないな』
『実はその事に関連してカンガさんに一つ頼みがあるんです』
えっ……?
まさかその邪龍を倒してくれなんて言わないよな?
どうあがいても俺がそんな奴に勝てる訳ないじゃないか。
ゴブリンが龍に歯向かうなんて無謀すぎる。
勝ち目なんてありゃしない。
『この辺りの自然の一部に邪龍の呪いが残ってしまっているのです。その呪いを解除できたりしないですか?』
あ、頼みってそういうことか。
びっくりしたわ。
そういうことなら俺でも何とかできるかもしれないな。
『やってみないと分からないな。その場所まで連れて行ってくれないか?』
『分かりました。では背中に乗って下さい』
俺は川の龍の背にのり、どこかへ進むことになった。
ちょっと進むと、川の龍の動きが止まった。
『この辺りですね。今は私が【水流操作】を使って呪いをせき止めてはいますが、そうしないと呪いがこの一帯に広がってしまいそうなんです』
確かに川の龍が見ている辺りにはどす黒い何かが滞留している。
あれが邪龍の呪いの影響を受けたものなんだろうな。
うーん、こういうものって黄金の葉で治るものなんだろうか?
やってみるしかないけどさ。
『とりあえず黄金の葉で治るか試してみる』
『お願いします、カンガさん』
俺はバッグから黄金の葉を取り出し、そして汚れた水があるあたりに葉を落としてみた。
ポチャン……
するとその黄金の葉を中心に水が透明になっていき、溜まっていた黒い何かも消え去ってしまった!
黄金の葉の効果ってハンパねえな。
『き、綺麗に浄化されましたよ!? さすがはカンガさんです!』
『い、いや、黄金の葉がすごいだけだと思うぞ? 俺もここまで効果があるとは思わなかったしさ』
黄金の葉って対人だけでなく自然でもいけるもんなんだな。
思った以上に万能だわ。
さすがは幻の道具だけあるな。




