90.危ない人間に追いかけられました。
掲示板に貼られている紙を遠目で見てみることにした。
掲示板の近くに人間がいるからあまり近寄れないのが辛いが、辛うじて読めそうだ。
文字は日本語ではなかったが、ブルールとの記憶の共有や【考察】さんのおかげで内容を理解することができている。
では、本題の内容について見るぞ。
討伐クエスト
ヘロン平原にいるスライム三体の討伐
難易度 C
報酬 30hw
内容詳細
平原にスライムが大量に現れた。冒険者にはその討伐のお手伝いをお願いしたい。
スライムの核を三つ納品することで依頼は達成とする。
大量発生したスライムの討伐か。
いかにもギルドの依頼って感じだよな。
俺がもし人間に転生していたら、こういう依頼をこなしていたんだろうな。
なんかゲームみたいでワクワクするしさ。
今の俺は残念ながら魔物だから狩られる側なんだけど。
うーん、残念。
他にも依頼はあるようだから見てみよう。
もっと難しいものはないかなっと。
あった。
討伐クエスト
バハールム高原にいるサンダードラゴンの討伐
難易度 A
報酬 5000hw
内容詳細
バハールム高原に現れた雷龍によって、その近辺に近寄れなくなっている。
一刻も早く、冒険者による討伐をお願いしたい。
ドラゴンの討伐……
さすがはAランクの依頼といった所か。
っていっても、Aランクがどれだけすごいのかよく分からないんだけどさ。
とても難しい依頼であることは間違いなさそうだ。
討伐クエストが多い印象だが、それ以外のクエストもないんだろうか?
えっと……あった。
一般クエスト
エリュンの町の教会に中回復薬5個の納品
難易度 A
報酬 2000hw
内容詳細
教会で利用している治療薬が不足している。
冒険者にはその治療薬の確保をお願いしたい。
へぇ……
中回復薬を納品するだけなのにさっきのドラゴン討伐と同じ難易度なのか。
楽勝じゃねえか。
俺だったらこういう依頼をこなして安全にギルドのランクを上げただろうな。
ケロマも採取クエスト中心にこなしてランクを上げたらしいから、同じような考えだったんだろうけど。
だって討伐クエストって命の危険がある訳じゃん?
危ないからできれば避けたいよな。
魔物の俺がいうのもなんだが。
さて、掲示板のクエストも大体見ることができたし、ブルール達の所へ向かうか。
なんかさっきから妙な視線を感じるしさ……
あまりここに長居しない方が良さそうだ。
ギルドの建物を通り過ぎ、ブルール達との合流を目指す俺。
だが、なかなか道が入り組んでいて、思うような方向に進めない。
どうやら俺は住宅エリアに入ってしまったようだ。
同じ方向に進もうとしても、T字路にぶつかったり、行き止まりだったりしてあまり進むことができない。
そんな感じでうまく進めないことも問題だが、一番の問題は誰かにつけられていることだ。
気配を消しているつもりみたいだが、【観察】を使える俺には近くに潜んでいることは丸分かりだ。
ちなみにそいつのステータスはというと。
ヒューマン lv23
HP 122/122
MP 31/ 31
攻撃力 110(+30)
防御力 68(+32)
魔法攻撃力 26
魔法防御力 66(+11)
素早さ 58(+17)
スキル
気配探知、剣技、俊敏、隠密
特殊スキル
魔物殺戮者
うん。
危険だな。
魔物殺戮者って、明らかに俺を殺しに来ているだろ。
こういう奴らがいそうだから人間の町に来たくなかったんだけどな……
まあ、結局自分の判断で来たんだから自業自得だし、今更文句言っても仕方ないんだけどさ。
ちなみに今の俺の姿は透明化で見えないはずだ。
だがソイツは明らかに俺の存在に気付いて追ってきている。
もしかすると【気配探知】を使って俺を認識してきているのかもしれない。
それ以外に目ぼしいスキルはなさそうだしな。
透明化が効かないとなると厄介だよな。
魔物殺戮者という位だから俺を殺しにきていることは間違いないんだろうし、どうしようか。
正直この人間のスキルやステータスから見ると今の俺の敵ではないし、簡単に倒せると思う。
だが、相手は魔物ではなく人間だ。
何らかの形で俺が人間を殺したという話が出回り、ギルドのおたずねものになってしまう可能性は否定できない。
だから殺さずに何とか逃げ切るのが最善だと俺は思う。
だが、この入り組んだ地形。
これがあまりにも俺にとって不利すぎるんだよな。
何といっても思うような方向に進めない所が痛い。
この町は恐らく人間にとってはホームグラウンドだろうし、地形の知識量の面で圧倒的に不利だ。
人間の攻撃を多少受けた所で俺が死ぬことはないだろうが、あまりこういう場所にいたくはないな。
せめて開けた場所、もしくは外へ向かった方が良さそうか。
作戦を変更だ。
ブルール達と合流しようと思ったが、今の状況ではそれはかえって悪手になりそうだもんな。
逃げ切ることが求められているのに、逃げないといけない人数を増やしてどうするって話だしさ。
そもそもあまりブルール達にも迷惑をかけたくない。
俺一人で手に負えない奴が相手なら力を合わせて戦う必要がありそうだが、そういう感じでもないからな。
町から一旦出ることにするか。
この辺りは入り組んでいて、まともに移動することもできない。
なら、壁を作って足場を作り、一旦建物の屋根の上まで登って、屋根沿いを進んでいくことにしよう。
そうすれば見晴らしもよくなるし、建物に阻まれることなく移動できるしな。
まあ何もない所にいきなり壁という突起物が出現するから目立ってはしまうかもしれないけれど、こればかりは仕方ない。
俺自身の姿は透明化で見えないし、何とかなるだろう。
こうして俺は人間からの逃走を開始した。
予定通り、建物に足場となる壁を次々と作り、上へとのぼっていく。
すると、俺のすぐそばを斬撃みたいなものを通りすぎた。
斬撃は建物を直撃し、建物に傷跡を残した。
おいおい、民家を攻撃する気かよ、こいつ。
正気か?
訴えられたりしないんだろうか、この世界では?
かなり狂ったやつには違いないんだろうな。
俺は急いで上へとのぼり、ついには建物の屋根まで到達することができた。
だがまだ安心できない。
何となくだが、俺が今登ってきた足場を使って人間が追いかけてきているような感じがするのだ。
俺はすかさず壁を解除して作った足場を崩落させた。
すると、何やら地面に剣の斬撃が複数刻まれ、そして落下する音が聞こえた。
もしかすると斬撃で落下の衝撃を弱めたのかもしれないな。
だが、その着地したであろう所を見ても、人間の姿を認識できないんだよな。
もしかしてこの人間、【隠密】のスキルレベルがかなり高いんじゃないか?
それってだいぶ厄介だぞ。
【観察】をうまく使えないと簡単に不意打ちをくらいかねないからな……
とにかく、一刻も早く外に出よう。
外ならば壁を出現させまくって相手の動きを制限できそうだし、自由がきくもんな。




