87.川の鎮静祭というものを見てみました。
さて、俺が選ぶ進化先はというと……
{ ゴブリンライダーに進化しますか? }
もちろん、進化しますとも。
{ 進化を開始します。 }
そう天の声が聞こえると同時に、俺の周囲に光の粒みたいなものが発生する。
そしてそれが俺の全身を包み込んでいく。
前と全く同じだな。
今回はそこまで体に変化は感じなかった。
もう成体になった訳だし、それほど変化がないのも当然といえば当然なんだろうが。
しばらくすると視界が張れ、みんなが見守ってくれている様子が見えてきた。
『カンガ、だいぶ成長したな』
『カンガ殿にはもう幼い頃の面影はないな。若くして一種の貫禄すら感じられる』
「カンガ……ずっと、ついていくからね」
どうやら体に大きな変化はなくても細かい所で見た目に変化はあったようだ。
鏡がないから自分で確認することはできないんだけどな。
さて、進化したことでどうステータスに変化があったんだろうな。
早速【観察】で確認してみるか。
カンガ【ゴブリンライダー】lv1
HP 91/91
MP 33/33
攻撃力 69(+530)
防御力 65(+720)
魔法攻撃力 40
魔法防御力 37(+720)
素早さ 72(+530)
スキル
観察、考察、隠密、猛毒耐性、暗視、耐震、恐怖耐性、採掘、器用、根性、調合、加工、高速加工、細工、束縛耐性、合成、料理、念力、水操作、浄化魔法、念話、水魔法、水流操作、連携、援護
特殊スキル
採掘の極地、調合の極地、加工の極地、細工の極地、料理の境地、合成の極意、職人の神、超能力者、神速職人、命名者、水を統べる者
lv1でもこの強さか。
やはり進化するのって相当大きいな。
この調子だといずれあの地龍とかに勝てるようになるのではと錯覚を起こしてしまいそうだ。
まあ、進化も無限に出来る訳ではないだろうし、限界はあるのかもしれないけどさ。
とりあえず、今回は素直に喜んでおこう。
もう成体になったからか、体の変化はそれほどなかった。
まあ、まだ見習いゴブリンライダーの体にも慣れていなかったんだけどな。
さて、これで進化も一安心だな。
もうここにとどまる必要はなさそうだし、さっさと先に向かうか。
進化を無事終えた俺はみんなと共に先へ向かう事にした。
荒野地帯を抜けてしばらく進むと、例の川の近くまでやってきた。
今回もグリザーに頼んで川の水を割って通りぬけようか。
って、何だか騒がしい気がするが、気のせいか?
川に近付くにつれて人が増えていっているような気さえするが。
これじゃ目立ちすぎるからグリザーの技が使えないだろうな。
困ったな……
『何かこの辺りでも行事でもあるのか? やけに人間が多い気がするんだが』
「あら、知らないの? この時期になると毎年川の巫女によるショーが行われるのよ」
『川の巫女のショー? 何でそんなことをするんだ?』
「荒ぶっている川を完全に制御できているから安心してほしいということを示す為に行われているそうよ」
『安心を示す……か。一体どうやって?』
「まあ、これから起こることを目で見た方が早いと思うわ。あっ、そろそろ始まるみたい」
人間の行事なんて魔物の俺が知る訳ないだろ。
人間とあまり接点を持つことすらしてなかったし、全然この世界の人間のことなんて知らねえよ。
やっぱり、こういう所で人間か魔物かの違いがでるよな。
人間の方がやはり出回る情報量が段違いだろうしさ。
情報量の豊富さは人間の強みだよな。
それはともかく、ケロマの言う通り、何やら人間達に動きがありそうだ。
高台みたいになっている所に見覚えのある三人が上っていくのが見えた。
やっぱりあいつ、川の巫女で間違いなかったんだな。
川の巫女の母親が周囲を見渡し、そして何かの道具を口元にもっていって、話し始めた。
「皆様、お待たせいたしました。これより、川の鎮静祭が開催されます! それでは、川の巫女のコメントをお聞きください」
川の巫女の母親の声が周囲に響き渡る。
恐らくあの持っている道具は拡声器みたいなものなんだろうな。
母親だけでなく川の巫女も同じ物を持っているようだ。
話しを終えた母親は一歩下がり、代わりに川の巫女が前へと出た。
「皆様、第十一回川の鎮静祭にお集まりいただきありがとうございます。私がこの川を管理しています、川の巫女と申します。以後、よろしくお願い致します」
川の巫女はそう言うと、軽くお辞儀をした。
すると観衆から歓声と拍手が沸き起こった。
結構な人数がいるので、だいぶうるさい。
「早速、祭りのメイン、川の鎮静を行っていきます。一回統制の力をかけなくすることで川が荒れますので、皆様、川から離れて頂くようお願い致します」
すると観衆は川から後ずさりするように離れていった。
一体これから何が起ころうとしているんだろう?
「では、いきますよ……」
川の巫女は目を閉じ、精神を集中させているようだ。
すると、次第に穏やかだった川はみるみるうちに荒れていく。
ついには以前俺が最初にこの川を見たときのような、荒れ狂った川の姿があらわになった。
「これが本来の状態です。とても危ない川ですよね。一応これでも”死の風”は抑えるようにしていますので、建設中の橋には影響は与えないようにはしています」
川の巫女がそう言うと、観客からどよめきが起こる。
先程まで穏やかだった川が、急に荒れ狂うんだもんな。
その変化に驚くのも無理はないか。
いや、それ以上に、その変化を川の巫女が起こしているという事の方が驚きだな。
川の巫女の力を抜いたらこんなに川が荒れ狂うということは、川の巫女のおかげで川が落ち着いていたということだもんな。
恐れ入るな、その力。
「では、今から川の鎮静化の儀式に入ります。すぐに鎮静化させますから、皆様ご安心して下さい」
すると川の巫女は目を閉じ、再び精神を集中させている。
「川よ、鎮まれ……水流統制」
そう川の巫女がつぶやくと、川の様子が再び変わり、徐々に勢いが削がれていく。
そしてついには先ほどまでの穏やかな川の姿が戻ってきた。
その川の劇的な変化に観客から拍手と歓声が沸き起こった!
「これで川の鎮静化は終わりです。皆様、ご覧いただけましたでしょうか? では最後に、今から一時間、川に道を作ります。よろしければそちらの道をご利用下さい」
言葉を終えた川の巫女は水の渦巻きを出現させ、何やらブツブツとつぶやく。
すると川に再び大きく変化が巻き起こる。
川の一部がせり上がっていき、巨大な川のアーチができたのだった!
川の水は空中に流れるようになることで、アーチができ、そのアーチの中を通って向こう岸まで渡れるようになっている。
グリザーがやったことと原理は同じなんだろうが、やることが派手だな、川の巫女。
アーチを作るということは重力に逆らって川の水を大きく空中に持って行っているということだろうし、相当な魔力を使いそうなものだが。
それを平然と行える川の巫女ってどんだけ魔力があるのか想像できないわ……




