84.初めての進化をしてみました。
それから何事もなく日時は流れた。
時折、人間が入り込むことはあったが、ケロマが対処してくれたので別に問題はなかった。
短期間ならこういう状況が続いても良いが、長い間過ごすとなると、やはり俺達の住処としては使えそうにはないよな。
場所がバレてしまっているのは痛すぎる。
落ち着いて過ごすことができない、警戒しないといけない住処なんて落ち着かないし嫌だもんな。
とはいえ、人間が入り込む以外に問題になること以外に問題になることはなかった。
暇だったのでその間、旅に出るための準備を整えた。
といっても、ほとんど準備は元々整っていたからやれることは多くなかったが。
とりあえず俺達はインビジブルブレスレットの汚れを洗い流した。
フワンミズミズシ草から絞り出した水を使って、しっかりとな。
ポテチがついた位で使えなくなるなんて、本当、デリケートだよな、この道具。
何か覆うものみたいな物が必要かもしれないな。
今回はいいが、大事な場面で急に透明化がきれたら大変なことになるしさ。
ということで、俺はインビジブルブレスレットを覆う用のシルクの生地を作り出す。
そしてその生地を使い、インビジブルブレスレットを覆った。
こうすることで、汚れやすい場所にいっても、生地が汚れから守ってくれる。
すぐに透明化の効果がきれることはないだろう。
そしてもちろん他の三人分の生地も作っておき、みんなにつけてもらった。
うん、これでバッチリだ。
そして四日後―――
『カンガ、朝だぞ!』
朝を知らせるブルールの声。
よく寝た。
最近ブルールの声が目覚まし代わりになっていたりする。
ブルールの奴、遅く寝て早く起きるからな。
睡眠時間短いし。
そしてブルールに起こされた後は朝食を作る。
これも恒例になりつつあった。
ブルールが朝起こしてくれるのも多分朝食のためだろうな。
早く食べたいからこうやって起こすんだろう。
別に目的はどうでもいいんだけどさ。
さて、今日のメニューは野菜スープだ。
後はケロマが作り出したという白米と醤油。
つまり、醤油かけご飯にして食べることになる。
実はケロマ、【研究】を使うことで、自分の記憶にある食材を作り出すことができるようだ。
もちろん食材の原料は必要みたいだけどさ。
だからポテトチップスもあんなにあったのか。
ただ、食材は作り出せても、完成された料理は作れないらしい。
まあ料理のスキルでもないのに、そういうことができるだけでもすごいと思うけど。
そんな訳でいつもご飯つきになってボリュームが増すようになった俺達の食事。
それではいただきます。
――うん、美味かった。
やっぱり主食って大事だよな。
これがあるかないかでだいぶ腹持ちが変わってくるしさ。
さて、腹ごしらえも済んだことだし、今日の本題へと移ろうか。
『カンガ、今日は例の日だよな?』
『ああ、そうだな』
『カンガ殿がどんな姿になられるのか楽しみだ』
進化ができる日。
その日がとうとうやってきた。
一体どういう仕組みになっているのだろう?
不安と期待が入り混じりつつも、俺は進化を願った。
{ 進化条件を満たしました。進化しますか? }
進化可能を告げる天の声。
答えはもちろんイエスで。
{ 進化先を選択してください。 }
そう天の声が聞こえると、頭の中に膨大な情報が入ってきた!?
もしかしてこの情報、全て進化先なのか!?
多すぎて訳が分からない……
とりあえず、目につく所からリストを確認してみよう。
ゴブリン
見習いゴブリンシャーマン
見習いゴブリンライダー
ベビーオーガ
ベビーミノタウロス
ベビードラゴン
え?
なんか進化先に他種族も混じっているんですけど。
ゴブリン以外にもなれるのか、俺?
もうちょっと詳細とか見れないかな?
ちょっとドラゴンが気になるんだが。
ベビードラゴン
ドラゴンの幼少体。
主に山岳地帯に生息しており、空を飛べるようになるまでは親に守られて成長する。
火を吐くことができるが、まだ不慣れなため、自分もダメージを受けることがある。
約三年程で成体へと成長する。
進化条件:【考察】を持っていること
獲得スキル:飛翔、ブレス
損失スキル:現在のスキル全て
へ?
全てのスキルを失うだって?
訳が分からない。
それって俺が今までやってきたこと、ほぼ全てできなくなるってことだよな!?
そんなの耐えられないわ。
他のものも見てみるか。
ベビーオーガ
オーガの幼少体。
成体には劣るものの、既に強力な力を持ち、その力は大人の人間の数倍にもなる。
約一年程で成体へと成長する。
進化条件:【考察】を持っていること
獲得スキル:剛力
損失スキル:考察
先ほどのドラゴンよりはマシか。
【考察】だけを失うだけで済みそうだもんな。
……って良くねえよ!?
【考察】さんのいない俺なんて、この世界で考えられないからな!?
多分【加工】も【料理】も何一つできなくなるぞ。
宝の持ち腐れならぬ、スキルの持ち腐れになっちまう。
だから【考察】さんを失うのは俺には考えられない。
うーん、進化先が多いのはいいんだが、これじゃ意味ないよな。
ソート機能みたいなものはないのか?
【考察】を失わなくてもいい進化先のみを表示とかさ。
{ 絞り込み検索を実行しますか? }
おお、できるのか!
じゃあもちろんお願いします。
すると残ったのは……
ゴブリン
見習いゴブリンシャーマン
見習いゴブリンライダー
結局【考察】を残して進化が出来るのはゴブリン系列だけか。
そういえばゴブリン系列以外の進化条件に【考察】を持っていることってあったよな。
そして進化後はその【考察】がなくなってしまうと。
もしかして【考察】は種族を超えた進化を可能にする一度きりのチケットということか?
まあ俺は【考察】を失ってまで他種族になろうとは思わないけどさ。
そこまで進化に期待している訳ではないし。
そうすると【考察】を持っていなければ他種族への進化ができないんだろうな、きっと。
一応聞いて確かめてみるか。
『ちょっと聞きたいんだが、魔物って進化すると種族が変わる事ってあるのか? 例えばゴブリンがドラゴンになったりとかさ』
『まさかそんなことある訳ないだろ。そんなことが頻繁にあったら、同じ種族で過ごす意味がなくなっちまうからな』
『拙者も聞いたことはないな』
「一応噂ではあるけど聞いたことはあるわよ? スライムがオークになったとかね。でもそれも所詮ウワサに過ぎないし、実際に見たという人には会ったことがないけどね」
やはり普通は種族を超えた進化はできないらしい。
まあそりゃそうだよな。
種族を超えた進化って、例えば人間がドラゴンになるようなもんだし、普通はないよな。
俺みたいに人間がゴブリンに転生することはある位だから、あり得なくはないんだろうけどさ。
そう考えると【考察】さんって本当何者なんだって話だよな。
俺の魔物生活を支える大黒柱であるだけでなく、種族を超えた進化を可能にするものでもあるのか。
さて、話を戻すか。
【考察】を残したい俺が選べる進化は実質三択。
まずゴブリン。
取得スキル、損失スキルともに共になし。
いわゆる赤ん坊がそのまま大人になった状態といった所か。
変化は少ないが、その分安定性はありそうだ。
続いて見習いゴブリンシャーマン。
取得スキルは炎魔法など魔法系列のスキル。
損失スキルはなし。
多分魔法型になるから、HPは控えめになり、MPが増えるんだろうな。
MPが増えることはいいことではあるが、正直今の俺には恩恵が少ない気がする。
ケロマと役割が被るし、そもそも俺には【加工】や【念力】というチートスキルがあるからな。
あまり魔法の必要性を感じない。
そして最後に見習いゴブリンライダー。
取得スキルは連携、援護。
損失スキルはなし。
名前に見習いが付く所が若干気に入らないが、かなり魅力的な進化先だよな。
俺は基本ブルールに乗って移動するし、【連携】のスキルは役に立ちそうだ。
【援護】というスキルはもしかするとブルールの力を底上げしてくれるかもしれないし。
かなり俺の戦闘スタイルに合っている気がする。
以上が候補となる進化先の詳細だ。
まあ、もう実質一択みたいなもんだよな。
では進化するとするか。
{ 見習いゴブリンライダーに進化しますか? }
答えはもちろんイエスで。
{ 進化を開始します。 }
その天の声が聞こえると同時に、俺の周囲に光の粒みたいなものが発生し、それが俺の全身を包み込んでいった。
『おお、進化が始まるぞ!』
『これが進化というものか。初めて見るな』
「カンガの進化……わくわく」
俺の視界は次第に白い粒に覆われ、真っ白になる。
その間も自分の体が次第に変化をしていく感覚が何となく分かる。
伸びていく手や足。
いや、体全体が大きくなっているようだ。
赤ん坊が成体になるんだから当然といえば当然なんだろうが。
しばらく経つと、体の変化が止まり、視界も晴れていった。
『お、進化を無事終えたようだな』
下の方からブルールに声をかけられる。
あっ、そうか。
成長したんだもんな、俺。
今までは俺の目線とブルールの目線はほぼ同じ位だった。
でも進化をしたことで俺の背丈は伸び、ブルールよりも目線が高くなったのか。
目線が上がっている事から進化は成功しているんだろうが、一応【観察】でも確認してみるか。
あ、もちろん二層目のな。
カンガ【見習いゴブリンライダー】 LV1
HP 53/53
MP 15/15
攻撃力 31(+530)
防御力 26(+720)
魔法攻撃力 21
魔法防御力 19(+720)
素早さ 30(+530)
スキル
観察、考察、隠密、猛毒耐性、暗視、耐震、恐怖耐性、採掘、器用、根性、調合、加工、高速加工、細工、束縛耐性、合成、料理、念力、水操作、浄化魔法、念話、水魔法、水流操作、連携、援護
特殊スキル
採掘の極地、調合の極地、加工の極地、細工の極地、料理の境地、合成の極意、職人の神、超能力者、神速職人、命名者、水を統べる者
うん、ちゃんと進化できているみたいだ。
これで一安心だな。
ちなみに一層目の偽装ステータスの方も進化が反映されているようだ。
すぐに反映されるなんて【研究】って高性能なスキルだよな。
それにしても、レベル1なのに能力がベビーゴブリンの時よりも高いな。
しかもレベルが上がったらもっと強くなるんだろ?
どれ位強くなれるのか楽しみだよな。
後、所々に変わったスキルがあるな。
【細工の極意】が【細工の極地】に変わっていたりする。
もしかして進化すると一部のスキルレベルが上がったりするのか?
だったら嬉しいんだけど、どうだろうな。
まあ、あまり期待し過ぎないでおこう。
こうして進化を終えた俺はみんなと雑談して休んだり、歩き回ったりして体の感覚を確かめた。
ちょっとまだ違和感はあるが、じきに慣れるだろう。
ちなみに極上シルクシリーズの防具は、俺の体の変化に合わせて伸び、今の俺のサイズでもピッタリになっている。
だけどちょっと生地の密度が薄くなって心もとないので、極上綿花と防具を【細工】して補強しておいた。
補強した所で、元々防具のシルクの生地は弾力性に優れており、体を締め付けたりはしないので、特に窮屈には感じない。
なんて万能なんだろうな、この防具。
伸縮性があるって本当に素晴らしい。
補強しておいたからもう少し体が大きくなっても大丈夫そうだな。
次の進化の時に困らずに済みそうだ。
新しい体に慣らした後、俺は早速みんなと共に新天地へと出発することにするのだった。




