81.これからの方針を決めてみました。
ギルドについて聞くのだが、今回は【念話】で話しかけた方が良さそうだな。
ケロマからこの世界の言葉を話してもらえれば、ブルールやグリザーと情報を共有できるしさ。
日本語で話してしまうと情報を共有できないからな。
『ギルドってどういう所なんだ?』
「色んな人からの依頼を受けて解決する巨大な組織ね。人々になくてはならない存在かも」
『拙者も旅の同胞から聞いたことがあるぞ。エリュミュスの人間の町全域にわたる巨大組織だと』
「ええ、その通りよ。ギルドは全国に支部を持っていて、世界中から依頼がくるの。まあ解決するのは大体依頼の近くに住むギルドの人だけどね」
この世界のギルドってそんな大規模なものなのか……
となると、一回だけでも目をつけられると逃げ切るのは厳しいかもしれないな。
遠くに逃げてもまたその近くのギルドの人間が討伐に来るかもしれないし。
嫌なことを聞いてしまったかもしれない。
あ、ちなみにまだ俺は討伐対象になっていないよな……?
まさかな……?
『ケロマ、俺ってギルドの討伐対象になっていたりするのか……?』
「カンガが? いや、そんなことないよ。でも白くて小さいゴブリンの噂みたいなものは流れているみたいだけどね」
討伐対象にはなっていないのか。
それは良かった。
人殺しをしていないだけのことはあるのかもしれないな。
でも噂が流れているのか……
討伐対象になっていないとはいえ、あんまりここに長居するのは得策じゃないかもな。
興味本位でこの辺りにやって来る人間が増えるかもしれないし。
というか、実際さっきケロマの幼馴染が来ていたもんな。
もしかして、ケロマの奴、この場所を教えたんじゃないだろうな!?
『ところでケロマ、お前この場所を他の人間に教えたりしてないだろうな?』
「えっ……? お、教える訳ないわよ。ただここにいる間に他の人が何人か入ってきたというだけで……みんな私のセンスはどうかしていると言って帰っていったのよ。ひどいわよね!?」
……それじゃ教えてるも同然だろ。
あー、もうこの住処は使えそうにないな。
俺がここに住んでいることがバレていなくても、奇妙な人間が住む場所として認知されてしまっているしさ。
またこの住処を作り直した所で人間が度々入ってくる可能性が高い。
これはもう引っ越すしかなさそうだ。
『分かった。だとすると、俺達がここに住み続けるのは正直厳しそうだ』
「えっ、なんで!? もし人間が来てもさっきみたいに私が追い払えばいい話でしょ?」
『あのなぁ……それで確かにしのげるかもしれないが、いちいち隠れなければいけない俺達の気持ちが分かるか? 住処なのにおびえて暮らさないといけないなんて、そんなのあんまりだろ? ブルールやグリザーはどう思う?』
『確かにそんな生活は嫌だな。まあオレは元々そういう生活してきたから別に構わないが』
『拙者は……カンガ殿の意見に賛同する』
どうやらブルールとグリザーもあまり良く思っていないようだ。
まあ生活しにくい状況というのはやっぱり誰でも嫌だよな。
安心して暮らすために住処を作っているのに、その住処が安全じゃないなんて元も子もないしさ。
『そういう訳だ。だから俺は引越しを考えている。人間に気付かれることのない、安全な場所に住処を作ろうと思う』
『それって……この住処を捨てるっていうことだろ? カンガはそれでいいのか? 愛着あったんじゃないのか、この場所に』
『愛着がないと言えば嘘になるな。でも仕方がないだろ。こんな状況じゃあな。それにある意味いい機会だとも思うんだ。グリザーとか仲間も増えた訳だし、俺だけじゃなくみんなが過ごしやすい住処を一から作り直す為にはさ』
もしケロマが住処を変えていなかったとしても、結局住処の増築などは必要だったもんな。
作り直す部分がちょっと増えただけという発想もある。
別に俺には【考察】さんに加え【細工】【採掘】など住処作りに最適なスキルが揃っている。
だから以前よりは全然苦労せずに住処を作ることができるだろう。
ブルールやグリザーに助けてもらいながら住処を作ることもできると思うしさ。
みんなで住処を作るというのも楽しそうじゃないか。
あ、でもブルールやグリザーはついてきてくれるんだろうか?
これって、二人ともついてきてくれる前提で考えてしまっているけどさ。
まだ二人の考えを聞いていないもんな。
『また別の所に移動することになってしまうが……みんなはついてきてくれるか? 勝手に決めてしまって申し訳ないんだが』
『カンガがそうしたいならそうするといい。オレはただついていくだけだ』
『拙者も問題ない。たとえ過酷な環境であろうとも、その程度で折れぬ自信はある故』
「わ、私もついていくよー」
ブルールやグリザーは何の問題もないという感じで了承してくれた。
二人とも強いよな。
とても頼りになる仲間だ。
……って、なんでケロマまでついてくることになっているんだ?
お前がいたらまた住処を改変されそうで怖いんだが。
『ケロマ……お前までついてくる気か?』
「えっ……!? だって私、仲間でしょ? 受け入れてくれたんじゃないの!?」
確かにブルールとグリザーと仲良くできそうなら一緒にいてもいいとはいったが……
まさか引越しまでついてくる気でいるとは。
『確かにブルールとグリザーと仲良くやっていけそうではあるもんな。ただ、ついてくるにはいくつか条件をのんでもらうが、いいか?』
「分かった! どんな条件を守ればいいの?」
『良い返事だ。条件は三つある。まず一つ、住処を壊さない事。せっかく引っ越しても住処を変えられてしまったら元も子もないからな』
「えー!? 私、住処を壊してなんかないよ!? もっとロマンあふれる部屋にしただけだもん!」
ロマンあふれる部屋ねぇ……
うん、これは言っておいて正解だったな。
コイツ、自分が人の住処を台無しにした自覚がなさそうだ。
言わなかったら引越し先の住処も台無しにされる所だったな。
危ない危ない。
『お前にとっては良くても、俺にとっても良いとは限らないんだ。だからそれを守れないのなら、俺はお前と一緒にいたくない。分かってくれるか?』
「うっ……わ、分かった」
ここまできつくいっておけば大丈夫だろう。
さて、他に釘をさしておくことは……
『それが一つ目の条件。二つ目の条件は、自分の身は自分で守る事だ。かつてお前は自分のことを俺が守ってくれるみたいな言い方していたが、そんな余裕は俺にはない。これからどんな事が起きるか分からないから、誰かが守ってくれるなんていう気持ちで一緒に来られても迷惑だ』
「守ってくれないの!? ……わ、分かったわ。それでも構わないよ。カンガと一緒に暮らせるのなら」
いちいち意味深な言い方をしてくるよな、コイツ。
まあコイツのことだからあまり深い意味はないんだろうけど。
さて、最後の条件を言うか。
『最後の条件。それは俺だけでなく、ブルール、グリザー、みんなが楽しく過ごせるように頑張ること。できるか?』
集団として過ごす以上、みんなと仲良くする努力をしてもらわないと快適な場は作れないからな。
全員と仲良くするのは難しいかもしれないけど、努力する姿勢位は見せてもらいたい。
こんな偉そうなこと言っているけど、俺も前世ではそういう努力をしてこなかったんだよな。
だから一匹狼だった訳だし。
この事は俺自身にも言い聞かせないといけないことだな。
気を付けよう。
「うん。それはもちろん頑張るよ! みんなで楽しく過ごしたいもん!」
『そうか。ではその三つの事を守れるのなら俺はついてきても構わないと思っている。ブルールとグリザーはどうだ?』
『オレも条件が守れるのなら大丈夫だと思うぞ』
『拙者にも異論はない。ケロマ殿、これからよろしく頼むぞ』
「こちらこそよろしくね、グリザーさん。それにブルールちゃん、カンガも! 私、精一杯頑張るからね!」
こうしてこれからの引越し旅に一人加わることになったのだった。




