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ゴブリン、頑張って生きる。  作者: はちみやなつき
Ⅱ 快適な生活を求めて
75/222

75.武器を返してもらえました。

 翌日。

 俺は目が覚め、部屋を見渡す。


 隣のベッドの上にはブルールが丸まって寝ていた。

 すっかりお疲れのようだな。

 まああれだけ動き回ったんだから無理もないだろう。


 そして入口付近には槍を持って立ったままこちらを見てくる緑のリザードマンがいた。

 えっ、何でここにいるの?

 というか、何で立ってこっちを見てきているの?

 もしかしてずっと俺達が起きるのを待っていたのか?


 リザードマンを見てパニックになっている俺をよそに、リザードマンは話しかけてきた。



『おお、目が覚めたか。よく眠れたか?』



 何事もないかのように話しかけてくるリザードマン。

 その様子に自分だけ無駄に焦っているようで恥ずかしくなってくる。

 ここは冷静に、何気なく返事をしなくては。



『あ、ああああ、だ、だいじょぶだ』

『何動揺しておるのか? ……ああ、すまないな。拙者がこんな所で待っていて驚かせてしまったか』



 冷静に分析してくるリザードマン。

 うん、何でそんな所にいるんですかね。

 そのせいで俺、恥ずかしいことになっているんですけど。



『何で俺の部屋で待っていたんだ?』

『勝手にあがりこんでしまってすまないな。だが、良い知らせがあるから一刻も早くカンガ殿やブルール殿に伝えたくてな』



 フフッと笑みをこぼすリザードマン。

 だからお前が笑うと逆に怖いんだって。

 何かを企んでいるみたいに見えるんだって。



『良い知らせって何だ?』

『ああ。良い知らせというのはな……カンガ殿、お主の武器を返してもらえることになったぞ』



 おお、それは確かに良い知らせだな!

 緑のリザードマンが交渉してくれるとは言っていたが、あっさりとうまくいくとは。

 これは俺にとってだいぶ大きいな。

 武器を返してもらえれば俺にとって不安な事はなくなるしさ。



『お主が今すぐに返却を望むなら、今にでも申請をしに行くが、どうする?』

『ではお願いしてもいいか? ブルールはそのときまでに起こしておくから』

『承知した。それではもうしばし待っておれ』



 緑のリザードマンがそう言って部屋から出て行った。


 これで心配事がなくなるのか。

 良かった良かった。

 一時はどうなるかとヒヤヒヤしたものだけど。

 何とかなるもんだな。




 リザードマンを待っていると、その間にブルールが起きたようだ。

 しばらくブルールと話して時間をつぶす。

 そしてリザードマンが戻ってきた。



『待たせたな。もう行く準備はいいか?』

『ああ、大丈夫だ。案内してくれ』



 こうして俺達はリザードマンについていくことにした。




 城らしき建物の中へと入っていく俺達。

 その建物の中には左右に等間隔でリザードマンの兵が槍を持って立っていた。

 そういう様子を見るとここって城なんだと思えるよな。


 そしてしばらく歩いていくと、とある扉の前にたどり着く。

 その扉の左右には二人のリザードマンが警備をしている。

 緑のリザードマンが何かを話すと、道を通してくれた。



『これで大丈夫だ。中に入ってくれ』



 緑のリザードマンに促されるまま、俺達は扉の先に向かった。



 扉をくぐりぬけると、八畳ほどの部屋にたどり着く。

 その中にはあるリザードマンが待っていた。

 どこかで見た顔だな。

 あ、そういえばあの演説をしていたリザードマンじゃないのか?



『ブルール、このリザードマンって、病室みたいな施設で演説していた奴だよな?』

『恐らくそうだろうな。それにこの人、緑のリザードマンが見舞いに来ていたときの病人のリザードマンにも似ている』



 そういえば確かにそうだよな。

 一体どうなっているんだろうか?



『カンガ殿、ブルール殿、紹介しよう。このお方こそが、拙者達、リザードマンの王だ』



 ええっ!?

 この人、リザードマンの王だったのか!?

 道理でなんか偉そうと言うか、威厳があると思ったわ。

 王ならそういう様子も納得だな。



『ゴブリン殿、ウルフ殿、ようこそ我がリザードマンの町へ。大したもてなしもできず、すまないな』



 王から【念話】が飛んできた。

 どうやらこの王も【念話】が使えるらしい。

 会話に不自由しなくて助かるな。



『いえ、そんなことないです。こちらこそ勝手に町にお邪魔することになってしまい、すいません』

『そんなこと気にすることない。それにしてもゴブリンとウルフの二人旅か。なんとも珍しいものだ。支障がなければ旅の経緯をうかがっても?』



 俺は旅のきっかけなどをかいつまんで王に話した。

 旅の途中であった出来事などを興味深く王は聞いていた。



『そんなことがあったのだな。そしてここまでたどり着いたと』

『そうですね。ただ蒼水晶はリザードマンにとって大事な物だということが分かったので諦めることにしています』

『そうか。潔いのだな、ゴブリン殿は』



 潔いのか?

 まあ言われて悪い気はしないんだけどさ。



『そんなゴブリン殿なら、安心して任せられそうだな。とりあえずこれを返しておこう』



 王から俺の短剣が手渡された。

 剣を鞘から出しても特に目立った傷はない。

 無事なようで良かった。


 それにしても王は変な言い回しをするものだな。

 俺の短剣を任せるなんてさ。

 元々俺の物なんだからそんな言い方しなくてもいいのに。

 それだけ危ない物だというのは分かっているんだけど。



『その短剣は我が責任を持って預かっておった。故に誰かに使われるなんてことはない。安心するがよい』

『ありがとうございます』

『あと、厚かましいとは思うのだが……一つ、我からの願いを聞いてもらうことはできぬか?』

『願い、ですか……? 改まって何でしょう?』

 


 王からの願いなんて断れないよな……

 一体どんなことを頼まれるんだろう?

 まさかリザードマンの町の医者になれとかいうんじゃないよな。

 料理人になれというのも嫌だぞ。

 旅の料理人とかならいいけどさ。

 同じ町でずっとひたすら何かをするのなんて退屈すぎるだろ。


 緊張しながら王の返事を待っていると……



『こいつを、ゴブリン殿やウルフ殿の旅に加えてほしいのだ』



 そう言った王は緑のリザードマンの背中をポンと叩いた。


 へ?

 それってつまり、緑のリザードマンを俺達の旅に同行させてほしいってことか?

 何でこれまた王が直々にお願いする必要があるんだ?


 

『なっ、陛下!? 何を仰るのです!? それでは陛下をお守りすることが―――』

『我ならば大丈夫だ。そこのゴブリン殿とウルフ殿のおかげでな』



 へっ?

 俺とブルールと緑のリザードマンは互いを見る。

 一体この王は何を言っているんだろうか?



『俺達のおかげとは……?』

『とぼけなくても分かっておる。我らの病を治したのはお主達のおかげであろう? そうでなければ説明がつかんわ』



 この王……病気を治したのが俺達だと感づいているのか。

 まあ普通そんな現象は起きないよな。

 でもこれはまずいな……

 もしそんなことをしたゴブリンがいるなんて噂が広まったら色々と面倒な事になりそうだ。



『あ、あの……そのことは……』

『心配せんでも良い。わざわざ姿を見せずに行ったことだ。このことはお主達にとって知られたくない事なのであろう。我は他言はしない故、案ずるでない』

『そ、そうですか……』

『変な噂が広まったら、我が王の秘蔵の道具を使って回復させたとでも適当に情報を流しておく。だから大丈夫だ』



 サラッと情報統制みたいなことをやると言っているな、この王は。

 まあ変な噂を防いでくれること自体は助かるんだけどさ。

 敵に回したら絶対怖いタイプだよな。

 好意的な人で本当に良かった……



『今までは魔法で作った我の分身で業務を行っていたが、今は我の本体で行動することができる。なのでお前一人いなくても何とかなる』

『そ、それにしたって―――』

『分からぬか! 我はお前がいなくても大丈夫だと言っておる! それともお前は我を愚弄するのか?』

『そ、そんなことは―――』

『ならばおとなしくここから出て行くがよい。そして外の世界を知りなさい。外の世界を十分に知ってから、また我の力となってくれ。頼めるか?』

『そ、そういうことでしたら……はい、必ずやご期待に応えてみせます!』



 なんかもう、緑のリザードマンが俺達についてくることが決定しているみたいだよな。

 俺達に拒否権はないんだろうか。

 まあ別に今更、コイツを拒もうとは思わないけどさ。



『カンガ殿、ブルール殿、どうかお願いです! 拙者を……一緒に連れて行ってはもらいませぬか?』



 断る―――なんて言える訳ないだろ。

 ったく。

 どうなっても知らないぞ。

 俺、他の奴を守れるほど強くないからな。



『俺、そんなに強くないから、お前を守ることなんてできないぞ。それでもいいのか?』

『はい! むしろ拙者がカンガ殿を守る故、ご心配は不要だ!』

『……分かった、好きにしろ』



 こうして俺達の旅のメンバーが一人増えることになったのだった。

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