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ゴブリン、頑張って生きる。  作者: はちみやなつき
Ⅱ 快適な生活を求めて
70/222

70.リザードマンの王の話を聞いてみました。

 緑のリザードマン視点です、ご注意下さい。

 警報が鳴る。

 しかもこの警報は最大レベルの警報、レベル3の警報だ。

 それはつまり、この町に脅威がすぐそこまで押し寄せていることを意味する。

 

 拙者の町の警報レベルは三段階ある。

 レベル1。

 これは空気が悪くなるなど、生活にちょっとした影響があることを知らせるときになる警報だ。

 レベル2。

 これは遠くで今後町の脅威となることが発覚したときになる警報だ。

 この警報が鳴ったときは今後重大なことが起きるとしても、まだ時間に猶予があることが多い。

 レベル3。

 この警報が鳴ったときは脅威が間もなく町に襲い掛かることを意味する。

 このとき兵士は、緊急の任務に就いている者以外は全員王宮へ集まらなければならない。

 時は一刻を争う場合がほとんどなので、それは当然のことではあるのだが。


 つまり今回、拙者はカンガ殿やブルール殿を監視する任務があるとはいえ、王宮へ出向かないといけないのだ。

 このタイミングでの警報。

 恐らくはあの件だろうな……


 拙者は憂鬱になりながらも王宮へと向かった。




 しばらくして拙者は王の間へとたどり着いた。

 そこには既に多くのリザードマンの兵士が集められていた。

 拙者もその中に紛れ込み、様子をうかがうことにする。


 紛れ込むとはいっても、拙者は特異種で、他のリザードマンとは異なる見た目をしている故、非常に目立ってしまう。

 拙者の事に気付いた何人かの兵士は拙者の事を疎ましいような目で見てくる。

 拙者がカンガ殿やブルール殿をかくまってからはこのような態度を露骨にとる者が増えたものだ。


 別にカンガ殿達が悪い訳ではない。

 以前からその兆候自体はあったのだ。

 拙者が立場上、上に立つからか、表立っていなかったというだけだった。


 拙者がカンガ殿達をかくまうことに対しては、周りの兵士からはひどく言われたものだ。

「なんで異種族を助けるのか」

 その声が余りに大きく、不満を持つ者が多かったようだった。



 異種族を助ける。

 そんな事例は今までなかった。

 だからこそ、拙者が行おうとしたことの理解は得にくく、不満を持つ者が続出した。

 それでも拙者がカンガ殿達を助けることができたのは、紛れもなく王のおかげだろう。

 王は拙者の幼馴染であり、良き理解者だ。

 拙者の無理な要望にも条件付きとはいえ、認めてくれた。

 王には頭が上がらないな。


 ちなみに何故、拙者がカンガ殿やブルール殿を助けようとしたのか。

 その理由は実は定かではない。

 何となく助けたくなった。

 それに尽きるのだ。


 思い切った行動をするには余りにも曖昧すぎる理由だと拙者自身も思う。

 だからといって、このまま見捨ててしまうと一生後悔すると思ったのだ。


 明確な理由は分からない。

 でも、カンガ殿やブルール殿からは拙者と近い何かを感じたのだ。

 ブルール殿は拙者と同じ特異種。

 カンガ殿は特異種ではないものの、単独で行動するゴブリン。

 その上、体の大きさから見るとまだ赤ん坊である。

 明らかに普通ではない。

 そういうカンガ殿やブルール殿の、普通の種族ではない所に親近感、仲間意識を覚えたのかもしれないな。

 



 色々と考えているうちに、周りが何やら騒がしくなっていた。

 どうやら間もなく王の演説が始まるようだ。



「よし、そろそろ皆集まったか。では、これより我らの王から緊急命令が発令される! では陛下、こちらへ」



 執事が王をこの部屋にある演説台へと案内する。

 演説台についた王は兵達を見渡す。


 こういう時の王は威厳あふれていて様になっているな。

 普段の王の優しい様子からは想像がつかない。

 そういう態度のメリハリが皆から王が信頼される所以なんだろう。



「ゴホン。皆の者、本日集まってもらったのは他でもない。例の魔物がこの町を目掛け、すぐそばまで接近してきている。何としてでもそれを町にたどり着く前に退治するのだ」



 王の言葉を聞いた兵達に動揺が広がる。


 動揺するのも無理はないだろう。

 何故ならこれまでなんだかんだで例の病魔の魔物は町の近くを通ることはあっても町に向かってくることはなかったのだから。


 だが今回は違う。

 町を目標に接近してきているのだ。


 つい最近、病魔のヒラメに対して有効打を与え、瀕死状態にまで持っていくことができたとの報告を受けたことがある。

 だが、もう少しの所で逃げられてしまったとのことだった。

 ヒラメが町を襲おうとするのも、そのことがヒラメの怒りに触れた為かもしれないな。


 町を目標に接近してくる病魔のヒラメ。

 それはつまり、ヒラメを倒し切らなければ平穏は決して訪れないということ。

 弱らせても全回復してしまうヒラメの特性上、半端な攻撃は通用しない。

 その厄介な特性に阻まれ、拙者達は病魔のヒラメに幾度となく挑み、そして敗れてきた。



 ヒラメにダメージを与えられない訳ではない。

 だが病魔のヒラメはとてもタフな上、素早く、攻撃がなかなか通らないのだ。

 当たったとしてもヒラメの一部にしか当たらず、倒しきれない。

 そしてすぐに体力を回復される。

 その繰り返しだった。


 当たらないのなら動けなくしてしまえばいいということで、【束縛魔法】も試してみた。

 だが病魔のヒラメの魔法耐性は非常に高く、一瞬しか行動を制限できないのだ。

 ヒラメの素早さは実に厄介極まりない。



「猶予はあと三十分といった所だろう。故にあと十分以内に支度をし、すぐに出発する。目指す方向はこの町の東部だ。その町の入口から少し離れた所で魔物を迎撃する。以上だ」

「ありがとうございます、陛下。ではそういうことだ。皆の者、直ちに準備を整え、出撃に備えよ! 集合場所は町の東部の入口だ! それでは一時解散!」



 執事の話が終わると同時に兵士達は一斉に王の間からの移動を始める。

 拙者もその流れに乗じて王の間から出ることにした。



 あと十分か。

 拙者自身に準備が必要なことは特にない。

 だがこの時間でカンガ殿とブルール殿に事情を伝えないと。

 上からはカンガ殿達を町から出してはならないとは言われている。

 だがこのままでは町に閉じ込めたまま死なせることにもなりかねない。


 もちろん拙者達がヒラメを町に近寄らせずに倒すことができれば問題はない。

 だが倒すことができる保証はなく、もし倒すことができたとしても、その前に町の中に侵入される可能性もある。

 町の中は決して安全とは言えないのだ。



 あんな料理を作れるほどだ。

 きっとどこに住もうが料理人として生きていけるだろう。

 カンガ殿にはそれだけの未来がある。

 こんな所で命を終わらせてしまうには勿体なさすぎる。


 ブルール殿はカンガ殿の相棒のように見える。

 彼らは二人で一人みたいなところもあるし、できれば二人一緒に逃げてもらいたい。


 ヒラメを倒すことさえできればこんな不安な情報を伝える必要もないんだが。

 せめて攻撃をまともに当てることさえ出来れば何とかなる気がするんだけどな……


 いや、叶わぬことを考えても仕方ない。

 とにかく、拙者は拙者に出来る事をしなければ。



 こうして拙者は急いでカンガ殿達が待っている宿屋へと向かうのだった。

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