67.蒼水晶の秘密について聞いてみました。
せっかくリザードマンがいるので、この町について案内してもらうことにした。
『この町の名物みたいな所ってあるのか?』
『ああ、それなら水晶屋なんてどうだろう? 色んな水晶があって綺麗だぞ』
『おお、そんな所があるのか。ぜひ案内を頼む』
『分かった。こっちに来てくれ』
水晶屋。
恐らくそこには様々な水晶が売っているに違いない。
もしかしたら俺達の旅の目的、蒼水晶も売っているかもしれないな。
そうしたらそれを買えば旅の目的は達成したことになる。
まあそれを買う金はないんだけどさ。
見るだけならタダだし、行ってみるのもいいと思ったんだ。
こうして俺達は緑のリザードマンに水晶屋まで連れて行ってもらうことになった。
しばらく歩いていくと、とある建物の前にたどり着いた。
その建物には鏡のようなものが外壁の至る所に張りめぐらされている。
ここが地上だったら相当まぶしかっただろうな。
ここが薄明かりしかない湖の底だからまぶしくなくて良かった。
『ここが水晶屋なのか?』
『ああ、そうだ。中に入るぞ』
リザードマンに続いて俺達は水晶屋の中に入っていった。
水晶屋の中は二十畳ほどの広さだが、机がたくさん並んでおり、移動スペースは狭い。
そしてその机の上には色とりどりの水晶玉が所狭しと並べられていた。
あまりにもゴチャゴチャしているので、どれがどの水晶なのかよく分からない。
【観察】をかけてもどれに【観察】がかかっているのかよく分からないしさ。
持ち上げて確認すればいいんだろうが、それで割ってしまったら取り返しつかないからな。
あまり水晶を触りたくない。
水晶に触らずにしばらく眺めている俺達。
すると誰かから声をかけられる。
「*‘{?>*+‘}」
声をかけてきたのはリザードマンのお婆さんだった。
恐らくこの店の人なんだろう。
ただ相変わらず言葉が分からない。
何を言っているんだか。
『何か探しているのかと聞いてきている』
緑のリザードマンが通訳をしてくれるようだ。
こちらからは【念話】で意思を伝えることができるが、相手の言葉が分からないと会話は成立しないもんな。
これは助かるわ。
『いや、ちょっと眺めていただけだ』
「}*+><?+?*+>*?*?}*+」
『わざわざ来てくれてありがとう。安くしておくよとのことだ』
『お気遣いありがとうな』
そう会話を終えると、お婆さんは店の奥の方へ引っ込んでいった。
お婆さんのお気遣いはありがたい。
だがあいにく俺はお金を一切持っていないので、安くてもあまり関係ないんだよな。
どちらにしろ買えないことに変わりはないんだからさ。
それからも水晶をしばらく眺めている俺達。
すると、とある青い水晶が目に入った。
透き通るような青さ。
これこそ蒼水晶なんじゃないか?
それに集中して【観察】をかけてみるか。
青水晶
リザードマンが生産する一般的な水晶。
ある一定量の水分がこの水晶に含まれている。
その水は飲料にも使えるので、一部地域では大変重宝される。
使い終わると空水晶になるので、そうしたらリザードマンに魔力をこめなおしてもらう必要がある。
蒼水晶ではないのか。
名前は非常に似ているんだけどな、残念。
それにしてもこの青水晶は水を収納する道具なのか。
でもアクアペンダントよりもだいぶ性能は落ちそうだな。
この青水晶だと水を収納することはできなさそうだもんな。
水を使い切ったらリザードマンの魔力が必要とあるし。
アクアペンダントなら水を入れることも簡単にできるんだけどな。
『何か気になるものでもあったのか?』
緑のリザードマンが青水晶を眺める俺に声をかけてきた。
『いや、探しているものと似てはいたが、別物だった』
『ゴブリン殿が見ていたのは―――青水晶か?』
『そうだ。でも俺が探していたのは湿度などを自在に操作できる方の蒼水晶なんだ』
『……そうか、それが欲しいのか。だがそれは厳しいだろうな』
『そうなのか?』
『詳しくは外で話す。一回外へ出るぞ』
そう言った緑のリザードマンは外へ出て行ってしまった。
俺やブルールもリザードマンの後を慌ててついて行くことにした。
リザードマンについて行くと、結局人気のない所まで移動することになった。
わざわざこんな所まで移動する意味があるんだろうか?
『こんな所まで来て話す内容ってことは、そんなに聞いちゃまずいことだったのか?』
『別に聞いても構わない。だが、他のリザードマンがいる所ではあまり話したくなかったのだ』
『他のリザードマンがいる所では話したくない。やはり何かありそうだな』
ブルールが聞いたことがあるという道具だから、てっきりリザードマンにとっての一般的な道具だと思っていたんだが。
そんなに特殊な道具なんだろうか?
『蒼水晶はお前達リザードマンにとって一般的な道具なんじゃないのか?』
『確かにその通りだ。俺達にとっては欠かせない道具になっている』
『そうなのか。でもどうしてそういう一般的な道具が他では話せない内容なんだ?』
『それはだな……蒼水晶は、我らリザードマンの魔力の源になっているからだ』
魔力の源?
そういえばリザードマンってかなりの魔力を持つよな。
あの竜巻もそうだったし。
その秘密が蒼水晶というものにあるのか?
『魔力の源になっている……ということは、それがないとリザードマンはどうなるんだ?』
『魔法はほとんど使えなくなるな。その上生きる力も非常に弱くなるので、生き続けることも困難になる』
えっ、何それ。
それがないとリザードマンはほぼ生きられないっていうことか。
でもそんな大事なもの、どうやってリザードマンは手に入れているんだろうか。
『そんな大事なものなんだな、蒼水晶って。でも生まれたリザードマンにその蒼水晶を用意できなかったらどうなるんだ?』
『用意できないということはない』
『ん? それはどういうことだ?』
『なぜなら、蒼水晶はリザードマンの誕生と同時に生み出される魔力の結晶なのだから、誕生時にそれがないことはあり得ないのだ』
『誕生時に生まれるもの……逆にいえば、誕生時しか手に入れる手段がないということか?』
『その通りだ。だからリザードマンにとって蒼水晶は命と同等の価値を持つ。故に売り出されていることはまずない』
命と同等のもの……
そんな大事なものだったのか、蒼水晶って。
そんな話を聞いてしまったらもう手に入れる気も失せるな。
だってそれが手元にあるということは、リザードマンの誰かの命を奪ったと同じことだもんな。
一部の人間が蒼水晶を持っているというのも、リザードマンの命を奪い、蒼水晶を奪ったことに他ならない。
うーん、それなら湿度については諦めるか。
そこまでして手に入れたいものでもなかったしな。
うん、そうしよう。




