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ゴブリン、頑張って生きる。  作者: はちみやなつき
Ⅱ 快適な生活を求めて
61/222

61.泥から水分を抜いてみました。

 俺達はターニャが召喚してくれたペガサスに乗って上空を飛び回る。

 あーなんかこういうの気持ち良い。

 下の光景さえ見なければの話だが。



『おい、カンガ。なんでそんな汗だくなんだよ? そんなに暑くないだろ?』

『暑くはない。でもさ……うん。ブルールにはこの気持ちは分からないんだろうな』

『なんだよ? 分かるかもしれないだろ。言ってみろよ』

『……俺、実は高い所が苦手なんだ』



 グハハと大爆笑するブルール。

 おい、そんな笑うなよ。

 こっちは本当に余裕がないんだぞ。

 高所恐怖症をなめるな。


 っておい!?

 そんな揺らすなよ!?

 落っこちるだろうが!

 ふざけんな!



『そんな空ばかり見ていてもつまらないだろ? せっかく上空にいるんだし、景色を楽しまなきゃ損じゃないか』 



 そんな余裕あったらとっくに見てるわ。

 なんでブルールはこの気持ちを分かってくれないんだ?


 だって落ちたら死ぬんだぞ?

 ちょっと足を滑らせたら死ぬんだぞ!?

 そんな状態でよくヘラヘラ笑っていられるよな。

 あり得ないわー。



 そんなブルールとの地獄の空中散歩はしばらく続いた。

 そしてようやく、湿地帯に来た辺りでペガサスは地面に着陸する。



『ふう、助かった……死ぬかと思ったぞ』

『なんだカンガ、大げさだな。そんなんじゃどこにも行けないぞ?』

『別に陸を移動すればいい話だろ。俺は鳥じゃねーんだしさ』



 もうこんな思いをするのはこりごりだ。

 これからは多少時間がかかっても陸路を選ぼう。

 うん、そうしよう。



 俺達を降ろしたペガサスはどこかの空を駆け上がっていった。

 さよなら、ペガサス。

 もう会う事もないだろう。

 少なくとも俺とはな。



 さて、俺達はリザードマンの住処の近くまで来たはずだな。

 周りの様子はどうなってる?


 俺は辺りを見渡す。

 すると、そこはぬかるんだ土地になっている。

 そこには細長い植物が所々に生い茂っていたりもした。

 そして遠くには大きな湖も見える。

 それ以外には特に目ぼしいものはなさそうだな。


 ぬかるんだ土地と言うと、ちょっと地面が水分を含んで歩きにくいだけのように聞こえるかもしれない。

 確かに俺の住処周辺のことであればまさにそんな感じだしその表現で合っている。

 だが、この場所は違う。


 一度泥に足を突っ込んでしまったら、抜け出すのは容易ではない。

 そしてそのまま泥の海へと沈んでいきそうな様子である。

 かなり危険な場所に違いない。


 それにもう一つ嫌な事が分かった。

 なんとこの沼地に来てからインビジブルブレスレットの効果が切れてしまっているのだ。


 正確に言えば、この地に着いた瞬間は機能していた。

 だが、少し歩いてブレスレットに飛び散った泥が付着した瞬間、透明化が解けてしまったのだ。


 まさかのブレスレットの弱点の発見だよな。

 このブレスレットの特性上、この沼地では俺達が姿を消しつつ移動することは出来なさそうだ。

 とても厄介極まりないな。


 足場は悪いし、土質も泥でよくないので、俺の自慢の壁能力もあまり機能しない。

 本当、俺にとっては最悪な環境だ。



 とりあえず足場をなんとかしないとな。

 このままじゃまともに身動きもとれない。

 今は何とかこまめに足を持ち上げることで沈まずにいるが、それもいつまで持つか。


 足場を何とかするには、足場の泥を何とかできればよい。

 泥は土の一種だ。

 いや、正確に言えば水分量が多いだけのただの土だ。

 つまり、水分さえなければ、ただの土になるんじゃないか?



 水分を抜く方法。

 その為の手段が幸いちょうど俺のスキルの中にある。


 【水操作】だ。


 対象物をしっかりと認識しないといけないから使い方は難しい。

 だが、使い方さえわかれば相当使い勝手の良いスキル。

 それが【水操作】だ。

 これこそ今のこの状況を何とかするのにピッタリだと思うんだよな。

 早速試してみるか。


 俺は泥に触れ、泥に含まれる水分を意識し、念じる。



 ビチャビチャバシャバシャ……



 すると手の周囲の泥から水分だけが外に噴き出していく!

 俺はその水分をそのまま遠くに見える湖の所まで流し込むことにした。

 水分を出した所で、周りの泥に水分を移しても意味ないからな。

 せっかく水分を抜いても、また周りの泥から水分が入ってきてしまう。



 俺はひたすら【水操作】を続けた。

 周囲が泥だらけということもあって、なかなか水分除去作業は終わらなかった。


 俺の足場だけ確保できれば良い。

 だが、その為には周囲の泥からも水分を除去しないと水が浸透してきて意味がない。

 そんな理由で俺は延々と【水操作】をし続けることになった。


 かかること数十分。



{ 【水操作 lvMAX】を獲得しました。 }

{ 【水魔法 lv1】を獲得しました。 }

{ 【水流操作 lv16】を獲得しました。 }

{ 特殊スキル【水を統べる者】を獲得しました。 }



 結局【水操作】カンストしちまったよ。

 それになんか魔法まで覚えちまったしさ。

 おまけに称号みたいのも手に入っちまったし。

 まあ、良いことなんだから文句はないんだけどな。



 【水操作】のスキルレベルが上がるにつれて、水分除去がどんどん楽になっていった。

 同じ量の水分を移動させるときの負担がどんどん軽減された。

 その上、一度により多くの水を移動できるようになり、除去ペースも格段に上がったな。


 さらに、【水流操作】を覚えてからは水が俺の望む方向に勝手に流れてくれるようになってますます楽になった。

 ある一定範囲の水に対して移動先を設定しておくと、勝手に水が湖の方まで移動してくれるのだ。

 そのおかげである所で水分を除去しながら、別の場所でも新たに水分除去を始めることもできた。

 つまりペースは二倍、三倍とますます早まっていったのだ。


 そのようにして調子が上がってきた俺が、どんどんペースを上げて水分除去をしていった。

 そしてその結果……



『おい、カンガ。ここって湿地帯でいいんだよな? めっちゃ乾燥しているんだが……』



 そう。

 やり過ぎてしまった。

 周囲の水、周囲の水と意識するうちに、この一帯の土の水分を全て湖に移動させてしまったのだ。

 おかげで周辺の土はカピカピに。

 ここが荒野地帯だと言われてもおかしくないだろうな。


 ここは荒野地帯。

 元々荒野地帯なんだ、うん。

 来た時はたまたま水たまりみたいな所に降りたから地面がぬかるんでいただけだ。

 他はこんな感じでとても歩きやすくて良い土地だったんだ。

 そうに違いない。


 所々に生えている枯れかけの細長い植物も何か風情あるよなー。

 荒野地帯だけど近くに湖もあるから水にも困らなくて最高。

 本当、過ごしやすくていいでしょ。

 えっ、ダメ……?



 色々考えていると、突如、足場の地面が盛り上がっていく……


 な、何が起こっているんだ!?

 そう思っていると、地面から巨大な何かが飛び出してきた!



 ギシャーーーー!!!



 あ、何かめっちゃ怒ってるような鳴き声だ。


 はい。

 俺、やり過ぎました。

 ゴメンナサイ。

 だから……許して?

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