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ゴブリン、頑張って生きる。  作者: はちみやなつき
Ⅱ 快適な生活を求めて
55/222

55.謎の山岳地帯について聞いてみました。

 南東の山岳地帯に向かう俺達。

 南東の山岳地帯ってどういう所なのかブルールは何か知っているんだろうか?

 ちょっと聞いてみるか。



『なあ、ブルール。これから行く山岳地帯ってどういう所なのか知っているのか?』

『うーん、知っていることには知っているんだが、謎が多くてうまく言えないんだよな』

『謎が多い? それってどういうことだ?』



 ブルールがそんな曖昧な回答をするって珍しいな。

 行ったことない所なんだろうか?



『もしかして行ったことのない場所なのか?』

『いや、二回ほど通ったことがある』

『え、それならどういう所かよく分かるだろ。どうして謎が多いんだ?』



 二回も通ったなら、さすがにどういう場所か分かるだろ。

 俺が一回しか行っていないミリル鉱山でさえ、ヤドカリが恐ろしい山とか言えるぞ。

 一体どうして謎が多いなんて言うんだろう?



『通った二回で全然環境が違ったんだ』

『環境が違う?』

『ああ。初めて通ったときはlv10前後の比較的弱い敵しかいなかった』

『そうなのか。それなら今の俺達でも楽勝だな』

『今回もそうならな』



 ブルールの言い方……なんか嫌な予感がするな。


 環境が変わることは別に珍しくはないと思う。

 俺の住処周辺も、地龍がいるときと水龍がいるときでだいぶ変わるよな。

 地龍がいるときはウルフが大勢いるけど、水龍がいるときはほとんど魔物がいないし。

 地質も大きく変わっちゃうしさ。

 そんな感じで棲みつく魔物が大きく変わる可能性は全然あり得るからな。



『環境が違うとブルールは言ったが、もしかして二回目は―――』

『ああ。それはもう地獄としか言いようがなかった』

『地獄……そんなに強い敵がいたのか?』

『それはもうすごかった。【観察】をしてもHPすら分からないようなワイバーンがうようよいたからな』



 HPすら分からないワイバーン……

 HPも分からないと言えば、あの地龍や水龍クラスの敵ということだろうか。

 その敵がうようよといる環境。

 確かに地獄としか言いようがないよな。


 でもそんな所を通って、よくブルールは無事だったよな。



『でもブルールはそこを通り抜けて今生きている。どうやって逃げ延びたんだ?』

『……そうだな。逃げ延びることができた理由は協力者がいたということだろうか』



 協力者?

 ブルールって一匹狼だったはずだよな。

 そんなヤツがいたのか?



『協力者がいたなんて初めて聞いたな』

『……まあ、それは一時的な協力に過ぎないさ。今はもう縁が切れてるからな』 



 縁が切れてる?

 なんかまた大げさなこと言うな。

 別にそこまで言わなくてもいいのに。



『その協力者って、同じグレーウルフの仲間なのか?』

『まさか。オレ、集団から抜けてきた身だぞ。そんなオレに協力してくれるヤツがいると思うか?』



 まあ、そんなヤツがいたら一匹狼なんて自称しないわな。

 でもそれだとますます不思議なんだよな。

 同じ種族じゃない協力者なんているはずもないのに。



『同じ種族じゃない協力者って、一体どんなヤツなんだ? 想像がつかないんだが』

『魔物使いだ』

『魔物使い―――ってことは人間か?』

『ああ。オレを使う魔物使いがいたのさ。オレはソイツの元で色々な旅をしたことがある。ここを通ったのはその一環だ』



 うわ、マジか。

 ここにきて衝撃の事実を聞いてしまった気がするぞ。

 ブルールって魔物使いに使われている時期があったのか。

 というか、この世界にそんなヤツがいるのか。


 それって恐ろしすぎるだろ。

 だって俺もブルールと同じ魔物だし、魔物使いに道具みたいに扱われるかもしれないんだぞ?

 そんなの絶対嫌だわ。



『ブルールにそんな時代があったのか……』

『まあもう過去の話だ。もう気にしてはいないさ』



 気にしてはいないというけど、あまり思い出したくない過去には違いないだろうな。

 気付かなかったとはいえ、そんなことを聞くことになって悪かったな、ブルール。

 ここは話を逸らそうか。



『ともかく、その協力者のおかげでブルールは助かったというのか?』

『ああ。そうだ。オレ一人じゃ確実にそこで死んでいた。それだけ過酷な環境だったという訳だ』



 比較的楽勝な環境なのか。

 それともブルール一人じゃ勝てない過酷な環境なのか。

 それは行ってみないと分からないということか。


 何か規則性はないんだろうか?

 例えば俺の住処の場合は天候で水龍がいるか地龍がいるかで分かるだろ。

 そんな感じで見分けられればいいんだが。



『二回行ったとき、違いはあったか? 例えば行った時期が違うとか、天候が違うとかさ』

『そうだな。行った時期はほぼ同じだ。数日しか違わないからな。天候は違ったな』

『というと?』

『一回目は晴れ渡っていて見晴らしが良かった。一方二回目は霧で覆われていて、まともに周囲を見ることができなかった』



 霧で覆われているかどうか、か。

 その違いがたまたまなのかもしれないけど、違いの目安があるだけでも助かるな。

 


『ありがとう、ブルール。情報、助かったわ』

『いや、こんな曖昧な答えになってしまってすまないな』

『とにかく、霧で覆われているとかなり危ないかもしれないのか』

『それが本当に見分け方になっているのかは確信持てないけどな』

『霧が深くなったら引き返すことも検討した方が良さそうか』

『そうした方がいいかもしれないな。まあ俺達にはインビジブルブレスレットもあるんだし、最悪じっとしていれば襲われないかもしれないしな。そんな気に病むこともないんじゃないか?』

『……そうだな。姿が見えなければ見つかることもないもんな』



 ブルールの言葉を受けて、俺は一安心する。

 確かに姿が見えなければ、ワイバーンが上空から俺達を襲いようもないもんな。

 匂いは消せないだろうが、ワイバーンにそんな鼻が利くイメージもないし。

 もし気づかれても攻撃を避けることに専念すれば何とか逃げ切れる可能性も十分にありそうだよな。

 大勢のワイバーンが一斉に攻撃を放って逃げ場がないなんて状況だと詰むけど。

 でもそんなこと考えていたらキリがないしな。


 そうこう話しているうちに俺達は平坦な地域を抜け、上り坂に入り始める。

 こうしてついに謎の山岳地帯へと足を踏み入れた。






 山岳地帯に入ったが、視界は良好だった。

 ちょっと坂の傾斜が厳しくてブルールもだいぶへばっているが、問題はそれ位だな。

 所々魔物はいるが、そんな大した強さではなさそうだ。

 一応念の為【観察】をかけてみよう。



 マウントラビット

 エリュミュスの山岳地帯に広く生息するウサギ。

 このウサギは草ではなく鉱石を食べる一風変わった生活している。


 マウントラビットlv8

 HP 78/78

 MP 31/31

 攻撃力    40

 防御力    22

 魔法攻撃力  13

 魔法防御力  16

 素早さ    60

 スキル

 俊敏lv3、鉱食lvMAX



 へぇ。

 鉱石を食っても栄養はとれるもんなんだな。

 まあ、鉱石ってミネラルたっぷりな物もあるから栄養はあるのか?

 よく分からないけどさ。

 

 そして多分【鉱食】というスキルのおかげなんだろうな。

 ウサギが鉱石を食べられるのはさ。


 ということはだ。

 そのスキルさえあれば誰でも鉱石を食べることができるようになるということか?

 まあ、この能力は俺には必要ないけど。

 俺はフワンタクサ草さえあれば何とかなるし、餓死しようがないからな。


 一応食べ物が一切ない極限状態では役に立つかもしれないな。

 この能力。

 

 

 それはそうとして、今のこの山岳地帯の環境は、ブルールが経験した比較的弱い敵しかいない環境に似ているな。

 視界は良好。

 魔物もさっきのウサギ位しかいない。

 

 とてもワイバーンなんているような所には思えない。


 この環境のまま山岳地帯を抜けられるといいんだけどな。

 果たしてそううまくいってくれるんだろうか。

 でもそう祈るしかないよな。

 多分今の俺達じゃワイバーンになんて勝ち目ない訳だしさ。

 さっさと今の環境のうちに移動してしまう他あるまい。


 俺達はひとまず全力で山頂を目指すことにした。


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