53.人間の言葉を聞いてみました。
明け方になる頃に俺は目が覚める。
『ブルール、俺はもう大丈夫だ。そろそろ休むか?』
『ああ、そうさせてもらおう。見張りは任せたぞ』
茂みの中に入り、ブルールはそこで寝ることになった。
正直インビジブルブレスレットをつけているから茂みに隠れる意味はないと思うんだけどな。
単なる気分的な問題なんだろう。
さて、暇になっちまったが、どうしようか?
明け方になって出歩く人間もちらほらといるようだし、情報収集でもしようかな。
ブルールからあまり離れすぎるといけないからそこをわきまえた範囲で行うか。
お、早速近くに二人組の人間が歩いてきたぞ。
まず【観察】から行うか。
ヒューマン lv13
HP 72/72
MP 31/31
攻撃力 70(+20)
防御力 58(+32)
魔法攻撃力 26
魔法防御力 46(+11)
素早さ 38(+13)
スキル
毒耐性lv2、麻痺耐性lv1、剣技lv2
ヒューマン lv12
HP 42/42
MP 51/51
攻撃力 20
防御力 38(+20)
魔法攻撃力 56(+25)
魔法防御力 56(+28)
素早さ 28(+6)
スキル
毒耐性lv2、麻痺耐性lv1、炎魔法lv2
おお、人間ってこういうステータスなのか。
さすがに素の俺よりは断然強いな。
まあ武装した人間に、魔物の赤ん坊に負けるヤツなんていないか、普通。
でもこの程度なら戦いになっても俺が負けることはなさそうだな。
やっぱり俺が作る武器や防具ってチート性能なのが分かるわ。
本当【加工】様様だな。
あ、だからといって、戦いなんてするつもりは全くないぞ。
戦いになりそうだったら全力で逃げますとも。
そりゃもう必死にな。
討伐対象になるのなんてまっぴらだからな。
あくまで俺がしたいのは情報収集。
この世界の人間がどのようなことを話しているのか単純に興味が湧くだけだ。
では早速耳を傾けてみるとするか。
「またスライムの討伐だってよ。かったりぃなぁ」
「あら、いいじゃない、楽できて。私、そういう楽な依頼、好きよ」
「確かに楽かもしれないけどさ。何かもうちょっと歯ごたえのある敵と戦いたいんだよ、おれは」
「歯ごたえのある敵って、具体的にはどういう敵と戦いたいっていうのよ?」
「例えばドラゴンとかな。龍の討伐なんてできたらカッコイイだろ?」
「何バカなこと言ってんの。そんな寝ぼけたこと言ってると―――張り倒すわよ」
「ひっ……!? すまん、すまん、ただの冗談だ。そんな無謀なこと本気で考える訳ないだろ?」
「ならよろしい。さっさと依頼を終わらせるわよ」
こいつら、スライムの討伐の依頼とか言ってるし、ギルドメンバーか何かなのか?
やはりこの世界にも冒険者ギルド的な組織がありそうだな。
となると、やはり俺が危惧している、白いゴブリン討伐依頼が出てもおかしくない。
本当恐ろしいわ。
もっと気を付けて行動しないとな。
あ、ちなみに【考察】さんのおかげでこの世界の人間の言語を完全に理解できるようになりました。
いや、本当【考察】さんって素晴らしい。
もう俺には欠かせない存在だよ【考察】さんって。
言語理解には【考察】さんだけでなくブルールの知識も大いに役立ってくれた。
ブルールがここまで理解してくれたから、残りの部分を理解するのもあまり時間かからなかったからな。
ブルールにも感謝だな。
さて、冒険者二人組は遠くに去っていった。
次に通りかかる人間はいないかなっと。
いた。
今度は一人だな。
【観察】してみるか。
ヒューマン lv3
HP 22/22
MP 31/31
攻撃力 6
防御力 12(+5)
魔法攻撃力 16(+12)
魔法防御力 26(+10)
素早さ 8(+6)
スキル
胆力lv1、闇魔法lv1、調合lv1
えっ、弱っ!?
そんなステータスで出歩いて大丈夫なのか?
おいおい。
なんかこっちが心配になってくるぞ。
あ、なんか独り言しゃべってるみたいだ。
聞いてみるか。
「この時間は本当狙い目ですよね。こんな貧弱な私でも出歩けるほど魔物がいないですからね。そのおかげで外にしか生えないこのような貴重な植物も取り放題。ヒェッヒェッヒェッ」
なんか気色悪い奴だな。
何かを企んでいるようで、なんかいけ好かない。
ちなみにコイツが取っている植物は何だろうな。
【観察】してみるか。
フワンタクサ草
フワン大陸にありふれた植物。
生命力が高いうえ、毒を持つため食用とする者が少ない。
それ故に天敵が少なく、そこら中に生えている。
調合の材料としてよく使用される。
ええ!?
なんでフワンタクサ草なんかをありがたがっているんだ!?
そこら中に生えているだろ、これ。
意味が分からないわ。
あ、そうか。
コイツ、【調合】使えるもんな。
もしかしてそれで回復薬とかを作って売って儲けるつもりか。
ズルいぞ。
俺もそういう稼ぎ方してみたかったな。
「これさえあれば緑団子が食べられますからね。ああ、愛しの緑団子。愛してるぞ、緑団子」
なんか気持ち悪いんだけど。
というかコイツ、緑団子目的でフワンタクサ草を取っていたのか。
確かに緑団子は食用にはなるけど、そんなに美味くなかったぞ、確か。
暇なときにかじってみたけどな。
草の味しかしなかった。
まあ、草から作っているんだから当然なんだけどさ。
なんでそんな緑団子なんかをありがたがるんだ、一体?
「緑団子ちゃん、三日ぶりですからね。感動の再会。いやー、これで愛しのワイフとチャイルドにもたらふく食べさせてやることができます。待ってて下さい、今行きますよ」
そう言った人間はそそくさとどこかへ去っていってしまった。
あの人間、奥さんと子供の食料として緑団子を作ろうとしていたのか。
なかなか良いヤツじゃないか。
口調はアレだけど。
というか、あの緑団子をありがたがるって、どんだけ食料事情が厳しいんだ、この世界?
やっぱり周辺に魔物がたくさんいるから思うように食料を確保できないんだろうか。
何か気の毒になってくるな。
そんな感じに通りかかった人間の言葉を聞いて、俺は時間をつぶして過ごした。




