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ゴブリン、頑張って生きる。  作者: はちみやなつき
Ⅱ 快適な生活を求めて
49/222

49.人間が俺の料理を食べました。

「>+*2+}s>`{~=」

「_*?}{*?{g5*?」



 あ、気づかれたっぽい。

 まあ、人間よりはオオカミであるブルールの方が全然速く走れるから大丈夫だろうけどさ。

 普通に逃げ切れるだろう。


 ってあれ?

 なんでこんなに進みが遅いんだ?

 もっとブルールなら速く走れるだろ。

 このペースっていつも移動するよりもめっちゃ遅いぞ。

 一体どうなっているんだ?



 あ、ブルール。

 なんでそんな後ろを振り向くんだよ。

 もっと前見て走れよ。

 危ないだろうが。

 そんな気になることがあるのか?

 その後ろにはさ。


 俺は後ろを振り返ってみる。

 するとそこには二人の人間が、俺達が先程までいた岩場に腰かけているのが見えた。



 なんだ。

 追いかけてきてる訳じゃないじゃん。

 心配して損したわ。


 助かっているけど、何でそこで休んでいるんだろうな?

 もう少し様子を見てみるか。



 二人の人間は俺が作った皿やフライパンなどを持ってしげしげと眺めている。

 

 フフ、俺の【加工】技術はスゲーだろ?

 別に持って帰っても構わないぞ。

 ただの鉄鉱石製の物だからな。

 そんな大した額では売れまい。



 しばらく人間達が色々な物をチェックしていく。

 そして人間達はある皿に注目する。

 そう。

 ブルールの食べ残したポトフの入った皿だ。


 その皿をじーっとしばらく眺めた後、恐る恐るポトフを口にする人間達。

 すると、二人は驚きの表情を浮かべ、我先にとポトフに食らいついていた。



 フフ、俺の料理は美味いだろ?

 やはり俺の料理の美味さは人間にも通用するようだな。

 まあ元人間の俺が美味いと思うものなんだから当たり前かもしれないが。

 一応ゴブリンになって味覚が変わった可能性も否定できないしな。


 俺の味覚は衰えていなかったということだな。

 うん。

 本当に良かった。

 これで俺はこの世界で料理人として暮らしていけるな。

 まあ人間だったらの話だけど。


 鍛冶師といい、料理人といい、人間だったらそれだけで暮らせそうなんだけどな。

 無駄にチートだからな、俺。

 でもそこは魔物という所が足かせになるんだよな。

 別に今の暮らしに不満はないからいいんだけどさ。




 ってブルール、何引き返そうとしているんだよ!?

 せっかく距離を離せているのにこちらから近づいてどうする。

 そんなにポトフが大事かよ!?

 もっと理性を持て、理性を!


 人間達がいる方向に向きを変え、うなり声をあげるブルール。

 俺はそんなブルールを必死でなだめた。

 

 つーか、なんで俺がこんなことしないといけないんだよ。

 人間から逃げるって言いだしたのはブルールだろ。



 ブルールが俺の料理を気に入ってくれるのは嬉しい。

 でもここまで執着されるとさすがに困る。

 何かブルールをなだめる用のおやつみたいなものが必要なんだろうか?

 考えておく必要がありそうだな。



 俺の必死な説得の甲斐があったようだ。

 ブルールは人間達を恨むような目でにらみながらも、何とかこの場から逃げてくれた。

 ふう。

 全く、苦労かけさせるぜ。



 人間達が見当たらないほど距離を話した辺りで俺達はホッと一息つく。

 近くの岩場に隠れ、そこで休むことにした。



『ブルール、さっき人間を襲おうとしていただろ。何考えてんだよ』

『すまない。つい、反射的にそう反応しちまった。頭ではダメなことは分かっているんだけどな……』

『まあ、分かっているならいいさ。次は気を付けてくれよ』



 ブルールはシュンとした様子で縮こまっている。

 さすがに冷静になると、自分がしようとしたことがどんなことか理解できたようだ。


 ブルールって基本的には理性的なんだけどな。

 俺の料理さえ関わらなければさ。

 俺の料理が関わった途端に見境がなくなるからな、コイツ。

 本当、危な過ぎる。


 今後は安易に料理を作らない方がいいのかもしれないな。



『あ、何か今、あまり料理を作らないようにしようとか思っただろ?』



 ギクッ!?

 なぜ俺の考えが分かった、ブルール。

 コイツ、エスパーなのか?

 スキルにはそんな記述は見当たらなかったけど、心を読めるのか!?


 そういえば俺、特殊スキル【超能力者】を持っているのに人の心は読めないよな。

 そういうのはまた別のスキルなんだろうか?

 まあ別に、人の心を読みたいとも思わないし、このままの方がむしろいいんだけどさ。



『ああ。確かにそう思ったけど、それがどうかしたか?』

『そんなのは絶対許さないからな。どんだけ俺がいつも腹を空かせているのか分かっていないだろ?』



 あーあ、ブルールさん。

 逆切れですか。

 俺に逆らっちゃいますか。

 もうどうなっても……知りませんよ?



『あー、そういう態度とるのね。うん、分かった。よーく分かったわ』



 そう言った俺は一人歩いてどこかへ行こうとする。



『ちょっ、悪かったって!? 頼むから、オレを置いていくことだけはしないでくれ!』

『謝るのか?』

『ああ、何度でも謝る! でもどうしても食事回数を減らすのだけは勘弁してほしいんだ! 正直今でも結構ギリギリなんだよ……』



 ブルールはしょんぼりした様子で俺を見てくる。


 うーん、そう言われてもな。

 さっきみたいになったら困っちゃうしさ。

 どうしようか。

 まあ、さっきみたいな状況にさえならなければいいんだから――



『別に食事回数を減らさなくてもいい。ただし条件がある』

『条件ってなんだ? 何でも言う事聞くぞ』



「ただし料理関連以外でな」というのがブルールの顔に見て取れる。

 しかし残念。

 条件は料理関連のことなんだよな。

 そうじゃないと意味ないしさ。


 ブルールはそう話した後、尻尾をフリフリしながら俺の返事を待っている。 

 ブルール、お前って本当にオオカミだよな?

 今のブルールはどうみてもペットの犬にしか見えないんだが。



『さっきみたいに何かの危機が差し迫ったときに潔く料理を諦める。それが条件だ。これを破ったらもうブルールに料理は作らない』



 ちょっと厳しかったか。

 でもそれ位言わないと直らないだろ。

 この異常なまでのブルールの料理への執着心はさ。


 料理を諦めさせるには同じ料理じゃないとな。

 ブルールは条件をのんでくれないと思ったのだ。



『……分かった。とても辛いことだが、それでも料理には代えられない。約束する』

『よし、いい子だ』



 ブルールは辛そうな顔をしながらも何とか俺の条件を了承してくれた。


 ごめんな、ブルール。

 俺、命が惜しいんだわ。

 危機が差し迫っているのに料理なんて食ってたら、命がいくつあっても足らない。

 それにそもそも命が無かったら料理も食えないだろ。

 だから分かってくれ、な?


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