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ゴブリン、頑張って生きる。  作者: はちみやなつき
Ⅱ 快適な生活を求めて
48/222

48.ポトフを作ってみました。

 俺はブルールの背中に乗ってぬかるんだ地を駆け抜ける。

 足場が悪いから、速度はだいぶ落ちてしまうが、特に問題はないだろう。

 周囲に魔物がいないから、逃げる必要もないしな。

 実際、特に魔物に遭遇することもなく、俺達はぬかるんだ地帯を突破した。

 そして荒野地帯にたどり着く。



『また荒野地帯か。でも砂地がメインではないんだな』

『前通った所とは場所が違うからな。この辺りはまだ雨が降るんだ。だから所々に植物が生えているだろ?』



 確かに。

 周囲を見渡すと、所々に緑が生い茂っている。

 前通った荒野地帯はほぼ砂地だった。

 そして時々土っぽい所があって、そこに短い草が生えていた位だったんだけどな。


 今いる所はちょっと乾燥気味ではある。

 だけど砂ではなく土がメインの土地らしい。

 ここなら俺も存分に防衛力を発揮できそうだな。

 砂よりも土の方が壁の強度は断然強いからさ。



 グガー!!



 あ、魔物だ。

 じゃあ壁でいいな。



 グサッ

 バタンッ



{ ミニタイガーを討伐しました。 }

{ レベルが上限に達している為、経験値は取得できません。 }



 はい、倒しましたっと。

 本当、壁って便利だよな。

 守りにも攻めにも使えるし万能だ。

 地形さえ良ければ物凄い力を発揮してくれる。


 ちなみに倒したミニタイガーの簡易ステータスは以下の通りだ。



 ミニタイガーlv21

 HP  0/91

 MP 21/21



 そこそこの強さだよな、コイツ。

 少なくともウルフよりは強いよな。

 あ、もちろんブルールを除いた普通のウルフのことだ。


 そんな強いヤツに楽々勝てるって凄いな、俺。

 ずいぶんと成長したもんだ。



『なあ、カンガ。コイツを使った何か美味いもの作れねえか?』



 ブルールはそう言って、倒れたミニタイガーをじっと見ている。


 ブルール、お前っていつも料理のことしか考えていないんだな。

 野菜サンド食ったばかりだろ、お前。

 量が足らなそうなのは分かっていたけどさ。


 まあ、実は俺もミニタイガーの料理に興味が湧いていたところだ。

 野菜サンドを食ったばかりではあるが、少し位だったら食えるだろう。

 どうせほとんどはブルールに食べられてしまうだろうしな。


 じゃあちょっと作ってみますか。



 俺は近くに腰かけられそうな岩場を見つける。

 そこに腰かけた俺は、その辺から取ってきたフワンタクサ草を地面に積み重ねる。

 【加工】を使ってフライパンを用意し、フワンタクサ草に火をつける。

 こうして俺は料理を開始した。


 フワンタクサ草って本当に生命力が強いよな。

 こういう草木が少ない所でも生えているんだからな。


 そしてこれが今回みたいに燃料にもなるし、食糧にもなる。

 本当、フワンタクサ草って便利だわ。

 その辺に山積みにしておいても、他の人にとっては全く価値がないことも素晴らしい。

 色んな所に生えているから、わざわざ盗む必要もないだろうしな。

 盗まれる心配もないということだ。

 もちろんもし盗まれても全然痛くない。



 さて、色々と考えているうちに料理が出来上がったぞ。

 今回作った料理は次の通りだ。



 タイガーポトフ

 虎の肉と野菜を煮込んだ料理。

 虎肉と野菜のダシがたっぷり入ったスープは絶品。



 そう、野菜たっぷりのポトフだ。

 原料が虎肉とはいえ、さすがにステーキとかにすると胃がもたれるからな。

 野菜がたっぷり入った優しい料理を作ってみた。


 このポトフ、スープが多めでかなり熱そうだな。

 そう思った俺はスプーンを【加工】で作っておいた。

 あと、今回料理を入れる容器はいつもよりも底の深いものにした。

 いつもの皿だとスープがこぼれてしまうからな。



『ブルール、できたぞ』

『お、待ってました! 今回の料理は……って何だこれ?』

『ポトフという肉と野菜の煮込み料理だ。これはスープ多めでかなり体が温まるみたいだぞ。雨に濡れて肌寒い今の俺達にぴったりだろ?』

『そ、そうか……』



 なんかブルールがいつもよりも喜んでいないように見える。

 野菜が嫌いなんだろうか?

 でも野菜サンドは普通に食ってたよな?

 まあ、多分気のせいだろう。



 さて、いただきますか。


 俺とブルールはポトフを食べ始める。

 ブルールはいつものように3秒で食べ終わって――――いなかった。

 ブルールは必死にスープをふうふうしている。

 まだ一口も口をつけていない。


 え?

 もしかしてブルールって熱いものが苦手なのか?

 猫舌ってやつなんだろうか。

 オオカミなのにな。



 我慢しきれなくなったのか、スープを一舐めしてみるブルール。

 しかし、熱さに耐え切れず、思わずその辺に転がりまわっていた……



 ブルールってこんなに熱いものが苦手だったのか。

 野菜炒めとか鹿肉の盛り合わせとか、温かい料理は食えてたのに。

 まあ、それは別にスープではなかったし、冷めやすかったから大丈夫だったのかもな。


 そんな感じで食べるのに苦労しているブルールを後目に、俺は先にポトフを完食した。


 ふう。

 ブルールよりも先に食い終わったのはこれが初めてだよな。

 おかげで今回はブルールから羨まし気な目で見られることなく食べることができた。


 これからもこういうスープ系を作ろうかな。

 快適に食うことができるしさ。

 ……まあ、それはブルールがさすがに可哀想か。

 ほどほどにしておこう。


 俺が食い終わってもまだブルールはポトフを三分の一も食えていなかった。

 今になってようやく少しずつ食えるようになってきたという所か。

 俺はそんなブルールを眺めながら楽しんでいた。

 だが、ここで異変を感じ取る。



「+5÷^|8「:8|>%#」

「¥2%5€○*^」



 ん?

 遠くから何か聞こえるぞ。

 何だろう?


 俺達は岩場に隠れて料理を食っていた。

 その岩場の反対側から声が聞こえてくるのだ。

 俺はそっとその反対側をのぞき込む。



 そこに見えたのは二人の人間だった。

 人間が何やら言葉を交わしているようだ。

 一体何を話しているんだろうか?

 俺、日本語しか分からないから、さっぱり分からないんだよな。



『カンガ、どうした? 敵か?』



 ポトフを食べるのを中断してブルールが聞いてきた。



『ああ。人間が二人こっちに向かってくるみたいだ』

『そうなのか。ならここは逃げるぞ、カンガ』



 あれ?

 戦おうとしないんだ?

 まあ、俺も人間とは戦いたくはないとは思っていたからちょうどいいんだけどさ。



『戦わなくてもいいのか?』

『当たり前だろ。確かに一人一人の人間の力は弱い。でも一人の人間を殺したらどんなことになるか、お前なら分かるだろ? 元人間なんだからさ』



 そういえばそうだよな。

 前世では人を傷つけただけでも人生詰んだからな。

 人殺しなんて論外だ。


 今の魔物の生活であれば、即処罰されることはないだろう。

 まあ例外として、地域によってはゴブリンとしての種族の討伐依頼があるかもしれない。

 そのときは大体、種族の大量発生、人的被害が大きいため討伐依頼が出ているだけで、一部地域限定の依頼になるだろう。

 この場合は他の地域に移動し、そこで過ごせば問題ない。


 だが、もし俺自身、例えば防具を身につけた人殺しゴブリンの討伐依頼とか出されたらたまったもんじゃない。

 そういう指定の討伐依頼が出てしまったら、地域はどこであれ、討伐依頼はそいつが倒されるまでずっと出され続ける。

 つまり俺が死ぬまでずっと討伐対象になる訳だ。

 そんなのは絶対ごめんだ。



『ああ、分かってる。でもどうやって逃げるんだ? この辺隠れるような所はあまりないぞ?』

『別に見つかってもいいだろ。危害を加えなければ恐らく大丈夫だ。まあ見つからないことに、越したことはないけどな』



 まあ、確かにそうだな。

 危害を加えなければ、即討伐対象にはなり得ないだろう。

 ただ変なゴブリンがいるということで討伐依頼がある可能性も、否定できないが。

 でもそんなこと言ったらキリがないよな。

 そうなったら諦めてどこか遠くへ逃げるしかないだろう。



 こうして俺とブルールは人間からの逃走を図ることにした。


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