47.約束の防具を渡しました。
『カンガ、その防具、もしかして?』
ブルールは俺が手に持っている道具を見つめている。
『ああ、そうだ。約束の防具、ミスリルアーマーだ。待たせたな』
『え? まさかこれでお別れとか言うんじゃないだろうな!?』
へ?
なんか誤解されてるんだけど。
別にブルールと別れるなんて一言もいってねえんだが、俺。
というか、なんでミスリルアーマーを見ただけで別れを連想するんだよ。
被害妄想激しすぎだろ。
この食いしん坊オオカミ君。
『オレはまだ料理を食いたいんだ。何か悪い所があったら直す! だからそれだけはやめてくれ!』
『え? ああ、うーんと……』
あ、そういえば、防具を作るから別れるみたいな話をしたこともあったっけ。
もしかしてそのせいでブルールがそう思っているのか?
別にあのときはケンカをしていたから、勢いで言っただけなんだけどな。
もう終わったことだと俺は思っていたんだが。
このまま誤解させてしまうのも可哀想だよな。
早く本当のことを言ってやるか。
『別に別れるつもりはねえよ。ただ、これからの戦いが厳しくなるだろうからと思って作ってきただけだ。他意はねえよ』
『そ、そうなのか? それならいいんだが』
『そうだ。だからブルールは大人しく防具を受け取ればいい。ただ別に無理強いするつもりもねえ。気に入らないなら着けなくてもいい。どうする?』
『そ、それならありがたく受け取るぞ。ありがとな、カンガ』
ブルールはホッとした様子だった。
俺はそんなブルールの背に乗る。
そしてブルールにミスリルアーマーを装着させようとした。
カチャっとブルールにミスリルアーマーが装着される。
形はブルールに合っていたみたいだな。
良かった。
だけどちょっと足の付け根部分がぶかぶかなんだよな。
思ったよりもスリムだよな、ブルールって。
うーん。
ちょっと大きかったか?
まあ余裕を持って作ったから当然といえば当然なんだが。
これは調整が必要だな。
『ブルール、ちょっと動かないでいてくれるか? 防具を調整したいんだ』
『分かった。任せるぞ』
俺は【加工】を使って防具を微調整する。
え?
なんでそんなことができるのかって?
それはだな。
【観察】さんが教えてくれたからだ。
お風呂に入っていたときがあっただろ?
実はそのときに色々と試していたんだ。
その中で判明したものの一つが、自分のスキルを【観察】できることだ。
これが結構便利なんだよな。
ちなみに【観察】さんによる【加工】の説明は次の通りだ。
加工
武器や防具を鍛錬するスキル。
その他にも摩耗した武器などを修復したり、形を変えたりすることができる。
ほら、書いてあるだろ?
武器や防具の形を変えられるってさ。
だから防具の微調整もできるんじゃないかと思ってな。
え?
俺がよくやってる鉄鉱石から全く別の金属を作る技術が書いてないって?
うん、それは俺も思った。
まあ俺もよく分かっていないが、多分形を変えられる所が発展したんじゃないかな?
俺の【加工】のスキルレベル高いしさ。
それ位のことが起きても不思議じゃないだろう。
ちなみに俺は今まで防具の微調整を行ったことはない。
つまり初めての経験となる。
でも今回は使い慣れた【加工】のスキルを使うことに変わりないから失敗はしないと思う。
全く新しいスキルを使う場合は失敗するけどさ。
それに俺には【考察】さんがいる。
【考察】さんが色々と教えてくれるから、初めてのことでも結構分かっちゃうのだ。
本当、【考察】さんってすごいわ。
そういえば、【考察】さんを【観察】した結果は以下の通りだ。
考察
思考をサポートするスキル。
難しいことを考える手助けとなる。
やっぱり俺の予想通り、思考を助けるスキルだったな。
この説明文だけだと大したことように見える。
でも俺はどんだけこの【考察】さんに助けられてきたことか。
【考察】さんって縁の下の力持ちって感じだよな。
うん。
さて、そんなことを考えているうちに防具の調整が終わったぞ。
ブルールの体にミスリルアーマーがぴったりとフィットしている。
これならブルールの素早い走りを邪魔することもないだろう。
『終わったぞ、ブルール』
『おお、そうなのか? 全然鎧の重さを感じないんだが』
『ああ、なんといってもミスリル製だからな。全然重くないのさ』
俺はブルールの背から降りた。
ブルールは背中に装着されたミスリルアーマーを見ようとしている。
でも多分あんまり見れてないだろうな。
ちょっとは見えているんだろうけど。
首を回すにも限界があるだろうしな。
『ありがとな、カンガ。防具を作ってくれて』
『いや、それほどでもねえよ』
『で、戦いが厳しくなるとカンガは言っていたが、覚悟は決まったのか?』
『ああ。リザードマンの所まで行こうと思ってる』
俺はブルールの方を見てそう言った。
もう迷いはない。
住処を離れて困ることはほとんどないしな。
アクアペンダントとかもバッグに一応いれてあるし。
住処にそこまで脅威となるようなものは一切残してないはずだ。
まあ極上綿花で作られたベッドは残してあるけどさ。
もし見つかったら換金されるかもしれないが、それはまあしょうがない。
別に換金された所で俺の命の脅威になるとは思えないし、それは別にいいだろう。
『そっか。なら一緒に行くか、リザードマンの所へ』
『え? ブルールも来てくれるのか?』
『当たり前だろ。そもそもオレが言い出したことだぞ? 言い出したヤツが行かなくてどうする』
『そ、そういえばそうだったな。なら、これからもよろしく頼むな、ブルール』
『ああ、こちらこそ頼むぜ、カンガ』
こうして俺達はリザードマンの所へ旅立つことになった。
『あ、ちょっと待ってくれ』
『ん? なんだいきなり?』
『例の手紙をこの辺に隠しておこうと思ってな。持っていてなくすのを避けたい。ここに隠しておけば見つからないだろ』
そう言ってブルールは自分の部屋のどこかに手紙をしまいこんだ。
ブルール、そんなにその手紙が大事か。
あんな大したことない内容なのにな。
別に盗まれても全く問題ないから置いておいても構わないけどよ。
『さて、行くか』
『お、おう』
満足気なブルールは先に外へと飛び出した。
俺はそんなブルールの後を追う。




