37.住処を改良してみました。
無事、ブルール用のスペースを作り終えた俺。
さて、改めてどう変わったかチェックするか。
ブルール用のスペースを作ると同時に、入口を新しく作り変えた。
入口はブルールがギリギリ通れる位の広さに作った。
あまり入口を広げすぎるとそれだけ大きなサイズの魔物が中に入ってきてしまうからな。
それは避けたかったからギリギリのサイズにした。
それでも俺にとっては十分すぎるほど大きいけどな。
もちろんブルールが入れないと意味がないので、それより狭くはできないし。
この大きさがベストなんじゃないかと考えている。
そしてそのブルールの居住スペースの先に、俺の居住スペースがある。
例の手前の部屋と奥の部屋だ。
……いい加減、部屋にちゃんとした名前を付けないと紛らわしいな。
このままだと手前の部屋がブルールの部屋より奥にある訳だし、訳わからなくなる。
よし、名前を決めるか。
手前の部屋はよく【調合】とか【加工】をするときに使うから作業部屋と呼ぼう。
奥の部屋は俺のベッドがある部屋だから寝室と呼べばいいか。
うん、これで分かりやすいだろう。
えっ、それじゃ普通すぎるって?
いやいや、普通がいいんだよ。
変にマジカルゴブリンルームとか時に抗う疾風の間とか付けるよりはさ。
それに何より分かりやすい方がいいだろ?
作業部屋とブルールの部屋の間には細い通路がある。
この通路は今までの通路を流用している。
つまり、俺がギリギリ入れる程度の狭さのはずだ。
まだ実際に入って確かめてはいないが、まず変わってることはないだろうしな。
なので、ブルールは入ることはできない。
俺はこの通路を広げるつもりはない。
さすがに俺のプライベートスペースにまでブルールを入れたくはないからな。
ブルールには事情を話してあるから、【加工】をしている様子を見られても問題はないが。
ただ単に気分的な問題だ。
後は防衛の為だな。
ブルールの体長は結構大きい。
だからそのブルールがギリギリ入れる位の大きさでも様々な魔物が入れてしまうだろう。
そんな魔物を万が一にも俺の居住スペースに入れないためにも狭い通路は必要なのだ。
そうしておけば、ブルールが危なくなってどこかに逃げてしまっても安心だ。
俺の居住スペースへの侵入に手間取っている間に俺の方で対策を練ることができるからな。
別にブルールを頼りにしていない訳ではない。
いざというとき、自分の身は自分で守らないといけないと思うのさ。
さて、ブルールの部屋もこんな感じでちゃんと作り終えた。
次は作業部屋と寝室の整備をしないとな。
あまり状況がひどくなってなければいいが。
俺は不安を抱きつつも、作業部屋の方へと向かった。
俺は作業部屋へと足を踏み入れた。
ぴちゃっ
あ、これ完全に水に浸かってる音だ。
周りは――――うん、池だな。
完全にこの部屋、水没しちまってるわ。
そうしてそんなことになっているのか?
その理由は明白。
部屋の天井に開けた空気穴から入ってきた水が部屋に溜まってしまっているのだ。
嫌な状態になっていそうなことは予想はしていた。
でもこれは想像以上だな。
どうするんだよ、これ?
いくらひどいと言っても、床が泥になっているとかその程度だと思っていたぞ。
なんで池ができちまってるんだよ。
俺がいない間にどんだけ雨降っていたんだよ。
この部屋にたまってる水、軽く俺のひざ位の水位はあるぞ。
おかしいだろ。
まあどうしてこうなったかをよく考えれば別におかしくもないんだがな。
まず、俺の住処は地下にある。
つまり、入ってきた水は溜まっていく一方。
決して減ることはない。
いや、本来は床の土とかが吸収するんだろう。
だが不思議と俺が整備した土は何故か水を吸収しにくいみたいだ。
実際、部屋の床を踏んでみても、床の土は泥にはなっていなかった。
普段は便利なこの特徴だが、今回は裏目に出てしまったようだな。
さて、状況は大体把握できた。
後はどう対処するか、だな。
正直、正攻法では相当厳しいだろう。
俺の作業部屋は外敵に侵入されないようにあらゆる穴をできるだけ小さく作ってある。
つまり、水を排出するには都合が非常に悪いのだ。
水をすくって運ぼうにも、そのスペースがない。
まあそんなことをした所で、いつまで経っても溜まった水はなくならないだろうけどな。
運べる量が少なすぎる。
ならどうすればいいのか?
確信は持てないが、ある程度の対策法の見当はついている。
俺はかつて、黒歴史の武器や防具を埋める際に、グランドペンダントを使用したことがある。
グランドペンダントは、不要な土砂をその内部に貯めこみ、壊れると土砂を放出した。
そのペンダントの水バージョンがあれば、この状況を何とかできるのではと考えているのだ。
水のペンダントをいくつか作り、作業部屋に溜まった水を吸い込んでもらう。
そしてどこか遠くで水のペンダントを壊し、水を放出する。
そうすれば部屋の中の水を一気になくすことができると思うのだ。
だからまずは水のペンダントを作らないとな。
細工リストを調べてみるか。
うーん……あった。
これだろうな。
早速作ってみるか。
チギチギ、チョキチョキ……
{ アクアペンダントを入手しました。 }
できたぞ。
一応【観察】で内容を確認してみるか。
アクアペンダント
大海の力を宿していると言われる群青色のペンダント。
これには水を収納する不思議な機能がある。
その便利さ故、非常に高値で取引される。
うん、予想通りだ。
じゃあ後はアクアペンダントをいくつか作って、水を吸収させますか。
チギチギ、チョキチョキ……
チギチギ、チョキチョキ……
チギチギ、チョキチョキ……
{ アクアペンダントを入手しました。 }
{ アクアペンダントを入手しました。 }
{ アクアペンダントを入手しました。 }
{ 【細工lv18】を獲得しました。 }
よし、こんな所だな。
さあアクアペンダント、俺の部屋の水分を吸ってくれ!
俺は作成したアクアペンダントを池に浮かべる。
するとみるみるうちにアクアペンダントの中に水が吸い込まれていく。
そしてしばらく経つと、俺の部屋にあった池はすっかりと消え、以前の綺麗に整えられた床があらわになった。
本当、グランドペンダントのときも思ったが、このペンダントどうなってるんだ?
どうしてこんな大量の物をしまいこめるんだよ。
不思議すぎるよな。
まあ助かったからいいんだけどさ。
アクアペンダントのおかげでだいぶ部屋の状態は良くなったな。
床の土壌も水を吸い込んでないから荒れてないし。
所々に吸い込み切れなかった水たまりがあるが、それは仕方ないだろう。
後は雨漏りの対策をしないとな。
だが空気穴をなくしてしまうと、息苦しくなるし、できない。
ならどうすればいいのか?
空気穴をなくさずに雨漏りをなくせばいいのだ。
空気穴があることと雨が入ってしまうのは表裏一体と思うかもしれない。
だが、そうとは限らないのだ。
だって人間の家の中って雨漏りのしない家でも息苦しくはないだろ?
それはごく微細な穴がどこかに空いているから大丈夫なだけだ。
そう。
雨が入らない程度の細かい穴が空いていれば十分なのだ。
そうすれば雨は入らないけれど、空気は供給される。
完璧だろ?
まあ、ほんの少しは水滴が入ってしまうかもしれないけど、今ほどじゃないだろ。
数分に一滴程度だったらバケツ代わりにアクアペンダントを置いておけばいい。
そうすれば雨漏り問題は解決だ。
俺は早速その作業に取り掛かった。
【加工】【器用】【考察】をフル稼働させ、極力水滴が入り込まない複雑な空気穴を作る。
こうして、雨漏りの原因となった空気穴は埋め、新たな空気穴を作成した。
そうすることで息苦しさなく、でも雨漏りのすることのない快適な空間作りに俺は成功した。




