34.まだ追われていました。
なぜこんな日本の梅雨みたいな状態になっているのか?
ブルールによれば、まだ雨季になるには早いはず。
でもこれ完全に雨季に入ったような雰囲気だよな。
そこの所どうなのかブルールに聞いてみるか。
『ブルール、この場所はもう雨季になっちまったのか?』
『そうみたいだな。いつもより早い気もするが。まあそういうこともあるだろう』
ブルールも雨季になったと思っているらしい。
やっぱりそうだよな。
これで雨季じゃないって言ったら、何が原因なんだって話だもんな。
それに雨季に入ったとすれば、あのウルフの大移動にも説明がつく。
ブルールは雨季になるとあのキノコがある方の森林地帯付近に移動すると言っていた。
おそらくそれは他のウルフも同じ。
だってこんな居心地の悪いんだもん。
しかも雨が降っていて地面がぬかるんでいるし、こんな所にいたくはないだろうさ。
俺だって住処がここにさえなければさっさと他の所に避難してたわ。
『ウルフの大移動ってこれが原因だったのか?』
『そうだろうな。雨季になると不快な上、土壌もぬかるんだものに変化する。つまり、とても歩きにくくなるのさ』
『そっか。そしたらそんな所にわざわざ居たくないもんな』
『ああ。オレもカンガがここに行くって言わなければ、こんな所に来ないだろう』
悪かったな!
俺がここに来たいなんて言ってさ!
だってしょうがないだろ。
住処には危険な物をたくさん残しちまってるし、離れる訳には行かねえんだよ。
今回長旅でしばらく留守にしちまってるけどさ。
でもやっぱりずっと放置するのは避けたい。
念には念を入れているが、何が起きるか分からねえしな。
特に今は雨季に入ってこんなに雨が降っちまってる。
そうなると、俺の住処も無事ではない気がするんだよな。
空気穴から水が入り込むし、状態はかなり悪くなっているだろう。
あまり考えたくはないが。
まあ、それは住処に着いてから考えればいいか。
俺達はぬかるんだ地面をゆっくりと歩いて住処の方へと向かった。
早く住処に向かいたいが、こんな所を走ったら泥がはねて体が泥だらけになるからな。
それは避けたい。
俺の住処にはお風呂なんてねえからな。
泥が一回ついたら落とすのは厳しいだろう。
今度時間があったら作ってみるか、お風呂。
荒野地帯では全速力で走ってきた俺達だが、もうゆっくり歩いても問題ないだろう。
もう森林地帯に突入したし、荒野地帯で襲ってきた謎の生物ももう振り切れただろうしな。
現に紫色の塊はしばらく飛んできてはいない。
ブルールが全速力で駆け抜けてくれたおかげだな。
ありがとう、ブルール。
全力で逃げたブルールも疲れただろうが、俺もかなり疲弊した。
だって全力で駆けるブルールに片手でしがみつき、片手で【高速加工】するんだぞ?
死ぬかと思ったわ。
ブルールから振り落とされないようにしがみつくだけでも大変だっていうのにさ。
まあ、それもとりあえずはしなくて良くなったんだし、良しとするか。
……あれ?
なんか背後から何者かの気配がする。
まさかな……
『ブルール、なにか気配を感じないか?』
『ああ。恐らくまだ追いかけてきているんだろうな。全く、執念深いヤツだ』
やはりそうか。
ブルールも同意見のようだ。
恐らく荒野地帯で追いかけてきたヤツがまだ追ってきている。
ここまでの俺達の苦労は一体……
本当、どこまで執念深いヤツなんだよ。
そういえばこの世界ってそういうやつ多いよな。
ジャイアントマッシュもまさにそうだったし。
ブルールもすごい執念深いしな。
俺の料理に対して。
俺に対してすごい怒っているときでも、その感情よりも料理優先だもんな。
どんだけ料理が大事なんだよって話だよな、本当。
その話はおいておこう。
それにしても、今回はジャイアントマッシュのときと違って、俺達何もしてないだろ。
なのにずっと追いかけられている。
それっておかしくね?
まさか縄張りに入ったから気に入らない的なやつか?
だとしても、もうソイツの縄張り外まで逃げてきただろ。
だってここはもう森林地帯だぞ。
荒野地帯じゃないし、さすがにそこまで縄張りがあるとは思えない。
なんでそんな所まで追いかけてくるんだよ?
訳が分からない。
『カンガ、幸いヤツとは距離がある。隠れてやり過ごすのも手じゃないのか?』
確かにその方が良さそうだな。
追いかけてくるヤツは謎な部分が多い。
未だ本体を見ていないし、どんな生物かも未知数だ。
そんな相手に戦いを挑むなんて自殺行為だろ。
なら戦わずに住む方法。
隠れてやり過ごす。
この一択だ。
俺は手持ちのミスリルを使い、ミスリルで覆われた四角い部屋を作成する。
そして地面にその部屋が入るだけの穴を開ける。
その部屋をその穴に移動させて埋め込む。
それから天井を泥で覆い隠す。
あ、もちろん俺は部屋の内部にいる。
自分が安全な場所にいなきゃ意味ないからな。
だから泥を直接触れる訳はないので、全部【念力】で作業することになった。
よし、できた。
うん、完璧。
これで隠れられるし、もし攻撃を受けても頑丈なミスリルが守ってくれるから安心だな。
ちなみにミスリルには微細な穴を開けてあるので窒息の心配もない。
穴はとても小さいので、泥が入り込む心配もないしな。
そういう微細な穴は【加工】でちょこっといじったらできた。
多分【器用】と【考察】さんの助けがある俺だから細かいこともできるんだろう。
本当、スキル様様だな。
さて、守りの準備もできたことだし、周囲を観察してみますか。
足音が近づいてくる。
そろそろいけるか?
【観察】、作動!
ウィルダーネスバグズlv59
HP 1127/1127
MP 121/ 121
ステータス 不明
スキル 不明
は?
なにこのステータス?
いや、HPとMP位しか見えてないけどさ。
それにしても高すぎだろ。
それにlv59ってなんだよ?
強すぎだろ。
HPなんて俺の二十倍以上あるぞ。
おかしくねえか?
俺がギリギリ死ぬ攻撃を二十回受けても大丈夫ってことだぞ?
タフすぎるだろ。
というか、そんなヤツに追いかけられていたんだな、俺達。
ホントおっかねえわ。
なんとか隠れることができてよかったな。
うん。
後はずっと隠れてやり過ごすだけだ。
なに、俺とブルールなら【隠密】があるから大丈夫―――なんていうと死亡フラグがたつな。
【隠密】も万能ではない。
一回気づかれてしまうと一気に効力を失ってしまうからな。
過信はしちゃダメだ。
ずっと隠れてやり過ごすなんて暇すぎるよな。
仕方ない。
ここから【観察】でソイツのステータスを見て暇つぶしでもするか。
【観察】する位だったら多分大丈夫だろ。
そもそもこんな強いヤツのステータスにそんな変化があるとは思えないけどな。
何もしないよりはマシだろう。
という訳で、巨大虫【観察】、開始!
実際に目で見てないから大きさは定かではないがな。
それに虫かどうかも怪しい。
バグズだから多分虫であるとは思うんだけど。
まあ、それはおいておこう。
早速、いくぞ。




