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ゴブリン、頑張って生きる。  作者: はちみやなつき
Ⅰ この世界で生き残るために
30/222

30.エスパーになってみました。

 あれから俺達は逃げ続けた。

 荒野地帯をひたすら駆け抜け、そして森林地帯との境目まで戻ってくることができた。



『はあ、はあ……これでさすがに振り切っただろう』

『後ろから魔物の反応はない。大丈夫そうだ。ありがとな、ブルール』



 何とかあのヤドカリの集団を振り切ることができたようだ。

 本当、強敵だった。


 一匹一匹もなかなかタフだった。

 だがそれ以上に数の暴力が辛すぎた。

 俺達は二匹いるとはいえ、ほぼ単独行動しているようなもんだもんな。

 これからも数の差による不利な戦いが続くことは間違いないだろう。

 先が思いやられるぜ、本当。



 ただ【高速加工】の取得と、壁の有用性に気付くことができたのは大きな収穫だ。

 壁の強度は加工元になる金属に依存するのが難点だが、かなり強力な防御手段を得た。

 湖にかける橋として使ったり、上へ登るために使ったりもできるので、移動手段としても優秀だな。


 そういえば今更だが、俺が作っていたのって”壁”であってるんだよな?

 どう考えても壁じゃない気がするのは気のせいなのか……?

 でも加工リストの”壁”を作っている訳だから他に呼び方はないんだけどな。


 

『カンガ、さっきの防御魔法、どうやったんだ?』

『へ? 防御魔法? 俺、魔法なんて使ってないけど?』



 俺の言葉に困惑するブルール。


 いや、俺、嘘言ってないよ?

 本当だよ?


 だってMP減ってないもん。

 だからこそ連発しても大丈夫な訳で。


 というか、そう考えると【加工】って本当便利だよな。

 MP消費がないから事実上使い放題な訳で。

 本来攻撃とか防御とか戦闘に使わないスキルだからそうなのかな?

 いまいちその辺の定義はよく分からないが。

 まあ、便利なものは便利でいいんじゃないか?

 不便よりも便利な方がいいだろう。


 

 そういえばブルールが使っている【バインド】の魔法は【束縛魔法】という魔法の一種だよな。

 だからブルールはMP消費があるのか。


 魔法か……

 どんなのがあるんだろうな?

 やっぱり炎魔法とか氷魔法とかあるのか?

 炎魔法は使えたら火起こししなくてもいいから便利そうだけどな。


 まあもし俺が魔法を使えた所で戦闘にはまともに使えないだろうけどな。

 だって俺、MP15しかないし。

 ちょっと魔法使ったらすぐに使えなくなりそうだ。


 その辺、人間の魔導士とかだとMPたくさんあるんだろうか?

 会ったことないから分からないけどな。

 というか会いたくないんだがな。

 だって今の俺、ゴブリンだし。

 ただの魔物だし。

 出会ったら魔法で殺されるなんてことがあり得るからな。

 本当に人間、怖い。

 会ったことないけど。



『じゃあどうやってあの巨大な壁を出したんだ? てっきり土魔法だと思ったんだが』

『そうなのか? そういえばゲームの魔法もそれっぽいのあるよな』

『げーむ、ってなんだ?』

『い、いや、こっちの話だ。気にするな』



 ゲームにある土属性の魔法で、術者のそばから岩が地面から突き出て敵を襲う魔法を見たことあるな。

 俺、それに近い事できてるんじゃね?

 うわ、俺、魔法使いになっちゃったかぁ。

 マジシャンかぁ。



『で? どういう力を使ったんだ?』

『そうだな……【加工】っていう力を使ったんだ』

『【加工】? 体がごつい人間がたまに持っているあのスキルか?』



 体がごつい人間。

 多分ブルールが言っているのは鍛冶師のことだろうな。

 この世界にそういう役職の人がいるのか。

 俺、人間に生まれてたら一生鍛冶師の仕事でやっていけただろうにな。

 なんで俺、ゴブリンに生まれたんだか。

 もっと楽して生きたかったのにな。 



『多分そうだ。【加工】は武器や防具を作るのに使うスキルだからな』

『そうなのか。でもそういう人間があんな巨大な壁を作る所は見た事ないけどなぁ』

  


 ふ、ふーん?

 多分ブルールが見た事ないだけで、実は当たり前のことなんじゃないかなぁ?


 ……多分、ブルールが言っていることは合っているんだろうな。

 俺、なんだかんだで【加工】のスキルカンストしちゃったし。

 なんか大それた特殊スキルもついちゃったし。

 しかも【考察】さんのサポートも受けられるから、普通の人と感覚が違うんだろうな。

 今度から使わないように気を付けるか。


 目立つとロクなことにならないからな。

 例えば人間の冒険者ギルドにある危険生物の討伐依頼で俺がターゲットになりかねない。

 そんなの絶対ごめんだ。

 まあ、この世界に冒険者ギルドという施設があるかどうか分からないけどな。

 


『多分ブルールが見ていないだけで、みんな本当はそういうことできるんじゃないかな?』

『そうなのか。結構強力な力なんだな』



 ブルールにはそういう風に理解してもらおう。

 下手にあれは俺がやったんじゃないとか言っても不審がられるだけだからな。

 湖に道を作ったりもしちゃったし。

 もう言い訳はできないわな。





 この先は森林地帯だ。

 ここを進んでしまうと休む場所もなさそうだし、この辺りで休むとするか。

 今は夜だからブルールにとってはちょっとタイミングが悪いだろうけど。



『ブルール、この辺りで一泊しないか? 戦いの後で疲れただろうしな』

『おお、いいな! そうしよう!』



 そう言ったブルールはよだれを垂らし始めた。

 いや、早いって。

 まだ何の料理を作るかも決めてないっていうのにさ。



『今日は何を作ろうか?』

『カンガに任せる』 

『任せると言われてもなぁ……』



 どうしようかな、料理?

 この前はキノコ。

 そのさらに前は鹿肉か。

 被らない方がいいよな。

 うーん。



『木の実なんてどうだ? この辺りは森だから何かしら食えるのあるだろ』

『いいな、それ! じゃあオレがとってくるわ』

『頼んだぞ。くれぐれも毒物はとってくるなよ。分かったな?』

『大丈夫だ。任せとけ』



 そう言ったブルールは森の中に入っていった。



 さて、食材はブルールに任せるとして、俺は料理の準備をするとしますか。

 ちょっと森に入って木材を集める。

 元の場所に戻ってフライパンと皿、マッチを作成してっと。

 はい、準備OK。

 もう慣れたもんだな。

 



 時間余っちまったな。

 何となく分かっていたことだが。

 何して暇つぶししようかな?

 うーん。

 そうだな。


 できるかどうか分からないが、遠くにある鉱石を操作できたら便利だよな。

 例えば五メートル先にある鉄鉱石を操作してフライパンに変えるとかな。

 何に役に立つかと言われても困るけど。

 ちょっとやってみるか。



 鉄鉱石をここに置いてっと。

 俺はちょっと鉄鉱石から離れてみる。


 じゃあ始めるぞ。

 ふんっ!



 ………………。



 もう一回。

 ふんっ!



 ………………。



 ですよねー。

 そんなことできたら俺、エスパーになっちまうよ。

 できる訳が――


 あれっ?

 何か頭にイメージが湧いてくるんだけど。

 鉄鉱石を思い浮かべて、それを金剛砥石でこするイメージ?


 ふむふむ。

 何かよく分からないけどやってみよう。

 別に試して減るものじゃないしな。

 正直暇が潰せれば何でもいいさ。


 ではいくぞ。

 ふんっ!



 ガキンッ



{ フライパンを入手しました。 }

{ 【念力 lv1】を獲得しました。 }

 

 

 えっ、マジで?

 マジでできちゃったの、俺?


 すいません。

 俺、エスパーでした。

 俺自身も今さっき知りました。

 本当にごめんなさい。



 ていうか、こんなことができちゃっていいのかよ?

 これ、見る人が見たら、急に目の前にあった石がフライパンに変化したみたいになるぞ。

 軽くホラーだよな?

 俺、お化け屋敷でも開けるんじゃね?

 まあ、俺自身がお化け嫌いだから絶対やらないけどさ。


 でもこれ、マジで生活変わるぞ。

 だって目の届く範囲に置いておけば、動かなくても【加工】とかできちまうからな。

 引きこもり生活がはかどるぜ。


 それにもしかしたら、【念力】で物を動かせるんじゃないか?

 よくそういう描写をアニメやゲームで見たことがあるぞ。

 よし、やってみるか。


 ふんっ!


 するとフライパンはふわふわとゆっくりと宙に浮き、俺の手の中におさまった。


 できちまったよ。

 おい、本当にいいのか?

 これだったら、一歩も動かずに生活できちまうぞ?

 どんだけイージーな生活できるんだよ?


 マジか。

 これ、俺がゴブリンになってから一番嬉しい出来事かもしれない。

 俺は楽するのが好きだ。

 そしてこの【念力】を使えばあらゆることを楽にできる。

 本当に【念力】、最高。


 俺は調子に乗って【念力】を使いまくって、色んな物をフワフワ浮かせていた。

 そのおかげで【念力】のスキルは7にまで上がった。

 しかし、俺は見落としていた。


 この奇妙な光景を見ている者がいたことを……



『カンガ、これはどういうことなんだ?』

『あ、しまった……』



 ブルールの声を聞き、ようやく正気に戻った俺。

 その瞬間、浮いていた物が全て落下し、音を立てる。


 まずい。

 何か言い訳を考えなければ……

 そうだ!



『ブルール、おかえり。そういえば食器がそこらへんに転がっているんだけど、どうしてか知らない? 俺、記憶飛んじゃったみたいで』 

『記憶が飛んだのか?』 

『ああ。ブルールを見送って、料理の準備をしていた所までは覚えているんだが』

『そうか。ならなんでフライパンが二つもあるんだ? 一つで十分だろ』



 あ、しまった。

 そういえば【念力】できたらいいなと思ってフライパンを余分に作っちまったんだった。

 やっちまったな……。



『どうしてなんだろうな? それも記憶にないんだ。本当何が起こってるんだかさっぱりだ』

『本当か? なら、どうしてカンガのスキルに【念力】という文字が入ってんだろうな?』



 あ、ですよねー。

 ごまかせないですよねー。

 本当、すいませんでした。



 それから俺は嘘をついた罰としてブルールの料理をひたすら作ることになった。

 ちなみにこのおかげで【料理】のスキルレベルが20から26まで上がった。

 嬉しいけどあんまり嬉しくないな……


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