27.ミスリルを採掘してみました。
ロープを降りてから俺は辺りを見渡す。
するとそこには一面にびっしりと張り付いたミスリルで埋め尽くされていた。
あれっ?
ミスリルって貴重なんだよな?
それがこんなにあるなんてことがあり得るのか?
それとも実はミスリルってそこまで貴重じゃないのか?
まあ考えてばかりいても仕方がない。
とりあえず採掘を始めようか。
俺は持ち込んだ金剛砥石を使ってミスリルの一部を砕く。
そして落っこちたミスリル破片を俺は回収していく。
それを繰り返すことでそれなりの量のミスリルを採掘することができた。
案外簡単なんだな。
それが俺の感想だった。
ただ、どうして簡単に思えたかといえば、俺が金剛砥石を持っていたからだと思う。
俺が作った金剛砥石は非常に質が良い。
そしてその金剛砥石の硬度はミスリルをも凌ぐ。
だからそれを使えばミスリルを砕くなんて造作もないのだ。
……言っておくが、俺はナルシストなんかじゃないからな。
だって【観察】さんのお墨付きもらってるもん。
だから金剛砥石が質が良いのは事実じゃん?
文句あるなら【観察】さんによろしくな。
話を戻そう。
裏を返せば、金剛砥石がない場合、相当ミスリルの回収に苦労するということだ。
ミスリルは丈夫だから、ちょっとのことでは傷つかないし、砕けない。
一応俺の武器、アダマンダガーで削れなくはないが、そんなことを繰り返していたらいつかは壊れそうで嫌だ。
だからそんな状態で一体どう回収するんだって話だよな。
まさかまるごと取ることなんてできないだろうし。
正直俺には他のミスリル採掘の方法が思いつかない。
本当に持っていて良かった、金剛砥石。
とにかく俺は無事にミスリルを回収し終えた。
後は戻るだけだ。
そう思った俺は垂らしたロープをつたって上へ登ろうとする。
しかし、ロープがあるはずの場所にロープはなかった。
どういうことだ?
そう思った俺は周囲を見渡す。
すると、銀色の鉱石、ミスリルが動き始めた……!?
なんで鉱石が動くんだよ!?
そう思った俺だったが、すぐに謎は解けた。
動くミスリルの下から何か生物の足らしきものが見えたのだ。
うん。
きっとこれはヤドカリみたいな魔物が動いているに違いない。
ミスリルを宿にするなんて話は聞いたことがないが、ここは異世界だ。
何があってもおかしくはない。
とりあえず【観察】で情報を調べるか。
ミスリルクラブ
ミスリルを被った魔物。
頑丈なミスリルで体を守っている為、ダメージを与えるのは非常に困難。
ミスリルは軽いので、動きも遅くはなく、隙がない。
やはり魔物だったか。
一応ステータスも調べておくか。
ミスリルクラブ lv6
HP 36/36
MP 5/ 5
攻撃力 8
防御力 502
魔法攻撃力 3
魔法防御力 480
素早さ 5
スキル
鉄壁、暗視、隠密
うわっ、極端なステータスだな。
いかにも防御一筋ですって感じで、攻撃はからきしダメだと言ったところか。
ただその攻撃力の低さもあまりありがたくないんだよな。
結局俺が受けるダメージは1な訳だしさ。
それよりこの高すぎる防御力。
厄介すぎるだろ。
正直アダマンダガーで切り付けてもダメージ通るか怪しいぞ?
そして極め付きはその数。
なんかそこら中の銀の鉱石が動き始めたんですけど。
その数、百匹以上はいるんじゃないか?
おかしいだろ。
いくらコイツの素早さが遅いと言ったって、これじゃ足の踏み場もないし、逃げられないんだが。
恐らく着地した所から1ダメージの集中放火を受けて、多分死ぬことになる。
逃げようにも、逃げ場が天井に空いているあの小さな穴しかないからな。
正直あそこにたどりつくまでに生き残っている自信がない。
フワンジョウロープが残っていればまだ良かったんだがな。
だが、ちぎられたロープが地面に落ちているのでそれも絶望的。
多分ロープはこの大量にいるミスリルクラブに切られたんだろうな。
ミスリルクラブの攻撃力は低い。
だからといって、ロープを切れないなんてことはないからな。
殻にしているミスリルを使えばむしろほとんどのものを切断できるだろう。
そう考えるとコイツ、恐らくステータスの実数値よりも攻撃力は高いぞ。
まあ幸い俺には関係ない話だけどさ。
俺にはミスリルよりも丈夫なアダマンダガーにも耐えられる防御力があるからな。
多分大丈夫だろう。
『カンガ、無事か!?』
地上からブルールからの念話が聞こえてきた。
どうやらブルールは無事のようだな。
『無事なんかじゃねえよ。なんか急にミスリルを背負ったヤドカリに囲まれちまってヤバい状況だ』
『奇遇だな。オレの方も良くない状況だ。こちらはミスリルではない普通のヤドカリの大群ではあるがな』
『そうか……どうやら俺達、ヤドカリの巣に紛れ込んじまったようだな』
『そういうことになるだろうな』
ヤドカリの巣か。
この不自然なクレーターの景色を見た時から嫌な予感はしてたんだけどな。
だからある程度の戦いは覚悟していた。
でもこれは予想をはるかに超えてまずい状況だ。
まさかこんな大群が一斉に襲ってくるなんてな。
しかもこっちは普通のヤドカリではなくミスリルのヤドカリだもんな。
まともに攻撃さえ通らないだろう。
地上にもヤドカリが大勢いるようだし、ブルールの助けは望めそうにないよな。
というか、もしブルールがやられたら本当にまずい。
だって地上のヤドカリまでこの中に入ってくるんだぞ?
そうでなくても俺、詰んでいるのにさ。
ブルール、何とかこらえてくれ。
もしブルールが善戦して、地上のヤドカリを一匹もこの穴に通さなかったとしよう。
だとしても俺はどうすればいいんだ?
俺が持っている短剣、アダマンダガーを使えば、ヤドカリの数匹は倒せるかもしれない。
だが相手は優に百匹は超える大群。
そんな奴らを相手にしていたら、いかに頑丈な武器であろうとも消耗しきってしまうだろう。
それに一匹のヤドカリを攻撃している間に他のヤドカリから攻撃を受ける可能性が高い。
ヤドカリは非常に頑丈だから、多分一撃では倒せない。
だから少なくとも複数回は攻撃しないといけない。
その間にそこら中にいるヤドカリが俺をつたってきて、攻撃してくるのは目に見えている。
いくら素早さが遅いやつでも、数には勝てないよな。
はあ。
一体どうすればいいっていうんだ……
本当に何か打開策はないのか?
このままじゃマジで死ぬぞ。
うーん。
考えろ、俺。




