26.ミスリルを発見しました。
俺は鍾乳洞の中の鉱石を【観察】して回った。
しかし、どの鉱石もミスリルという結果にはならなかった。
ほとんどは鉄鉱石。
稀に銀鉱石。
収穫はなかった。
いや、収穫自体はあったな。
物としての収穫はなかったが。
なんと、俺の【観察】のレベルが7にまで上がったのだ!
隅々まで【観察】しまくったもんな。
そりゃスキルレベルの上がりにくい【観察】さんでもさすがに上がるわな。
俺はブルールと合流する。
ブルールに聞いてみても、どうやら収穫はなかったらしい。
まあ、そりゃそうだろうな。
俺達は鍾乳洞の入口から左右に分かれて探した。
だが見た感じどちらも大差ない見た目だったし、結果が同じになることは目に見えていた。
結構神秘的な場所だからてっきりここにあると思ってんだけどなー。
残念。
仕方ないから戻るか。
諦めた俺は鍾乳洞から出ようとする。
だがブルールは動こうとしない。
どうした、ブルール?
早く次の所へ向かおうぜ?
『カンガ、まだ探し終わっていないぞ』
『え? でも探せる所は全て探しただろ?』
『いや、まだ探し終わってはいない』
この食いしん坊オオカミ君は一体何を言っているんだか。
もう隅々まで探したろ。
【観察】のレベルが2も上がる位しっかりとさ。
後探してないとすれば、湖の中とかそれ位しか……
ってまさか!?
『湖の土壌をまだ確かめていない。そう言いたいのか?』
ブルールはこくりとうなづく。
うわー、マジか。
いくらミスリルが貴重なものだといってもそこまでして探したくないわ。
だって俺、カナヅチだもん。
二秒位その場に沈むのがやっとだし。
平泳ぎとかなんとかも全くできないから少しも泳いで進むことができねえぞ。
だから水中を探すなんて無理。
どうしてもというならブルールさんだけでやってね。
俺は知らないよ?
あれ?
そういえばオオカミって水中潜れたっけ?
なんか想像がつかない。
いや、ブルール先生ならきっとできる!
できるに決まっている!
うん、頑張って!
『俺は泳げないからな。もしそうするつもりならブルールだけで確かめてくれ』
『……そうか、分かった。だがそれはまだ先の話だ。それより先に探すべき場所がある』
『というと?』
『ホラ、あの辺りに空洞が見えるだろ?あの先にもしかしたら空間があるんじゃないかと思ってな。水中探索はそれからでもいいだろう』
ブルールが示したのは、広い湖を挟んだはるか先にある陸地。
その陸地のさらに奥に見える空洞みたいな所だ。
空洞の先は暗くなっていてよく見えないが、確かになんとなく空間はありそうな感じだ。
俺、湖のはるか先なんて全く見ていなかったぞ。
よく気づいたな、ブルール。
だが、そこに行くにも問題がある。
その遠くにある陸地は湖で分断されているので、陸路がない。
つまり湖を渡らなければならない。
俺は前も言った通り、全く泳げないので、このままだとそこにたどり着くこともできないのだ。
俺には湖を渡るという発想がなかったから、湖の先を見ることもしなかった。
だから気づけなかったんだろうな。
『あそこなら陸地だからカンガでも行けるだろ?』
『うーん、でも湖を通らないと行けないしな……』
『情けないな。なら、俺に乗って湖を渡るか? 水には濡れるだろうが、それでなんとか連れて行くことはできるぞ』
ブルールの背中に乗るだって?
そんなことしたら沈みそうで怖くね?
湖のど真ん中で沈んだら、間違いなく俺、死ぬぞ?
そんな危険な真似する訳ないだろ。
だとしたらどうすればいいんだろうか?
他にもっと良い手があればいいが……
別に潜らなくてもいい。
ただ湖を渡る事さえできれば……
あっ、そうか!
ひらめいた俺は、壁から多量の鉄鉱石を掘り出す。
そして湖の近くの陸地で【加工】を始めた。
ガキンッガキンッ
{ 鉄の船を入手しました。 }
そう。
潜らなくてもいいならばいくらでも手段はある。
その例がこの船だ。
船を使えば一切水に触れることなく湖を渡ることができる。
もちろん船のオールも鉄鉱石で作っておいたから、ちゃんと進むこともできるぞ。
鉄製だから水を吸収して水没する危険もないしな。
泥舟を作って湖のど真ん中で水没するなんてマヌケな事にはならないはずだ。
ん?
水を吸収しない?
それってさ……俺の水筒にも使えるんじゃね?
別にステンレスとかそんな贅沢なこと言わなくてもいいじゃん。
落とすと割れるし、中の液体は吸収する土瓶よりも全然いいじゃないか。
なんでもっと早く気付かなかったんだろう、俺。
本当、バカだよな。
まあ、今からでも遅くないし、早速作っちまうか。
俺はすぐさま鉄の水筒を作り、液体の回復薬系統の物を移し替えた。
これで定期的に回復薬を作り直す手間もなくて楽になったな。
ステンレスの魔法瓶とまではいかないけれど、これで十分だ。
『おお、船か。人間が使っている所を遠目で見たことがあるぞ。でもどうやって使うんだ、これ?』
『大丈夫だ。俺に任せておけ』
{ 【念話 lv4】を獲得しました。 }
うん、結構念話したもんな。
レベルアップで何が変わるか分からないが、良い事には変わりないし、いいだろう。
俺とブルールは船に乗った。
そして俺はオールを漕ぎ、湖の先にある陸地を目指す。
特に何事もなく俺達は湖の先の陸地に到着することができた。
船から降り、俺達は例の空洞の所まで移動する。
空洞の先にはまた大きな空間が広がっていた。
そこには水はないが、代わりに大きな穴が空いていた。
まるで俺が武器や防具を埋めるときに作ったクレーターのような穴に似ている。
どうしてこんな穴がこんな所にあるんだろうか?
なんか嫌な予感がする。
気のせいだといいが。
不安を覚えた俺は周囲を【観察】にかけてみる。
だが反応はない。
とりあえずは安心といったところか。
安全を確認した俺達はクレーターの底へと降りた。
そしてその底のさらに中央部分に小さな穴が空いていることに気が付く。
気になった俺はその中を覗いてみた。
すると、中には銀色に輝く鉱石がビッチリと壁に張り付いていた!
これ、ミスリルじゃね?
そう思った俺は早速【観察】をかけてみた。
ミスリル
鉱山の深層に存在する金属。
とても丈夫で軽い為、武器や防具に重宝される。
だがとれる場所は非常に限られているため、これを使った物は例外なく高価になる。
きたぞ!
まさかの一カ所目でミスリル発見か。
これはついてるな。
それにこのミスリルの場所へ通じる穴は確かにとても小さい。
だが俺の体のサイズならギリギリ入れそうな大きさだ。
だから俺には入口の狭さも問題にならない。
こればかりは赤ん坊の体に感謝だな。
大人の体だったらまずこの中に入れなかっただろうしな。
『ブルール、中にあるのはミスリルで間違いなさそうだ』
『そうなのか! それは良かったな! 取りに行くのか?』
『もちろんだ。ここまで来て取らない奴がどこにいるんだよ? でもブルールは中に入れそうにないよな』
『ああ……協力できそうになくてすまない』
ブルールは申し訳なさそうな表情をする。
こればかりは体の大きさの問題だからブルールは悪くないんだけどな。
一応穴を広げればブルールも入れるとは思う。
だが穴を広げるまでに時間がかかりすぎるのがネックなんだよな。
この場所は不自然でなんか不気味だ。
だからさっさと用事をすませてここから退散したい。
それを考えるとミスリル採掘は俺一人でやった方が良さそうなのだ。
俺一人だったらこのサイズの穴でも十分入れるからな。
『ブルールは悪くないだろ。気にすんなって』
『でもここまで来て手伝えないのは……』
『大丈夫だ。それにブルールに任せたい仕事があるんだが、いいか?』
『なんだ? 任せたい仕事って?』
ブルールに任せたい仕事、それは見張り。
今の所、【観察】で探しても周囲から魔物の反応はない。
だが、それでも急に魔物が襲ってくる可能性は十分にある。
そして魔物の襲撃で一番怖いのは、俺がこのミスリルの穴の中に閉じ込められてしまうことだ。
このミスリルに通じる穴は俺一人がギリギリ入れるほど狭い。
つまり、地上から魔物が現れ、その穴を塞がれてしまえば、俺は脱出不可能になる。
そうならない為にも地上で敵がいないか監視をし、現れたら撃退する見張りは必要不可欠なのだ。
俺は見張りの役割について簡単にブルールに説明した。
『だからとても重要な役割になるんだが、任せてもいいか?』
『ああ、任せとけ。この穴に敵を寄せ付けなければいいんだよな?』
『そうだ。頼んだぞ』
『おう、了解だ。安心して行ってこい』
ブルールから快い返事が聞けた俺は、ミスリルの穴に入る準備を始めた。
まずフワンジョウ草を【調合】し、フワンジョウロープを作成する。
そして作成したロープをその辺にある丈夫そうな岩に輪をかけてひっかける。
その後、ロープを穴の下へと垂らす。
こうすることで、ロープを使えば穴を登り下りができるなるので便利なのだ。
一応ロープがなくても登れなくはないとは思う。
だが、壁に張り付いているミスリルは所々突起状になっていて、とても危ない。
正直命の危険もあるから、そんなことはしないに越したことはないよな。
という訳で、俺はそのフワンジョウロープをつたって、ゆっくりとミスリルの穴を降りていった。




