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ゴブリン、頑張って生きる。  作者: はちみやなつき
Ⅰ この世界で生き残るために
20/222

20.料理担当になりました。

 俺はマッチを使って火をつける。

 そして集めた木の破片にその火を移した。


 熱い。

 火の近くにいると、とても熱く感じる。

 こんなに火って熱いものなんだな。


 あまりに久しぶりに見たものでついついそんな感想を抱いてしまった。

 火が熱いなんて当たり前のことなのにな。



 さて、早速料理を始めて見るか。

 といっても、実は俺、前世では料理全くできなかったんだよな。

 できないというよりかは面倒でやってなかったというか。

 一人暮らしし始めてからもコンビニ弁当とか買って済ましてたからな。

 果たしてそんな俺が料理を成功させることができるのか?



 ジュウジュウ……



{ 焦げ肉を入手しました。 }



 ですよねー。

 現実は厳しい。

 前世でもできなかったことがいきなりできる訳ないよな。


 はあ。

 鹿肉無駄にしちまったな。

 ゴメンよ、鹿さん。


 ただ、鹿肉はまだ半分しか使ってない。

 まだもう一回チャンスがある。

 そしてそのチャンスを活かすには例の声が必要だ。

 こい!



{ 【料理 lv1】を獲得しました。 }



 きた!

 これで俺でもまともな料理を作ることができる。

 やったぜ。



 それから俺は残り半分の鹿肉を使い、こんがりと焼き上げた。

 ちなみに【料理】のスキルが手に入ったことで【考察】さんが覆いに仕事してくれた。

 ここでフライパンを3センチ火から離すとか、2秒後に肉をひっくり返すとか。

 指示されないと俺にはサッパリだからな。


 そして【考察】さんの指示に従った結果……



{ 高級鹿肉盛り合わせを入手しました。 }

{ 【料理 lv2】を獲得しました。 }



 うわ、美味そう。

 漂う香りだけでもご飯数杯はいけそうだわ。

 ハンパねえな。


 そういえばこういう良い香りがするとご飯が欲しくなるよな。

 なんとかして手に入らないかな?

 後で試してみるか。


 というか、いつものことだが、なんで肉を焼いただけなのに味付けされているんだ?

 香料もいくつか使ってありそうだし。

 まあ、ツッコんだらキリがないか。

 この世界に来てから、ないものが現れるなんて日常茶飯事だしな。

 【加工】にしろ【料理】にしろ、そのおかげで助かっているんだし、別にいいか。



『ん? なんだ、このにおいは?』



 おっと。

 ブルールが起きてしまったようだ。

 早く食べきらないと。

 この料理は俺のだからな。


 俺は急いで鹿肉料理は平らげようとする。

 だが半分ほど食べ終わった辺りでブルールが俺に【バインド】を使ってきやがった。

 そして残った半分をブルールが食べてしまった。


 クソ。

 魔法を使うなんて卑怯だぞ。

 それに俺が作った物なんだから、俺が全部食ってもいいよね、普通?



『なんだその目は? 何か不満でもあるのか?』

『不満あるに決まってるだろ! なんで俺の料理を奪うんだよ!?』

『美味そうなものがあったら食いたくなるのは当然だろ。それより、この料理、カンガが作ったのか?』



 俺は不満そうな顔をしながらも肯定する。

 別に隠す必要もないからな。


 今の段階なら、かかる時間も前世で行う料理とそれほど変わらない。

 つまり、見られてもそれほどおかしくは思われないのだ。

 まあ、できあがった料理の質が良すぎるけどさ。

 味も何故か付いてるけどさ。

 比較的おかしくはないはずだ。

 多分。



『そうか。それはいいことを聞いた。それならカンガ、お前は今日から料理担当な』



 料理担当だと!?

 つーか、それ、毎回ブルールの飯も作れってことだよな!?

 なんでそんな面倒なことをしないといけないんだよ。


 まあ、作る量が2倍になるだけかもしれないけどさ。

 せめてなんか見返りが欲しいよな。

 ちょっとふっかけて言ってみるか。



『俺の料理は高いぞ?』

『そんなのは分かってる。だが、こうやってお前を目的地まで連れて行ってやってるだろ。だから勘弁してくれ』

『そうか。じゃあお前分の料理はそれなりの物を作ればいいよな? 別に俺一人でも移動や戦いもできるしな?』



 俺の言葉を受けて、ブルールは煮え切らない表情をしている。


 あれ?

 ブルールならてっきり「だったら連れて行ってやらねえ」とか言うと思ったんだけどな。

 今、何を考えてんだ?

 表情がよく読めない。




 しばらく沈黙が続く。

 そしてブルールは決意したような様子で俺の方に振り向いた。



『お願いだ、カンガ。さっきの味が忘れられねえんだ。何でもする。だからさっきみたいな最高の料理を食わせてくれ。あんなに美味い食べ物、生まれて初めて食ったんだ』



 あれ?

 もしかしてブルールが懇願してる?

 何かの間違いだよな?

 だってあのブルールだぞ?


 それに言うのもなんだが、俺の料理そんなに美味いか?

 確かにだいぶ美味かったけど、前世にはこれと同じ位美味いものがたくさんあったしな。



 あ、そうか。

 ブルールは魔物だ。

 だから食べ物は基本的にそのまま。

 味の付いていないものを食べている。

 食べ物の基準が違うのか。

 俺とブルールとでは。


 俺は日本で数々の美味い物を食べてきた。

 まあ、そんなに裕福ではなかったから超高級な物はあまり食べていないけどさ。

 でもだいぶ舌は肥えているんだろうな、きっと。


 そんな俺が美味いと思うものだ。

 ブルールにとってはとびきりのご馳走と思っても不思議じゃないだろう。

 だからこんなにブルールは必死なのか。


 何だかここで断るのも可哀想だな。

 分かった。

 ブルール用の料理も作ろう。

 作る量が多少増えるだけだし、俺の負担もそう変わらないだろう。


 

 俺はブルールの分の料理も作ることを伝えた。

 するとブルールは子供のようにはしゃいで喜んでいた。

 コイツ、どんだけ俺の料理が食いたいんだよ。

 なんかイメージ崩れるわー。


 こうして俺は、この旅パーティーの料理担当になったのであった。




 ブルールはまだ食い足りなさそうだった。

 なのでまた高級鹿肉の盛り合わせを作ることにした。

 鹿肉は使い切ってしまったが、新しい鹿肉はブルールが持ってきた。


 鹿肉がないことをブルールに伝えたら「オレが取ってくる」と言って速攻で取ってきたからな。

 どんだけ食いたいんだよって感じだ。

 本当に。



 じゃあ早速【料理】といきますか。

 でも今回はブルールが見ているんだよな。

 早く作り過ぎないように、できるだけ自然に調理しないとな。



 ジュウジュウ……ジュ……



{ 高級鹿肉の盛り合わせを入手しました。 }



 危ねえ。

 なんとかなったか。

 焦げないか、かなりヒヤヒヤしたぞ。


 最速で作るのは簡単だ。

 だって【考察】さんが頭に指示する通りに作れば出来上がるんだからな。

 だが、それでは料理があまりに早くにできすぎて、不自然になってしまう。

 故にあえて自分で無駄な行動を挟んで、時間を稼ぐ必要があったのだ。


 【考察】さんは優秀で、どれ位までだったら時間に猶予があるかを教えてくれた。

 だからその間、無意味に放置したり、無駄にひっくり返したりして、それらしく振舞った。

 その度に「おおっ!」と言うブルールが面白い。

 全く意味ない行動なんだけどな。

 うん。



 そんなこんなで焼く時間を引き延ばしていたから、一歩間違えば黒焦げになるかもと心配していたのだ。


 だが結果は成功。

 うまくいって本当に良かった。

 これならブルールに見られながら料理しても大丈夫だな。



 【加工】で作っておいた普通の鉄の皿に料理を盛り付ける。

 うん、いい感じだ。


 料理の配分は若干ブルールの分を多めにしておいた。

 ブルールがよだれを撒き散らしながら料理を見ていたからな。

 さすがにそんな様子を見ておいて意地悪をする気にはなれなかった。

 例えばブルールの分は一口だけにするとかな。


 そんなことをしたときにブルールからどんな目でみられるか想像もしたくない。

 というか、殺されてもおかしくない。

 食の恨みって本当に怖いからな……


 ちなみにブルールの近くにはあまりにあふれでるよだれによって水溜りができていた。

 正直汚い。

 そのよだれ、俺の料理にくれぐれもかけるなよ?

 せっかくの料理が台無しになるからな。

 フリじゃないぞ?



 料理が出来上がったので、俺とブルールは鹿肉を食べ始めようとする。

 しかし、次の瞬間にはブルールの分の料理が皿の上から消えていた。


 は?

 何が起こったの?

 もしかしてブルールがもう食い終わったのか?

 コイツの胃袋どうなってんの?


 一瞬で食べ終わってしまったブルールは、ゆっくりと食べる俺をじっと見つめてくる。



 やめろ。

 そんな目で見るな。

 お前の分はしっかりと用意しただろ?

 しかも俺の分より多めに。


 ああ、分かった!

 分かったよ!

 俺の分もあげればいいんだろ。

 あげればさ!



 俺はもうヤケクソになって自分の分の料理をブルールに差し出した。

 するとブルールは目を輝かせて料理を見据える。

 そして次の瞬間には、俺の料理は皿の上から消え去っていた……


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