17.自分の名前を決めてみました。
あれ?
俺の名前なんだっけ?
思い出せない。
そういえば前世の記憶って覚えていることって結構限定的なんだよな。
生活習慣とか、食べ物とかについては覚えてる。
だがどういう名前の人と関わっていたのかとかは覚えていない。
友達いなかったし、思い入れのある人がほとんどいないというのもあるだろうが。
でも自分の名前すら忘れちまうというのはどうだかな。
まあ、俺は既に生まれ変わった訳だし、前世の名前に固執する必要もないか。
だが、新しく名前を決めるとしてもどうする?
自分の名前だぞ?
これからこの世界でずっと使っていくものだぞ?
慎重に考えなくては。
だけどブルールは早くしてほしいみたいな顔でこちらを見てきているんだよな。
実際、結構時間使っちまってるし、このままだと野宿する回数が増えかねないんだよな。
それは俺も嫌だ。
だからといって安易な名前にするのもなぁ。
いや、待てよ?
意外とその安易な名前の方が良かったりするんじゃないか?
ブルールと同じ要領でさ。
俺は全体が白いゴブリンだからホワイトゴブリン。
ホワイトゴブリン、ホワイトゴブリン……
ホワゴン。
いや、ダメだろ。
なんか竜の一種みたいな名前になっちまうだろ。
それはおかしい。
ちょっと発想を変えてみるか。
例えば俺の特徴からとるとかな。
俺って結構考えるだろ?
だから考える、かんがえる、カンガえる……
よし、決めた。
この世界での俺の名は”カンガ”だ。
何か終わりに”ガ”が付く名前ってカッコいいだろ?
何となく。
あ、そこ、ダサいって言わない。
俺だって安直な名前だと思ってるよ。
でも語源さえ気にしなければ意外と良い名前だと思うんだ。
『俺の名前は”カンガ”だ。よろしくな』
『カンガか、分かった。分かったから早く背中に乗れ。とばすぞ』
『とばしてもいいが、少しは俺のことも考えてくれよ?』
『分かってる。だから早くしろ』
ブルールは若干イライラしているようだ。
理由は分かる。
ブルールにとっては名前はどうでもいいもので、それに俺が時間をかけているんだもんな。
どうでもいいものに時間をかけないといけない状況に嫌気がさしていたんだろう。
ごめんな、ブルール。
でもこれは俺にとって大事なことなんだよ。
これからずっと使うものなんだからさ。
{ 特殊スキル【名付ける者】を獲得しました。 }
名付ける者か。
どんな効果があるのかよく分からないが、あって困りはしないだろう。
名を付けることの意味があることがこれで証明された訳だ。
あれからブルールは速度を上げて大地を駆け抜ける。
俺は何とかブルールにしがみついて、振り落とされないよう耐える。
その結果、だいぶ進むことができた。
長かった荒野地帯を抜け、もう少しで森林地帯に入ろうとしている所だった。
だが、その時には夜明けになっていて、ブルールの寝る時間になっていた。
なのでその場で野宿をすることにした。
俺はブルールが寝ている間、周囲を監視することになった。
ちなみに俺は夜の間に寝ていたので、今寝なくても平気だ。
車の中で寝ると心地よいとはよく言うが、ブルールの背中も同じだった。
程よい揺れが眠気を促し、ぐっすりと眠ることができた。
その恩返しではないが、ブルールが寝ている間は俺が守ってやろう。
持ちつ持たれつの関係ってやつだ。
現在いる森林地帯と荒野地帯の境目にはあまり魔物がいなさそうだった。
どうしてかと疑問に思っていたが、その疑問はすぐに解けた。
しばらくその場にいると、突然周辺一帯が暗くなった。
そして少しするとまた明るくなった。
何かが光を遮ったのだろう。
でも一体何が?
そう疑問に思った俺は空を見上げた。
すると、空にはこの場を離れていく巨大な飛龍の後ろ姿が見えたのだ!
なるほど。
ここは飛龍の通り道になっているから他の魔物がすみつかないのか。
って、それってヤバくね?
俺達、飛龍の通り道にいるってことじゃねーかよ!?
つまり飛龍に襲われる危険あり。
飛龍の攻撃を受けるかもしれない。
流石に装備で強化した俺でもあの飛龍には勝てる気がしないぞ。
種族差がありすぎる。
それは【観察】を使わなくても何となく理解できる。
離れよう。
なあ、ここから離れようぜ、ブルール?
俺はブルールの体を揺すって起こそうとする。
しかし、全く起きる気配がない。
コイツ、どんだけ深く寝ているんだよ。
いや、だからこそ短時間の睡眠で十分なのかもしれないけどさ。
仕方ない。
ここは諦めてこの場でブルールが起きるのを待つしかないか。
もしそれまでに飛龍が襲ってきたらそれまでだ。
幸い、辺りを見回しても飛龍の姿は見当たらない。
もしかしたら飛龍がここを通る頻度は意外と少ないのかもしれない。
それなら何とかなるか?
それに俺には【隠密】というスキルがある。
だから俺は飛龍から発見されにくいはずだ。
あれっ?
でもブルールが【隠密】を持ってなかったら意味なくね?
ブルールが見つかったら多分俺も一緒に襲われることになるぞ。
そういえばブルールってどんなスキルを持ってんだ?
俺が【観察】を使っても、自分以外の魔物のデータってほとんど見れないんだよな。
唯一の例外はベビーウルフのステータスを見たときだけか。
もしかすると、自分と同格もしくは格下であるほど精密なデータが出るのか?
だとしたらブルールのデータは見れる訳ないよな。
どう考えても俺の素の能力はブルールより弱いしさ。
まあ一応ブルールに【観察】を使ってみるか。
ブルール【グレーウルフ特異種】lv21
HP 191/191
MP 57/ 57
攻撃力 321
防御力 289
魔法攻撃力 212
魔法防御力 202
素早さ 505
スキル
俊敏、観察、隠密、束縛耐性、暗視、束縛魔法、念話
特殊スキル
魔法の心得、暗殺者
お!?
詳細データ見れたぞ!
というか、コイツ、ステータス高えな。
素早さなんて装備強化した俺とほとんど変わりねえぞ。
こいつ何の装備もしてねえのに。
何か泣けてくるわ、この能力差。
というかブルールも【隠密】のスキル持ってんのな。
どれ位のレベルか分からないけど。
なら飛龍に襲われる危険性は低くなるか。
それは良かった。
さて、それなりに俺達が安全であることも確認できた。
後はこの暇な時間をどう使うかだな。
多分、後三時間位は起きないだろ、コイツ。
その間何もしないで待っているだけなんて退屈すぎて死んじゃうよ、俺。
俺、面倒なことは嫌いだけど、何もしないのはもっと嫌いだ。
何かしていないと気が済まない。
だらだら過ごすときも何か暇つぶしをしたり、何かはしているからな。
という訳で、俺が何もしないというのはあり得ないことなんだ。
でもだからといって下手に【加工】とか使っちゃうと変な武器や防具ができちゃうし。
自ら危険を作ってどうするって話だよな。
それはかつて嫌と言うほど痛感した。
【調合】も正直やらない方が良さそうだ。
例えば黄金の葉とかを作り過ぎるとまずい。
持ちきれなくなった黄金の葉をその場に置いてきてしまったら、後々大騒ぎになりそうだ。
なんでこんな貴重なものがこんなたくさんあるんだってな。
故に【調合】もやめておいた方がいい。
【細工】も同じだな。
下手に持ちきれないほど物を作って、この場に残すと大変なことになる。
じゃあどうすればいいのか?
その答えは意外と簡単だ。
やったことのないことに挑めばいい。
俺はスキルレベルが上がった技術を使うものに関しては良いものをどんどん生み出せる。
一方で、スキルもなく初めて行うことは大抵失敗する。
ならば、その失敗をこの場でやっておけばいいんじゃないか?
失敗したものをこの場に残しても大したことにならないだろう。
性能も大したことないしな。
一方で俺が得るものは大きい。
どういうスキルがあるのか、どんな物が作れるのか試せる訳だからな。
それに一度スキルを覚えてさえしまえば、極めるのはそんなに難しくない。
【考察】様のおかげでな。
その極める作業は住処でやればいい。
それでその後始末は前やったように一気に埋め立てをすればいいんじゃないかな?
我ながら良い考えだと思う。
よし。
そうと決まったら早速色々と試してみるか。
ゴブリン生活五日目終了時のステータス
カンガ【ベビーゴブリン】 LVMAX
HP 50/50
MP 15/15
攻撃力 10(+530)
防御力 10(+720)
魔法攻撃力 10
魔法防御力 10(+720)
素早さ 10(+530)
スキル
観察lv4、考察lv?、隠密lv6、猛毒耐性lv1、暗視lv8、耐震lv1、恐怖耐性lv1、採掘lv20、器用lvMAX、根性lv5、調合lv26、加工lv20、細工lv10、束縛耐性lv1、念話lv2
特殊スキル
採掘の極意、採掘の極意Ⅱ、調合の極意、調合の極意Ⅱ、加工の極意、加工の極意Ⅱ、細工の極意、職人の神、名付ける者
四日目(十四話)からの変更点
主人公の名前。
名付ける者の獲得。




