13.事情を話してみました。
『元人間か。それは面白い。だが、白き者が起こした数々の奇跡を見れば納得もいくな』
『数々の奇跡って?』
『とぼけるのか? まず、ゴブリンの赤ん坊一匹が三十ものウルフの集団に勝つなんて話、聞いたことあるか?』
うん。
確かに聞いたことないよな。
冷静に考えれば異常だわ。
『それにオレの村の子供が死にそうになっていたのを簡単に完治させてみせた』
ウルフの赤ん坊を助けたときのことか。
遠くから視線を感じた気がしたが、この青いウルフが見ていたのな。
『そして何より、上質な防具に全身が覆われている。そんなゴブリンいるか?』
ああ、確かに。
そんなゴブリン聞いたことねーわ。
ゲームではゴブリンって大体雑魚キャラだし、正直強いイメージないよな。
この世界でもゴブリンって弱い存在みたいだしな。
俺の素のステータス見れば嫌でも分かる。
『白き者。お前は異質だ。俺自身が村で異質と思われる以上に異質だ。多分お前はゴブリンの村で暮らしていくことはできないだろう』
そんな異質異質言うなよ。
俺、前世でも変わり者だってよく言われて、友達いなかったんだぞ?
傷つくわー。
それに何?
ゴブリンの村で暮らしていけないって?
それを知っててわざと連れて行こうとしたのか、このクソウルフめ。
本当に親切心で俺をゴブリンの村へ連れて行こうとしたのだとちょっとは思ってたのに。
見事に裏切られた気分。
どんだけえげつない性格しているんだよ。
『白き者。オレがお前を助けた理由は何だと思う?』
『え? なんとなく、じゃないのか?』
『確かになんとなく助けた。だが、そう思ったのは、無意識にお前のその異質さに惹かれたからかもしれないな』
異質さに惹かれる?
どこがいいんだか。
俺が言うのもなんだけど。
異質じゃなくても生きられるなら、その方が楽に生きられていいだろ。
少なくとも俺にとっては異質であることなんてただ辛いだけだったな。
『まあ、一番の理由はお前が一匹で行動していることだな。同じ一匹狼同士仲良くなろうやってことさ』
いや、お前は狼だけど、俺は狼じゃないし。
一緒にするんじゃない。
それに仲良くなったら一匹狼じゃなくなるだろ。
矛盾している。
まあ屁理屈はいいか。
コイツ、俺と仲直りする的なこと言っているし。
悪くない。
それに何故か俺自身もこのウルフに対して親近感を抱き始めている。
自分でも理由は分からないが。
先程えげつない事をされたばかりだから一層不思議だ。
多分話せる相手に初めて出会えたから嬉しいとかそんな感じだとは思うけどな。
さて、ようやく青いウルフに事情を理解してもらった。
そのためゴブリンの村に連れて行かれる危険性もなくなった。
ウルフも俺にはゴブリンの村は合わないと思っていたらしいから尚更な。
後は自分の住処に戻るだけなんだが……
俺は辺りを見渡す。
すると周囲は今までいた森林地帯ではなく、荒野地帯になっている。
だいぶ遠くまで連れてこられてしまったみたいだ。
これじゃどうやって帰ればいいのか分からない。
『何か困ったのか?』
俺の様子を見たウルフはそう聞いてくる。
いやお前、それわざと聞いているだろ?
事情全部話したんだし。
ああ、言えばいいんだろ?
分かったよ。
言ってやるよ。
『俺の住処に帰る方法が分からない』
『ほう、そうかそうか、それは困ったな?』
うざい。
なんかウルフのやつ、困った俺を見てニヤニヤしてくるんだけど。
本当嫌な性格しているよな。
だから一匹狼なんだよ。
人の事言えないけどさ。
仕方ない。
ここは素直に言うか。
こんな奴に言うのは気に食わないけど。
『俺を元の住処まで戻してほしい』
『そんなに戻りたいのか? 別に一人なんだから他に住処を作ってもいいんじゃないか?』
『いや、お前、話聞いただろ? 俺は作った武器や防具が誰かに盗まれるのが嫌なの。怖いの』
『ほうほう、なるほどな』
絶対分かって聞いてるよな、コイツ。
というか、そもそもここまで連れ去ったのはコイツだろ?
なら責任持って元の世界まで送り届けろよ。
なんで俺が頼まないといけなくなっているんだ?
おかしいだろ。
『引き受けても構わないが条件がある』
しかも条件まで付け始めてきやがった。
本当、悪質だな。
『なんだ、条件って?』
『オレ用の道具を作ってくれ』
はあ?
なんで俺がコイツなんかのために道具を作らないといけないんだよ?
納得がいかない。
『お前なあ、道具一個作るのにどんだけ苦労すると思ってんだよ?』
本当に苦労するんだぞ。
その辺にある鉄鉱石やフワンタクサ草を使わないといけないから取りに行くの大変だし。
作るのに一分もかかるし―――
はい、嘘です。
簡単に作れます。
でもこの嫌らしいウルフにはこれ位言ってやらないとな。
『そんなのは分かってる。だが自分で言うのもなんだが、オレはお前の命の恩人だ。それ位のことはやってると思うが?』
はあ。
そこでそれを言うか。
本当に恩着せがましい奴だな。
だが一つ朗報がある。
コイツ、俺が思っている以上に道具を作ることを重くみてくれていそうだ。
普通武器や防具を作るのに一日はかかるもんな。
いや、普通も何も分からないけどさ。
何となくそういうイメージだよな。
それに物によっては一ヶ月、一年かかるものもあるだろう。
すごく良いものって何もしないで置いておく期間とかあるもんな。
なら俺が道具作りに苦労していると考えるのはおかしなことではないよな。
これはチャンスか?
『分かった。お前の為に道具を作ろう。これで貸し借りなしってことでいいな?』
『ああ、それで構わない。その代わり、特上の物を頼むぞ?』
特上ねぇ。
まあ、いいか。
コイツの要望はコイツ向けの道具を作るということ。
つまり、それは武器でなくとも構わないということだ。
なので約束の道具を武器じゃなくて防具にすれば問題ないのだ。
例え一つ位良い防具があっても、俺に命の危険はないだろう。
せいぜい俺がウルフに攻撃をしにくくなるというだけだ。
そんなに悪影響はないように思える。
そして何より大きいのは、嫌らしいコイツに対する貸し借りをなしにできたことだ。
これでコイツから恩着せがましい態度をされなくなるだろう。
されないよな?
『もちろんだ。命を助けてくれた礼だ。手を抜くつもりはない』
『決まりだな。じゃあしっかりと掴まれよ。とばすぞ』
そう言ったウルフは来た道を全速力で引き返す。
俺はウルフにしがみついて振り落とされないようにするのがやっとだった。
コイツ、本当、人の事考えてないよな。
もっとゆっくり走れっての。




