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40階層攻略

「じゃあ、宴もたけなわではございますが、これで宵の明星と御剣一家の交流会を終わりたいと思います」


 田中さんが代表で挨拶する。

少し出来上がっているようで顔が赤い。


「剣也君、レイナ君、そしてメンバーの二人。いつか君達が宵の明星に追いついて、追い越さんばかりの活躍を、そしてあの塔の頂へ足を踏み入れることを願っているよ」


「はい!」

「頑張ります!」


 剣也とレイナが大きな声で挨拶をする。

その返事に田中さんは笑顔で微笑み、飲み会は一本締めを経て終了した。


 その帰り道。


「すごい人達でしたね」


「うん、でも治癒の腕輪か……」


(いつかAランクが錬金できるようになったら……)


「追いつかないといけませんね」


「頑張ろうね、先輩」


「変な人もいたけど、いい人ばっかりだったね。お兄ちゃん」


「そうだね、僕らもダンジョン攻略を頑張らないと。今週には40階層へいこうな」



「というわけで、今日40階層へと向かいます!」


「おー!」


 その週の週末。

平日は文化祭の練習が忙しくなりつつあり、土日の攻略しかできなくなっていた。

なので平日は31階層のみ攻略し、装備品を集める毎日。


 そのおかげでBランク装備をいくつか得た剣也達。

すべて剣也が管理しており、錬金の種にして能力の上昇を図る予定だ。


「じゃあ、みんなサオさんからもらったアクセサリーはつけた?」


 サオさんからもらったアクセサリーは海竜のしずくというイヤリング。

能力の上昇はないが、水中での呼吸を可能とするすごい装備、実はそれだけではなく水の中を自由に泳げるようにもなる。

つまり沈んだり浮いたりが意思の通りに動くので海の底を歩くこともできる。


 しかしゴブリンキングの首飾りを外すこととなったため、ステータス錬金ができなくなったが素のステータスだけでもこの階層なら何とかなる相手なので問題ない。

それより問題なのは。


「じゃあ、美鈴。いいですか?」

「うん、どうぞ」


 30階層の南国ビーチへと転移した剣也達。

そして美鈴がアイテムボックスを開く。

美鈴のアイテムボックスはレベルの上昇によって5畳ぐらいはあるため中に入ることもできる。


 その空間の入り口へ入ったレイナ。

しばらくしてそのレイナが空間から出てくるのだが……。


(相変わらず目のやり場に困る…)


 そこには水着姿のレイナ。

出るところは出ているレイナに花柄のビキニ。


 大きな胸が剣也の目を釘付けにするが見てはいけないと視線を逸らす。

それに引き締まったお腹と、くびれた腰。

そして大きな胸、大事なので二回いった。


 髪には剣也が挙げた髪飾り。

そして耳にはレイナの瞳と同じ色の耳飾りがゆらゆら揺れている。


 一説によると揺れる髪飾りが気になるのは獲物を狙うオスだかららしい。

猫が猫じゃらしにやられるのと同じ理由なのだろう、レイナの場合はシンプルに可愛いのだが。


 美鈴、そして剣也と異空間で着替えを済ませて準備を整える。

装備品は非具現化設定なので水中では水着が一番動きやすい。

装備してさえいれば、別に本来の防具としての効果がなくてもステータスとして十分の防御力は確保している。

美鈴だけは危険なためすべて帝装備に切り替えて攻略に挑んでいる。


「じゃ、じゃあ行こうか」


「はーい!」


 黒の水着の美鈴と、花柄の水着のレイナ。

そして半ズボンのような僕。

美鈴は、最初こそ誘惑してきたが宵の明星の話を聞いてからかダンジョンの中ではそういったことはしなくなった。

油断が死を招くことを本人も自覚しているのだろう。


 そして31階層へのゲートが沈んている海へと潜っていく。

この階層は魔物は出ないため問題なく進む。

水の中で呼吸できるというのが違和感でしかなかったが、今では慣れたもので快適に過ごせている。


 31階層へのゲートへ。

転移した先は、30階層と同じような砂浜だった。


 実はこの階層30~39階層まですべて同じ形をしているそうだ。

もちろん出てくる魔物が階層によって異なるのだが、砂浜と海という構図は変わらない。


 そしてゲートは全て海の中に沈んでいるという。

この階層に到達した当時は海竜のしずくという装備が発見されていなかったため酸素ボンベをもって攻略したというのだから結構な鬼畜仕様である。


「じゃあ、気を引き締めていこう。この階層からはBランク、美鈴は特に装備のアドバンテージもないから気を付けて、僕の後ろ、レイナの前にいること」


「了解です!」


 水中では声が聞こえないため助けも呼べない。

だから剣也を先頭、後ろを美鈴、その後ろはレイナとしている。

基本的には剣也が戦闘を行って、レイナが背後の敵を倒す。


 水中に潜る剣也達。

まってましたと、海竜と呼ばれる魔物が目の間に現れる。

巨大な竜のような魔物だが、実はそれほど強くない。


 大きさは、大きめのホオジロザメぐらいだろうか。

まるでネッシーのような見た目をしている。

ネッシー伝説はもしかしたらこいつだったのかもしれない。


「もごもごもご!」


 剣也が口から泡を吹きながらつい、いつもの感覚でしゃべりだす。

ハンドサインは簡単にだが練習した。


 美鈴とレイナがOKのサインを指で表し、剣也が頷く。

直後剣を抜いて、水の中で跳躍する。


 衝撃が水を伝わりレイナと美鈴を襲うが、流れるプールほどの威力なので装備を付けた二人には問題はない。


 その威力のまま剣也の剣が海竜の首を貫いた。

泡になって消える海竜、この階層の魔物は灰ではなく泡になって消えるようだ。


 そこから小さく煌めく水色のしずくは落ちていく。

海竜のしずくがドロップしたようだ、頻度は高くないがこの魔物を倒した時にたまに落ちてくる。

目を凝らさなければ見逃してしまいそうなほど小さいが、剣也はそれを拾って美鈴に預ける。


 次々と現れる魔物を倒しながら進む剣也達。

基本的には海竜しか現れないようなので、特に苦戦することもなく進む。


 そしていよいよ35階層中ボスの部屋。

他の階層と構図は一緒だが明らかに狭くなっている。

そして現れるのは、蟹の化物。


 扉を開いて現れた剣也達を威嚇するようにハサミをカチカチと鳴らして威嚇する。

大きさは先ほどの海竜とそれほど変わらないのだがとても硬そうで、そして。


「なんかあれ見てると蟹食べたくなってくるな」

「先輩今日蟹食べましょ! 私も食べに行きたい!」

「蟹ですか、私も好きです。最近お肉が多かったので今日は魚介にしましょう」


 とても美味しそうだ。


 涎を垂らす三人。

それを見て赤い身体が青くなる蟹の化物。

残念ながら捕食者がどちらか理解してしまったようだ、泡を吹いて今にも倒れてしまいそう。


……


「泡になって消えなければ食べれるのにな…」


「そうですね、まぁもう口が蟹になってしまったので今日攻略すんだら蟹を食べにいきましょう」


 残念ながらダンジョンの魔物は灰になるか泡になるので食べることは叶わない。

拾ったアイテムのよくわからない大蟹のハサミとかいう武器だったので錬金の種にした。


 だって、蟹のハサミを持った剣士なんてかっこ悪いしね。

結構ステータスは優秀だったけど僕とレイナの剣にはかなわなかったので仕方ない。


 36階層へと転移する剣也。

サオさんからもらった地図のおかげでゲートの場所がわかるため一直線で攻略できる。

この階層から海竜のほかにも、巨大な海蛇も現れた。

まるでアナコンダだが、水の中をスイスイ泳ぐ姿は結構な迫力がある。


 顔が気持ち悪くなかったら、神々しさすら感じていただろう。

まるで巨大な竜が空を泳いでいるようにすら見える。


「もごもご!」


「もご!」


 伝わらない言葉を発して、再度剣也が一刀両断。

噛まれたら毒があると聞いているので、素早く倒す。

この階層で毒なんかもらったら、帰るのがとても大変だ。

深淵龍の防具をあの蛇が超えられるとは思えないけど。



「それにしても不思議だ」


「なにがですか?」


 今剣也達は38階層。

砂浜で少し休憩をとっている。

美鈴が出したおやつやお茶を飲みながら休憩している最中だった。


「だってこの階層には龍はでないだろ、レイナの装備も僕の装備も元はBランクなのにそれに該当する魔物がいないじゃないか」


「そうですね、剣也君のは黒龍でしたか、そんな敵が現れるようには見えませんね」


「そうなんだよね、統一的というか、人工的というか」


 剣也が感じるのは、装備品の不思議さ。

装備品はさまざまなものが存在する。

しかしそれに該当する魔物が存在しない場合も多い。

佐々木さんがあのとき言っていた通り、黒龍なんて見たことがない、そもそも存在しないのかもしれない。

ならばこの装備はどこから来たんだろう。


「不思議ですね」


「考えたって仕方ないけどね、じゃあ行こうか」


 そして剣也達は38階層を攻略する。

次はボスの部屋。

39階層のボスは知っている。

そしてボス部屋の扉を開く、荘厳な扉の先には…。


「なんかイカも食べたくなってきたな」


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― 新着の感想 ―
[一言] なるほど、反転世界物か。 地上からしか視えないもう一つの星とは塔で繋がっていて、出現魔物と対応してない装備はあちら側の30階層の物と。 71階層から先はあちら側の69階層
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