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学校で友達ができました

 宝の山。

高ぶる気持ちと荒ぶる息子。

僕の呪われた右手がうずく。


「くっ! 静まれ右手」


 剣也の右手が理性とは裏腹にその山を漁ろうとする。

実際は剣也が動かしているのだが、それはそれ。これはこれ。


 操られてることにしてしまおう。

勝手に右手が動くんだから仕方ないよね。


 理性と本能の葛藤が生まれ、天使と悪魔が戦いを始める。

悪魔「バレなきゃいいんだよ」

天使「うまくやりなさいよ」

剣也「了解です!」


 満場一致で宝の山への登頂が決定した。

なぜ、山に登るのかって? そこに山があるからだよ。


 唸れ僕の右手!!


ガチャッ!


「はぁいいーお湯だった」

「お兄ちゃんまだいたの? ってか何してんの?」

「剣也君?」


「やぁ、みんな! いいお湯だったね。急にちょっと腕立て伏せがしたくなってね!」


「いや、意味わかんないし…」

「ふーん♥」


 美鈴だけは何か気づいたようでニヤニヤと笑っている。


「と、とりあえず僕は自分の部屋に戻るよ! じゃあね! みんな!」


「あ、先輩! 私のならいつでもあげますから!」


「な、何のことかわからないなぁ!! ははは!」


 そして剣也は部屋に戻って寝巻に着替える。


(危なかったな、ってか美鈴には気づかれた気がするが…)


 それから剣也達は、段ボールの整理を行った。

奈々は全員分のベッドを買ってくれていたようで今日から布団を卒業する。

冷蔵庫や、洗濯機も次々と設置していく。


「あ、先輩もうちょっと右!」


「こっちか?」


「もうちょいもうちょい…はい! OKです!」


 装備品を付けた剣也にとってこれぐらいの荷物運びはお手の物。

片手ですら巨大冷蔵庫を持ち上げられる。


「よし!これで完成だな!」


 すべての段ボールを開き家具を設置する。

これで我が家が完成した、その日はもう休むことにする剣也達。


 初めてそれぞれの部屋で眠る。

引っ越し、ダンジョン、焼肉、お風呂と今日一日でとても濃い一日を過ごした剣也達は泥のように眠った。



「おはよう!」

「はわわわーねむーあ! 先輩おはよ~」

「おはようございます。剣也君」

「おはよ、お兄ちゃん」


 いつものように挨拶をする4人は、準備をして学校へ向かう。

もう共同生活も慣れたもので、いつものようにそれぞれが身支度を行い準備を済ませる。

それぞれの部屋ができたことでラッキースケベも特になく穏やかな日々を過ごせそうだ。


「あ! レイナさん半袖の制服にしたんだ! 似合う!」


「レイナ先輩もう少しスカートミニにしたほうがいいんじゃないですか? 絶対かわいい」


「どうやるんですか? 暑いので短くしたいんですが…」


「まじか…じゃあ私がやってあげます!」


 美鈴が、レイナのスカートをまくるまくる。

ただ折るだけではあるのだが、レイナはその方法すら知らなかった。


「まじかよ、足なげー…。ぎりぎりまで行っちゃう? ちょっと刺激強すぎるけど」


 そして完成するレイナの制服。

紺のミニスカートは膝上10cm、常人なら見えるレベルだが足の長いレイナなら問題ない。

半袖のカッターシャツから伸びる腕もさすがはモデルといった細さの中にしなやかさを持つ。


 それを見る剣也は、鼻の下を伸ばす。

金髪、蒼瞳、長い手足に大きい胸。

そのレイナにミニスカートの学生服という無敵の装備は、男なら全員が目を奪われる。

後はカーディガンでも巻いて、ギャルっぽくすれば……おっと。個人の趣向が出てしまったようだ。


「どうですか?」


「に、似合うと思うよ」


 それを見た美鈴もうらやましそうにつぶやく。


「あー私も制服きたくなってきたなー。ってか転校したい。転校しよっかなー」


「一応うち進学校だから難しいよ? 美鈴勉強嫌いだし」


「うっ…」


 そんな朝の会話をしながら一同は家を後にする。

剣也とレイナと奈々は同じ学校へ、美鈴は自分の学校へ。



ガラガラガラ


 剣也とレイナが教室へ入る。

全員が二人をみてざわついた。


(なんだ? 今日はやけにざわついているな)


 というか、学校に入ってからずっとだ、誰かしらが僕らを見て指をさす。

そもそもレイナは有名人なので仕方ないが。


「まじかよ…本当に二人で来たぞ」

「やっぱりあの記事は本当だったんだ」


 そのまま剣也が窓際の自分の席に着く。


「おはよう! 御剣氏! 今日もレイナ嬢と同伴とは羨ましい限りですな」

「あぁ、大和田。おはよう。それよりなんかあったの?」


 剣也の席の前の大和田君。

おかっぱ眼鏡のオタク気質の友達だ。

成績がすごくいいことと、アニメが大好きということぐらいしか知らないのだが。


 佐藤がいなくなってから、毎日のように話しかけてくる特異な奴だ。

僕は虐められていたので友達がいない、だから話しかけてくれる唯一の男友達の大和田との会話は楽しいし、嬉しい。


「御剣氏! ニュースは見てないのですか? お二人のことですぞ?」


 少し特徴的な話し方だが、良いやつの大和田君がスマホニュースを見せてくれる。


「見てないな。えーなになに? 勇者レイナと熱愛騒動! 謎の車椅子の男はセレブ探索者…って僕とレイナの写真じゃないか!」


 そこにはレイナと僕が新居に引っ越ししている写真が写っている。


「そうですとも! 全く学生のころから同棲とは。いやはやさすがは主人公…避妊はしないと大変ですぞ?」


「してないよ!」


「な、なんと! すでに種付けプレスを経験済みとは…」


「違う違う! 避妊するようなことはしてないってこと! ってかこれ全国に出回っているよね? うわぁーでも仕方ないか…レイナだし」


「はは! 有名人は辛いですな。活動を休止しているとはいえレイナ嬢は全国区いや、世界中で人気ですからな」


 レイナはモデル活動を休止している。

というか、佐藤の会社との契約が切れて仕事を受けていない状態だ。

本人もモデルの仕事が好きなわけでもないので復帰するつもりもないようだ。

それでも過去のCMや看板は今でもいたるところで目に入る。


「そうかー。まぁ一緒に住んでるのは事実だしなー。といっても僕のギルドに入ってもらったからなんだけど」


「ほう! 御剣氏ギルドをお作りになられたのですか?」


「うん、御剣一家という安直な名前だけどね…」


「それはいい! 私もいつかギルドを作ってみたいものですな!」


 実は大和田は探索者登録をしており、日々ダンジョンに潜っているらしい。

とはいえ、あの密林エリアを抜けることができないので今は低階層を必死に周回し力をつけているとのこと。


ガラガラガラ


「おーい座れー」


 いつものように先生が入ってきていつものように授業が始まる。

違うことといえば。


「あー、山田、山崎、足立、阿部は転校したからよろしくな」


(まじか、佐藤一派全員転校? なにがあった?)


 あの日奈々に全力で土下座していた佐藤の一派全員が転校した。

何があったかわからないが、共通点は佐藤の仲間だったぐらいだろうか。

やっぱり嫌いだったようで、適当に転校のお知らせをする。


「なぁ大和田…佐藤の一派が全員いないんだけど…」


 背中越しに小声で話す剣也。

そして大和田が同じように小声で話す。


「……御剣氏、今日の昼少し良いだろうか。話したいことがある」


「なんだよ、改まって…」


「けじめなのだ。私の正義の、そして謝らなければならない御剣氏には」


「なんだよそれ。なんか怖いなー」


 そして授業はいつものように過ぎていく。

大和田と剣也は少し気まずい雰囲気のまま。



お昼休み


「剣也君、よかったらお昼一緒に…」


「ごめん、レイナ。今日は大和田と約束があるんだ…」


「そ、そうですか…わかりました。(´・ω・`)」


 目に見えてしょぼんとするレイナ。

しかしそれを聞いた他の女の子のグループに誘われていたのでよかった。


「すまない、御剣氏…」

「いや、いいんだ。大事な話だろ?」


 こくりと頷き大和田は剣也を先導する。

そして僕は大和田に連れられて、別の教室へ。


「ここって部室?」


 ドアには、漫画研究会という張り紙。

確か大和田はこの部に入っていたな。

アニメや、漫画が好きだと言っていたし。


「御剣氏…」


 窓の傍に背を向けて大和田が立つ。

日の光をカーテンが遮り、かすかに漏れた光が大和田を照らす。

その雰囲気は、いつものお気楽な感じではなく覚悟を決めた男の目だった。


「大和田…話って」


「今日、佐藤の一派が転校しましたな」


「うん…」


 窓を見ながら剣也に背を向けていた大和田が振り向いた。

直後眼鏡をはずして真剣な目でこちらをまっすぐに見る。


「あれは、私がやった」


夕方にももう一話あげます

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