表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/106

無理無理無理無理!

「で? 何か言い訳は?」


「ごめんなさい先輩、つい…」

「私も以前は平気というか何も感じなかったんですが…」



 ここは10階層。

いつの間にか11階層に取り残された剣也はまさかと思い10階層へのゲートを通って戻る。

すると鳥肌を立たせながら体をこする二人がいた。


「きもいきもいきもい!!」

「不快です。ひたすらに…」


 11階層から広がる密林、ジャングル、まるでアマゾン。

そして現れる魔物達は、すべてが…


 『昆虫』型。


 実際のアマゾンでは、昆虫共が日本の数倍大きいと聞くが、ダンジョン産の昆虫共は一味違う。

一回り大きいというか、なんなら人間よりも大きいし、普通に捕食される。

あの気持ち悪い昆虫共に囲まれてゆっくり捕食されるのは地獄だろう、想像するだけで気持ち悪い。


「お前ら…」


「ちょ、ちょっとキモ過ぎません? あいつら」

「見ているだけでぞわっとしました、見てくださいこの鳥肌」


「シャラップ!」


 僕を置いていったことを正当化する二人の言い訳を黙らせる。

女の子の二人が気持ち悪がるのも無理はない、正直僕も気持ち悪い。


 想像してほしい。

自分の身体と同じ大きさの蜘蛛を、蛾を、黒光りするGを。

でも。


「だからって僕を置いて逃げるなんて…」


 結局あの魔物の群れを一人で討伐することになった剣也。

Aランク装備を付けた剣也の相手にはならなかった、ならなかったがまさか置いて逃げるとは。

切るたびに飛び散る変な汁とよくわからないギギギッツという悲鳴は本当に気持ち悪かった。


「も、もう覚悟はできてます! 次こそは!」

「わ、私も頑張る! 多分…」


「はぁ…信じるよ」


 そして再度3人は、11階層へ。



「いやぁぁぁl!! きもいきもいきもい!!」

「心を殺すのよ、私。あの頃のように…」


 悲鳴を上げながら二人は虫型の魔獣を討伐していった。

この階層のドロップアイテムは騎士シリーズが多い。

とりあえず、嵩張らないように片っ端から錬金の種にして美鈴のアイテムボックスの中に入れる。

たまにドロップする虫型の防具も落ちるが特にレアでもないので錬金の種に変換する。


「まぁ文句言いながらだけど進めているな」

 

 剣也達はサクサクと攻略していく。

この階層も何度も踏破されているので地図は精密だし迷うこともない。

それに中堅探索者達も多く、よく出くわす。


 それに正直この階層の相手ならすべて攻撃を受けても毛ほども効かない。

なんせ剣也の防御力は5000を超えている。


 美鈴も王シリーズだし、レイナに関してはそもそも素で1000を超えている。


「あっという間に中ボスだな、それにしても…大丈夫?」


 剣也も初めての15階層への扉の前に3人は立つ。

ここまでで約2,3時間ほどだ。


 そして二人の顔は真っ青だ。

レイナに関してはあの頃のように感情が死んでいる目をしている。

美鈴に関しては、ひっくひっくと目を腫らして泣いてすらいる。


(またあの頃に戻ったりしないよな…。美鈴に関してはもう泣いてるし)


 二人の疲労から早く20階層をクリアして、21階層からの探索に切り替えたほうがよさそうだ。

なんとしても今日20階層までクリアしたい。


 そして剣也は扉を開けた、

中に待つのは虫型の大きな魔獣。

その名も。


「きもすぎぃぃぃ!!!!!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 『千本ムカデ』


 ちなみにムカデって漢字で書くと百足っていうんだ。

百本も足がありそうだからって意味だろう。

ちなみにこのムカデは、僕よりも大きい。

そして足は千本近くありそうだ、だから千本ムカデ。

キモ過ぎて僕も鳥肌が立ってきた。


「全ステータス素早さ!」


 剣也はムカデの前に一瞬で現れる。


「全ステータス攻撃力!!!」


 あまりのきもさにオーバーキル。

その長い体を一刀両断。

6000越えの攻撃力は、遥か上の階層ですら致命傷。

この階層のムカデごときが耐えること叶わず。


 そして両断。

そして二つに別れる。


「ギギギギギッ」


 別れてなお、くねくねと動き回るその昆虫の生命力には脱帽する。きもっ!

美鈴とレイナは、キモイキモイをずっと連呼している。

しばらくすると灰になってくねくねが消え宝箱が現れる。


 銅の宝箱から現れたのは、ムカデの鎧。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

装備説明 

・千本ムカデの鎧Lv1(Lvによる上昇なし)

 Dランク

能力

・防御力+20

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


(うん、しょぼいな)


 20階層から出土する装備品は基本的にDランクオンリーなので正直全部いらない。

錬金の種にして、他の装備の錬金元にするぐらいしかない。


「レイナの今の装備よりは一応強いけどつける?」


 レイナはまだ騎士シリーズ。

そういえば、あの古びた剣とかはどうなったんだろう。

レイナから話さないから忘れていた。

帰ったらレイナの装備も整えてあげないと。


「近づけないでください、気持ち悪い」


 氷のような目で、罵倒された。

まるで靴をなめろ、豚とでも言いだしそうなほどに冷たい目だ。

ゾクゾクする、レイナには女王様の素質がありそうだな。


(まぁいらないよね、じゃあ錬金の種にしちゃおう)


 そして美鈴に預けて格納してもらう。

錬金の種すら触りたくないという顔だったがそんなに嫌なのか。女心はよくわからん


 中ボスを倒して16階層へと向かう3人。

相変わらず密林エリア。

前半と比べると、魔物も強くなっている気がする。


「そういえばレイナ、あの古びた剣はどうしたの?」


「ほとんど使えない装備でしたので置いてきています。鋼の剣のほうがまだましでした」


 鋼の剣で、無の心で虫を切るレイナが答える。

目が死んでるけど、さすがは勇者。何て勇敢なんだ。


(ほとんど使えないのか…、帰ったら見せてもらおう)


「美鈴歩きにくいんだけど」

「先輩、早くこの階層クリアして帰りましょう。あの綺麗な家に」


 美鈴はあのムカデからずっと僕の後ろで服を掴んで震えたままだ。

相当に気持ち悪かったらしい。


(僕も早くお風呂に入りたい、変な汁ついてるし)


 敵は強くないのに、これほど辛い階層もないだろう。

多くの探索者が20階層に到達できないのも頷ける。

僕達は余裕だが、ギリギリの戦いをあの虫達とするなんて想像するだけで鳥肌が立ちそうだ。


「あぁ!!」


 すると剣也が何かを見つけて走り出した。

剣也の目は光り輝いており少年のような目をしていた。

直後その黒光りする虫型の魔物をもってレイナ達のもとへ帰ってくる。


「ほら! レイナ! みてみて! おっきなクワガ」

「フン!」

「…タ…。クワガタぁぁ!!!」


 大きなクワガタを見つけてステータスの暴力で捕獲したのだが、レイナに嬉しそうに見せたら一瞬で両断された。


 瞳からは輝きが失われる。


「ゴキブリと何が違うんですか、気持ち悪い。ふざけないでください」


「す、すみません…」


 地面に真っ二つに切られてぴくぴくしているクワガタを見る剣也。

そんなに怒らなくてもいいのに…。


 たまに剣也だけはかっこいい虫にテンションを上げながら、二人はずっと嫌悪しながら。

16,17,18階層と同じような虫達を倒しながら剣也達は進む。


「やっとか…」


 そしてここは、19階層ボスの部屋。

目の前には、巨大な木が生えている。

その大きさは、見上げるほどの大樹で横幅は200mはあるだろう。


 剣也達が転移した目の前に生えたその大樹には、階層と同じような扉ついている。

きっとこの扉を開いたら大樹の中で戦うことになるんだろう。


「ついに来たね、ボス部屋…」

「早く、早く殺しましょう。絶滅させてください。先輩」

「剣也君、相手の造形によっては私は戦力外になります」


 美鈴が憎悪を、募らせる。

レイナに関してはすでに戦意を喪失しかけている。


「はぁ、まぁ僕一人で倒せると思うから後ろで見とくだけでもいいよ」


 時刻はすでに18時。

そろそろお腹もすいてきた。

速く討伐して帰ろう、奈々が何か買ってくるといっていたし。


 そして扉を開く剣也達。


 そして鳴り響く二人の悲鳴。

その悲鳴は大樹の中を響き渡り、上から見下ろすその魔物が気付いたのか僕らを見る。


 多分見ているはずだが、気のせいかもしれないが。

なぜなら目が合わないから、だってそいつの目は…。


 8個もあるんだもん。


「いやぁぁ!!! 無理無理無理無理むりぃぃぃぃ!!!!!」 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ