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舞踏会のはじまりに

お待たせいたしました。

 王家主催の舞踏会。


 この日は社交界にデビューすることとなった令嬢の他、多くの王侯貴族が出席する。


 さすが、参加人数も規模もケタが違う。


 会場の大きさも華やかさも他ではなかなか拝めない規模であろう。


 会場に入り、身支度を整えた後最初にすることは決まっている。


 まずは主催者である王様と王妃様へご挨拶。


 ここは伯爵である父に任せ、私と姉のエヴァンジェリンは頭を下げるだけである。


 そしてその後は大公三家の当主へ挨拶をし、各関係者と社交を交わす。


 デビューを迎えた令嬢は、まずはパートナーと一曲踊り、後はダンスに誘ってきた相手と会話を交わし、意に沿えばその手をとる。


 この匙加減が意外と難しい。


 誘ってきた相手すべてと踊ったり同じ相手と三度以上続けて踊るのも、それが結婚相手や婚約者でなければ、はしたないと目を顰められる。


 親族でもない限り、既婚者相手とのダンスも憚れる。


 …………貴族って、本当に面倒臭いものね。


 今回の舞踏会で注目している婚約者候補の目星はいくつかつけてある。


 いたとしても候補に数えることすら恐れ多いが、今王家には結婚適齢期に王子様はいない。


 他国からの王族はいるが、これもスワロー伯爵家の家格から言えば対象外。


 貴族の世界はこの家格が何より重んじられる……、通常は。


 対象外と言えば、三大公爵家。


 クウェイル家は今回二人の令息が参加しているらしいが、関係ないとしていいだろう。一人はクウェイル公爵家の跡取りとみられていて、格下にも過ぎるスワロー伯爵家などはなもひっかけられないに違いない。同じ理由で、その弟も我が家の婿に迎えるには荷が勝ちすぎる。


 オーストリッチ家は先日後継が婚約報告をしたばかり。後はまだ社交界には参加できない年齢の令息しかいないと聞いている。


 キングフィッシャー家は少し変わっていて、通常の社交界ではなくどこからかお相手を見つけてくるという話だ。現在の当主は外国へ貿易に出た際、森の中で迷っていた少女を助けたことが縁でその少女を妻に迎えたという話。しかもその少女は庶民ではなく、その国の侯爵家の令嬢であったというから驚きだ。


 どんな理由があれば、侯爵家の令嬢が一人森で迷子になるのだろう……。




 まあ、それはそれとして、本日の所は事前に選別したお相手の候補の伯・子・男爵令息の見極めに、せいぜい励むとしよう。 

次回はお相手候補登場、の予定。

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