理想的な婚姻は
お待たせ致しました。
さて、問題は国のありようではなく、今後の私と姉のありようである。
爵位持ちの令嬢として生を受けたからには結婚はほぼ義務である。
よほどの事情がない限り免れ得ない。
アルバトロス国の貴族階級にあって、我スワロー家は伯爵階級のど真ん中。理想的な婚姻相手の家としては同格の伯爵家か一つ上の侯爵家。財政が豊かであれば子爵家でも良い。
後は、爵位を後継する嫡子か跡を継ぐ可能性のない非嫡子か。
一般的には長兄相続が基本だが、弟が飛びぬけて優秀であったり、健康上の問題で不安があったり、愛妾の息子の方が上であったりする場合はまた事情が異なる。
スワロー家は、父が後妻を娶らず愛妾も持たなかった為、私か姉エヴァンジェリンが跡を引き継ぐことになる。
父は私に絞って後継教育を施してきたようだが、婚姻相手によってはまだまだ姉の相手に引き継ぐことも可能。
それをふまえたパターンは全部で三つ。
一つ目は、姉が後継にふさわしい相手を選び、私が他家へ嫁ぐもの。
通常はこれが一般的なのであろうが、私及び父の希望としては下策になる。
もしも婿を迎え入れることになる場合は、貴族の階級は問わないが、生家の後継の可能性がない優秀な人材に限る。
この場合私は生家であるスワロー家の益に繋がる家へと嫁ぐのがベストであろう。我ままを言うつもりはないが、多少の行動の自由を認めてくれる相手であればなおいい。
次点は姉が後継に少々難がある相手を選び、私が自領に残りその補佐をする。
この難とは領地経営などの才のことであって、性格に難があったらそもそもその婚姻を認めることはしないけれど。
この場合私は、領地の領民の中で相手を選ぶことになるだろう。爵位持ちの他領の息子を婿に入れたら後年の跡継ぎ争いの火種にもなりかねない。自領の領民の中から夫を選び嫁ぐとなれば、私自身は貴族の籍から抜けることになるが、前世の私も庶民であることだし、略に気楽でいい。何気に私の第一希望はこれである。
最後は私が後継となる為スワロー伯爵家に残り、姉は他家へと嫁ぐもの。
おそらく父の考えはこれでないかと思う。
別に姉を邪魔に思っているというわけではなく、姉であれば高位爵位の家へ嫁ぐことも可能であろうという意図と、自領の領地経営を教育を施した私に任せたいという思いからであるだろうが。
もちろん、父も初めからその考えだったわけではなく、後継教育を姉にもと試みたことはあった。
が、人間向き不向きはあるものだと早々に諦めた。
姉の希望は…………、ほわほわとして何も考えてないようなので、後は状況次第であろう。
まずは目の前に迫ったデビューの日。
この国の貴族達がかなりの数集まるまたとない機会。
実はもうそれぞれのパターンにごとにベストの相手は絞り込んである。
当日はぴったり姉にくっついて、それぞれの相手へと顔合わせをさせ、その反応で決めていこうと思う。
万が一のことがないように、変な相手には姉を近づけさせないようしっかりガードしなくては。
姉の希望が、私の進むべき道。
さあ、万全の態勢を持ってその日に臨むとしましょうか。
次回もお願い致します。




