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リワールド・フロンティア-最弱にして最強の支援術式使い〈エンハンサー〉-  作者: 国広 仙戯
第一章 支援術式が得意なんですけど、やっぱりパーティーには入れてもらえないでしょうか

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●6 ゲートキーパーへの挑戦と僕の秘密


〝SEAL〟。


 古来から伝わる正式名称は『Skin(スキン) Electronic(エレクトロニック) Augment(オーグメント) Living(リビング) Integrated(インテクレテッド) Circuit(サーキット)』という。


 非常に長ったらしい名前である。


 それは、遺跡が遺跡になる前の時代、遠いご先祖様が開発した、人類進化システムの総称だ。


 元々は人体に埋め込んで、身体の一部を生体コンピューター化する道具だったらしい。けど、さらに研究を重ねて機能を拡大、進化させていった結果――〝SEAL〟は人類の遺伝子にまで根を下ろしてしまった。


 その結果、ある時期より人類は生まれながらにして〝SEAL〟を体内に持つようになり、以降はそれが優性遺伝子となってしまった。


 新人類の始まりである。ある意味、僕達現人類にとっては、その人達こそが原初のご先祖様と呼べるのかもしれない。


 そこからも紆余曲折を経て、人類と同一化した〝SEAL〟は生物の一部としてさらなる進化を遂げた。そして、今日のような形となったという。


 その身体に流れる血はフォトン・ブラッドとなり、世界の現実を改竄する力の源となり、人類は多種多様な術式を開発した。


 だけど時が進む内、新たな力が原因で大きな戦争が起こってしまった。


 これが俗に言う『終末戦争』である。


 この人類史上最悪の戦争により、その頃にはもう建設、もしくは発見されていた世界中の遺跡と、ほんのわずかな情報だけを残して、人類文明は一度崩壊してしまった。


 それから約六百年。


 僕達人類は今も、この惑星で生きている。


 自分達で作った謎を、自分達で解き明かしながら。


 ……なんちゃって。




 ちょっと時間が飛んで、僕とハヌが出会った翌日である。


 僕達は、【一九七階層】のセキュリティルーム前で、ゲートキーパーに挑戦するための行列に並んでいた。


「……ねぇ、ハヌ」


「くどいぞ、ラト」


「で、でもさ」


「しつこいのう。もう何度目じゃ?」


「だ、だって! やっぱり無茶だよ! 【僕達二人だけでゲートキーパーを倒す】なんて……!」


 そうなのだ。


 前代未聞、未曾有の危機なのだ。


 この現人神の女の子はこともあろうに、僕と二人でゲートキーパーに戦いを挑むなどという、無茶も大概なことを言い出したのである。


「だ、だからね? 普通、ゲートキーパー級のSBにはクラスタ単位で臨むのがエクスプローラーの常識でね、あの聞いてる? ハヌ? 聞いてるかな? ハヌ?」


「ええい、しつこいと言っておろう。ここまで来て、いまさら何を言っておるのじゃ。それ、もうすぐじゃぞ?」


 外套を被ったままのハヌが、くい、と顎で前方を示す。


 セキュリティルームの出入り口付近の空中に、物理ICで設置されたARボードが、何枚も浮かび上がっている。


 ほとんどがセキュリティルーム内部のライブ映像で、その両端に並んでいるのが、ゲートキーパーへ挑戦する順番待ちのリストだ。


 あと二組だった。


 今、ゲートキーパーと戦っているクラスタの人達を除き、二組が挑戦し終わると、とうとう僕達にまで順番が回ってくる。


 勿論、お鉢が回ってくる前にゲートキーパーが倒されてしまえば、その機会は永久に失われるのだけど――残念ながら、それは望み薄だった。


 今日のこれは、いわば突発イベント。エクスプローラーの恒例で、新しい階層が解放された時、とりあえずお祭り感覚で新層のゲートキーパーに挑戦してみようというイベントなのだ。


 誰もがおもしろ半分、腕試しや情報収集が残り半分でこれに臨んでいる。今日いきなりゲートキーパーを倒してしまおうなんていう気概を持っている人なんて、普通はいないし、いるわけがない。


 否、一人だけ、ここにいるけど――


「妾とて何度も言うぞ、ラト。大丈夫じゃ、問題ない。妾とおぬしの二人ならば、必ず出来る。これは絶対じゃ」


 聞く耳を持たない、とはまさに今のハヌのことを言うのだろう。


 昨日、ヴィリーさん率いる『蒼き紅炎の騎士団』が、見事【一九六階層】のゲートキーパーを撃破するその一部始終を見て以来、ハヌはずっとこう言って聞かないのだ。


「この階層のゲートキーパーとやらを、妾とラトで倒すのじゃ。そうすれば、これまでおぬしをバカにしてきた連中を見返してやれるではないか。これほど胸がすく話はあるまい?」


 言わんとすることは理解しているし、ありがたくもある。だけど、やっぱり無謀だと言わざるを得ない。


「だ、だからね、ハヌ」


 僕は一生懸命、どれぐらいゲートキーパーが強いのか、具体的に何故クラスタ単位で挑むのが基本になっているのか、失敗した人達の末路がどんなものなのか、他の遺跡――特に僕がしばらくいたキアティック・キャバン――で実際にあった例などを含め、たくさんたくさん説明した。


 けれども。


「妾とラトならば、必ず出来る」


 の一言だけで、彼女は頑として譲らなかった。


 多分、昨日話した僕の【特技】のせいなのだろう、とは思う。ハヌは世間知らずだけど、馬鹿じゃないと思うし、何も考えずに無茶を言っているわけではないはずだ。彼女には彼女なりの勝算が、頭の中にあるのだと思う。


 ただ問題なのは、僕の中に同じ勝算がなく、その答えを共有できていないことなのだ。


 だから、僕は何度もハヌに説明を求めるのだけど、


「その時になればわかる」


 と、これまた一言でバッサリ。


 そうこうしている内に、とうとう僕達の番が回ってきてしまった。


『おーし、次のクラスタ――じゃねぇな、おっ? なんだこりゃ、二人組って……コンビかぁ? おいおい大丈夫かよ、いくら遊び半分のチャレンジつっても、下手すりゃ死ぬぞ?』


 今日の新層ゲートキーパー挑戦大会の司会進行を請け負っている人が、マイクを通して驚きの声を上げる。周囲も僕達に注目し、ざわめき始めた。


 そりゃそうだろう。当の僕だってビックリだ。隣のハヌだけ、外套の下で不敵な笑みを浮かべているのだろうけど。


「ゆくぞ、ラト。妾とおぬし、ここで真の力を見せつけてやるのじゃ」


 好戦的な声でそう言って、ハヌは先にセキュリティルームの扉前まで行ってしまう。


『おーおーやる気満々だねぇ! いいねぇ俺ぁこういう奴ら嫌いじゃないぜ! みんな、勇気あるこの二人組を応援してやってくれ! あぶねーと思ったらすぐにエスケープしろよな!』


『おおおお――!』


 湧き上がる歓声と拍手の嵐。僕も仕方なくハヌの横に立ち、扉が開くのを待つ。溜息を吐きたくなるのを我慢。もう自棄になるしかない。ここまで来たら、あとは野となれ山となれだ。


 司会の人が、僕達のコンビ名を高らかに読み上げる。


『それじゃ頑張ってくれよ! 〝BVJ(ブルリッシュ・ヴァイオレット・ジョーカーズ)〟!』


 ちなみにこのコンビ名は僕が原案、ハヌがアレンジした結果生まれたものである。お互いの〝SEAL〟に流れるフォトン・ブラッドの色を元にしたのだけど……どうしてこうなってしまったのだろう?


 開閉ユニットが動作し、高さ四メルトル、幅八メルトルの扉が左右に分かれ、ゆっくりと開いていく。


 その隙間から、さっきまでゲートキーパーと戦っていたクラスタの人達がぞろぞろと出てくる。皆それなりに傷だらけだけど、表情は明るい。ちょっとした腕試しが楽しかった、という感じだ。


 彼らが出て行った後、歓声に背中を押されるようにして、僕とハヌが入れ替わりでセキュリティルームへと入る。


 敷居を越えるとすぐ、背後で扉が閉まってしまった。


 僕は生唾を嚥下する。


 目の前に広がるのは、ちょっとしたスポーツが出来そうなぐらいの真っ白な空間。その最奥に、通常よりも大きな青白い球体――コンポーネントが浮かんでいる。


 あれが、ゲートキーパーのコンポーネント。ここから一歩でも近付けば、あれがSBの親玉とでもいうべき怪物へと変化するのだ。


 ここが正真正銘、最後の砦だった。今ならばまだ、崖っぷちの淵、ギリギリの際々だけど、引き返すことが出来る。まだ間に合うのだ。


「――ね、ねぇ、ハヌ、やっぱ」


 最後の悪あがきをしようとした僕の耳に、くふ、という笑い声が聞こえ、


「胸が高鳴るのう」


 ころん、とぽっこり下駄が軽やかな音を響かせた。


「あっ――」


 ゲートキーパーが、具現化する。




 時を遡って、昨日のことである。


 ヴィリーさん達『NPK』が立ち去った後。


 支援術式〈カメレオンカモフラージュ〉で光学的な波動を遮断。


 支援術式〈アコースティックキャンセラ〉で音響その他を断絶。


 支援術式〈タイムズフレグランス〉で匂いその他を封印。


 完全に気配を絶ってSBのポップを抑制した状態で、僕とハヌは手を繋いで一九六層の安全地帯へと引き返していた。


 その道すがらである。


「?? 意味がわからぬ。術式を同時に十個使用した、とはどういう意味じゃ?」


 ハヌは歩きながら、きょとん、と僕の顔を見上げた。〈カメレオンカモフラージュ〉を使用していても、コンビやパーティーメンバー同士は互いを認識できる。だから僕は、その無垢な瞳に困ってしまった。


「えと……どういう意味も何も、言ったとおりなんだけど……」


「??? ますますわからぬ。術式は一度に一つしか使えまい。それぐらい、妾とて知っておるぞ?」


「や、それはそうなんだけど……」


 確かに、【普通の人】なら、そうだと思う。


 こほん、と僕は遠慮がちに咳払いを一つ。


「――えっとね……確かにハヌの言うとおり、原則として術式は一度に一回なんだよね。何て言うのかな、例えば、〝SEAL〟の出力スロットに術式を一つ装填して、それを連続で使用する――ってことは出来るよね。うん、それが普通」


 例えば、ルナティック・バベルの三階層に来た時に見た、あの女の子の〈フレイムジャベリン〉とか。


 あの時、彼女は炎の攻撃術式を四回連続で放っていた。ああいうやり方なら、コンマ数セカドの間を挟みつつ術式を連発することが可能だ。


「けど、それを術式を入れ替えながら、となると話は変わってくるよね? 例えば〈フレイムジャベリン〉を撃った後、〈フレイボム〉を使おうと思う。その時、〝SEAL〟の出力スロットは一つしかないから、装填している術式を入れ替えなきゃいけない。その制御には大体、一セカドから遅くて五セカドはかかっちゃうと思う」


 言うなれば、武器を持ち替えるようなものだと考えて欲しい。ナイフから剣へ。あるいは、剣から槍へ。使用する術式の切り替えには、それだけの手間がかかる。


 しかしハヌは、これにも小首を傾げる。


「? そうなのか?」


「あー……そういえば、ハヌは汎用術式を使う感じじゃないよね。さっきのすごい威力のも、オリジナルみたいだったし」


 それも、言霊による詠唱が必要になる、かなり古い形式の術式を。現人神に伝わる由緒正しき術式なのかもしれない。


「うん、まぁ一般論でね。それぐらいの手間がかかるっていう話なんだけど」


 というか、その辺りは話の肝ではないので、適当に流してしまおう。


「……僕ね、師匠――というか、まぁ、僕のお祖父ちゃんなんだけど――その人から、こんな風に言われたことがあるんだ」


 僕は一言一句、憶えているその言葉を暗唱する。


「〝お前の術力の弱さは、十年に一人の酷さだ。目も当てられない〟――」


 そろそろ気配隠蔽の術式が切れそうなので、ハヌと繋いでいるのとは逆の手、その三本の指先にアイコンを浮かび上がらせる。一つ一つが違う術式のアイコンだ。その状態を、ハヌの顔の前に持っていって、よく見えるようにする。


「おおっ……?」


 蒼と金の瞳が驚きに大きく見開かれる。それと同時、術式の効果が切れたので、僕は指先の三つを発動。ディープパープルのアイコン三つが弾け飛び、術式が再びその本領を発揮する。


「――〝だが、術式制御の才能なら、お前は百年に一人の逸材だ〟……ってね」


 つまり、複雑な説明を省いて、わかりやすく大雑把に言うならば、


「要するに――普通の人には一つしかない術式の出力スロットが、僕には十個あるんだ……っていえば、わかってもらえる?」


「……おおっ!?」


 こっちが吃驚するぐらいの大きさで、ハヌが感嘆の声を上げた。〈アコースティックキャンセラ〉が無かったらそれだけでSBを呼び寄せていたかもしれない。


 ハヌの驚愕はそれだけで収まらなかったらしい。彼女は足を止め、僕を指差し、


「お、おお、おおっ? つ、つまり、つまりじゃぞ? おぬしは、まるで種類の違う術式を、十個全て【同時に】使えると申すのか!?」


「う、うん……だから、さっきからそう言っているつもりなんだけど……」


 さらに言えば、


「あ、こんなことも出来るよ」


 僕は片手の五指に、五つのアイコンを灯す。これだけならフォトン・ブラッドは消費しないから大丈夫。


 続いて、親指から小指までずらりと並んだアイコンを、一つずつ別のアイコンへと差し替えて行く。寄せてくる波のように。


「おおおっ!?」


 ハヌが目を剥いて驚くので、ちょっと調子に乗ってもう一回やってみる。今度は返す波のように。


「おおおおーっ!?」


 ちなみに、こういう芸当が出来るのは攻撃術式以外になる。攻撃術式はセキュリティ上、音声起動が必須なように作られているのだ。逆に言えば、それ以外は無音声で起動が可能だ。ちょっと練習と言うか、コツが要るけど。


「し、信じられん……おぬしは一体どんな頭をしているのじゃ……!? まるで想像がつかぬ……十個同時に術式の制御を行うなど……!」


 ハヌがまるで宇宙人でも見るような目で僕を見つめる。


「そんなこと言われても……僕にとってはこれが普通だったし……」


 実際、エクスプローラーの大先輩であるお祖父ちゃんこと『師匠』から教えてもらうまで、幼い僕はこれを皆が出来て当たり前の事だと思っていた。


「まぁ、二つ同時に使えるって人は、たまに見かけたりするよ?」


 右手と左手を使って術式の同時発動する人なら、僕も見たことがある。でも、その人ですら周囲から『レアスキル』だなんて持ち上げられていたので、僕の【コレ】は、もはや規格外の特異体質と言ってもいいかもしれない。


 事実、師匠からはこの【特技】については絶対に口外するな、と何度も何度も釘を刺されていた。絶対にお前のためにならない、話すなら信頼できる人間だけにしろ、と。


 流石に今では、僕も自分の特異さには気付いているから、これまで誰にも話したことはなかったけれど。


 ハヌになら話してもいい。そう思えたのだ。


「……でね? さっきの新入りさんも言っていた通り、支援術式は普通の人には微妙に使いにくいものなんだ。まず、制御がちょっと難しい……というか面倒くさいかな。でもこれは中級以上の術式なら全部そうだから、まぁ理由としては小さいかも。リソースもそうかな。術式のランクが上がれば上がるほど、割かないといけない領域は多くなるものだし。他にも色々あるけど、多分、一番の理由は……」


 ここで僕は一拍を置く。その理由とは、僕の短所が長所となるものであり、誰が使用しても効果は一律という、ある意味ものすごいクオリティの反動であるところだ。


「その理由とは? 何じゃ?」


 待ちきれなくなったのか、続きを催促してきたハヌに僕は言う。


「発動の際、その人の最大術力を要求するんだ」


 それはつまり、


「術式に込める術力が強ければ強いほど、フォトン・ブラッドの消費も多くなるよね。でも支援術式は、誰がどれだけの術力で使っても、効果は一律なんだ。だから――」


「だから?」


「――【術力が強ければ強い人ほど、損をする術式】なんだよ」


 おそらくこれこそが、支援術式が忌避される最大の理由だと、僕は考えている。常に術者の全力を求めるこの仕様は、燃費の面で言えば『最悪』の一言に尽きるだろう。


 だけど逆に言えば、僕のように先天的に術力の弱い人間でも、他の人と同じ成果が出せる素晴らしい術式でもあるのだ。


「特にハヌみたいな術力の強い人が使うと、ものすごくもったいないことになるんじゃないかな。フォトン・ブラッドの質にもよると思うけど、とにかく支援術式を使うってことは、全力全開の攻撃術式を撃つのと同じことだから」


「なるほどのぉ……」


 たった三ミニトしかない効果時間、重ねがけしても時間延長できない仕様、場合によっては体感覚を狂わせ、連発は出来ても複数の効果を得ようと思ったら手間がかかる面倒臭さ。


 身体強化系で感覚が変化することは、特に武器を用いて戦う人からは『勘が狂う』という理由で忌避されたりもする。事実、加減が出来なくなって自爆してしまった例も少なくない。


 難しそうな顔で唸ったハヌの手を引き、歩みを再開する。


「でもね、僕は運がよかったんだと思う。術力の才能がなくても、術式制御には天賦があったから。だから、支援術式をたくさん覚えようと思ったし、今でもその選択は間違ってなかったと思う。誰にも理解されないかもしれないけど……だって術力が弱いだけだったら、きっとエクスプローラーにはなれていなかっただろうから……」


 体格に恵まれている方ではないし、剣の才能もある方ではない。生粋の戦士にすらなれない僕には、今の形でしか遺跡で戦っていく術は見出せなかった。


 ここで少し沈黙。ハヌも言うべき言葉が見つからないみたいに、口を閉ざしたまま前を向いて歩いている。


 だから僕は、少し大げさに肩を竦めて見せた。


「――というわけで、これが僕の秘密、ってことかな? あはは……えっと、僕とハヌ、これでお互い様ってことでいい、かな……? ほら、お互いに事情があったってことで。あ、でも僕の名前は嘘じゃないよ。覚えにくくてごめんね」


 おどけて見たけど、ハヌは振り向かないし、くすりともしない。何やら考え込んでいる風に見える。


 しばらく無言の時が流れ、不意に、


「……なるほど、のぅ……」


 ぼそり、と先程と同じ言葉を繰り返した。


 それからもハヌは、僕が何度話しかけても胡乱な返答しかしてくれなかった。


 後になって思えば、この時点で、彼女の中に『あの思惑』が生まれていたのかもしれない。


 けれどこの時の僕は、ハヌの態度を『やはり黙っていたことを怒っているのかもしれない』と勘違いして、非常に焦っていた。


 それで、思わず誘ってしまったのだ。


「――そ、そうだ! ヴィリーさんも言ってくれてたし、良かったら『NPK』のゲートキーパー戦を見に行かない!?」


 きっとこれが、最大の間違いだったのだ。




 そんなわけで、応援というか見学に来たゲートキーパー戦。


 ルナティック・バベルに限らず、またゲートキーパーに限らず、遺跡には必ずと言っていいほど『放送局』の人達がいる。


 彼らは遺跡における節目のイベント――今回で言うならゲートキーパー戦――の時に現れ、数々の機材と術式を用いてその一部始終を撮影し、世界中へと放映する。


 今回の『NPK』がそうしたかどうかはわからないけれど、事前に申請さえすれば、誰でもゲートキーパー戦の撮影をしてもらえるという。


 今やエクスプロールの大きな節目は、世界中の人々の娯楽として楽しまれているのだ。


 だから『NPK』を始め、エクスプローラーのトップ集団は世界的にも有名で、時には遺跡のある都市から『是非ともうちの遺跡でエクスプロールして欲しい』という依頼まで来るのだとか。


 それが本当かどうかは、残念ながらマイナーソロだった僕にはわからない。一部のトップ集団にスポンサーがついているのは、どうやら本当らしいのだけど。


 ゲートキーパー戦がいつどこで行われるのかは、当然、様々なルートで情報が出回る。とはいえ、現場は常にエクスプロールの最前線だから、一般人が直に観戦することは難しい。


 自然、現場で応援もしくは観戦出来るのは、大体が同業者であるエクスプローラーだけに限られる。


 と言っても、観客が直にセキュリティルームに入るわけにはいかないので、あらかじめ内部に設置したカメラで撮影した映像を、出入り口付近の大画面で見るだけなのだけど。


 僕とハヌが【一九六階層】のセキュリティルーム前に到着した時、流石は『蒼き紅炎の騎士団』というべきか、数百人規模の人が集まっていた。


 と、ここで前言撤回。大型スクリーン前に群がる人混みの中には、どう見てもエクスプローラーに見えない人達が何人か混じっている。もしかすると一般人が、どこかのクラスタかパーティーを護衛にして連れて来てもらっているのかもしれない。


 というか、その内エクスプローラーが一般人を護衛して直に観戦に来るツアーとか組まれそうだなー、などとどうでもいい発想が僕の頭によぎった。


「ほら、ハヌ。あれがゲートキーパーだよ」


「ふむ?」


 ARスクリーンに映る戦いは、ついさっき始まったばかりのようだった。


 巨大なゲートキーパーと、ヴィリーさん率いる『NPK』が苛烈な戦いを繰り広げている。


 実を言うとルナティック・バベルのゲートキーパーをリアルタイムで見るのは、僕も初めてだった。


 もちろん、事前調査である程度のことなら知っている。


 ゲートキーパーが他のSBと異なる点は、素体が生物ではなく機械であるところだ。動物や幻想種を模した形をとることがあっても、それは必ず金属質の素材で形作られているという。


 確かに今、スクリーンに映っているゲートキーパーは、ゴリラ型ロボット、としか言いようの無い外観をしていた。


 全長は四メルトルはある漆黒の巨体。体との比率を考えたら馬鹿馬鹿しくなるほど太い腕、その先にくっついたでかすぎる拳。


 殴り殺す。その言葉を凝縮して怪物にしたらこうなるだろう、という形状だった。


 奴の情報は既にいくらか解析されているようで、ゲートキーパーの近くに浮かぶネームタグには、便宜上付けられた名前が表示されていた。


 ――〝ボックスコング〟と。


『さてさて、始まったばかりの『NPK』のゲートキーパー戦だがぁ? 流石は剣聖ウィルハルトが娘、剣嬢ヴィリー率いる集団! 全くもって順調な立ち上がりだぁ!』


 大型スクリーンの右下あたりに設置された机に座っている男性が、マイクを片手に実況をしている。


 先程、僕達が見た『NPK』の戦いは集団と集団の戦闘だったけど、今回はケートキーパー一体との一対多の戦いだ。


 戦術が洗練されているのは勿論の事だったが、戦闘方針がまるで違う。


『おっとぉ、どうやら『NPK』はクラスタ――じゃなかった、こちとらナイツだったな! そのナイツを三分割しているようだ! 俺が思うに戦闘班、支援班、治療班の三つだな!』


 実況の言うとおり、『NPK』は広いセキュリティルーム内で三つのチームに分散していた。いわゆるクラスタ戦術においては、オーソドックスな手法である。


『NPK』の総数は三〇人程度。それを十人ずつの三つの隊に分け、それぞれに『ゲートキーパーと直接戦う』『戦いを後方から支援する&戦闘班の交代要員』『戦いに加わらず回復に専念する&戦闘班の交代要員』という役割を与えているのだ。


 全体の指揮は、どうやら中央の支援班にいるカレルレンさんが執っているようだった。


 なら、団長のヴィリーさんはどこに? と輝くような金色のポニーテールを求めて画面上を探すと――まぁある意味、当然の場所に彼女はいた。


 ボックスコングの至近である。


 戦術通りに動くメンバーの練度もすごいけど、ヴィリーさんの戦い振りはそれ以上に凄まじかった。


 彼女は一切の交代をしない。戦闘班において一人だけ、ずっと戦い続けているのだ。


 ボックスコングがその名の通りボクシングスタイルで、見た目によらない軽いフットワークで動き、大砲のごときジャブを高速で繰り出す。と言っても身長差があるから、ほとんど打ち下ろしのようになっている。一発で喰らったらその場でぺしゃんこだ。


 ヴィリーさんは頭上から降り注ぐ砲弾のような拳の雨を、時に燕のごとき軽やかな動きで避け、時に独楽のように回転して剣で受け流し、時に竜巻のごとき激しさで弾き返す。


 驚歎するべきはその剣の冴えだった。


 どう見ても剣術式を使っているとしか思えないキレと威力――あの金属の固まりをパリィ(打ち返)しているのだ、相当だろう――だというのに、彼女は必要なはずの起動音声を発していないし、アイコンも表示されていない。


 ということは、術式の補助なしであの巨体と真っ向から打ち合っているのだ。


『流石は『NPK』の団長ヴィリー! 若手エクスプローラー最強の一角、〝剣嬢〟と謳われるだけはあるぜ! ボックスコングの超重量級パンチをものともしねぇ! だがァ! 今のままじゃ決め手に欠けるぜぇ? さあ、そろそろか? そろそろかぁーっ!?』


 実況の人がぎゃあぎゃあ言っているのが、正直ちょっとうるさい。けれど、確かに言うとおりだった。


 現状、ヴィリーさんがボックスコングの攻撃を一手に引き受け、他の戦闘班メンバーの攻撃によって着実にダメージを与えていってはいるけど、見方を変えれば攻めあぐねているとも言える。ボックスコングが熱心にヴィリーさんを追いかけ回しているということは、それ以外のメンバーは【無視できるレベル】ということなのだ。


 故に観客は皆、期待の眼差しで彼女を見る。


 剣嬢ヴィリーは、ハイランクの剣士でありながら、同時に優秀な炎使いでもある。炎使いとは、攻撃術式の中でも火焔系を得意とする人を指す名称だ。


 彼女が率いるのは『蒼き紅炎の騎士団』。そして、剣嬢と並んでヴィクトリア・ファン・フレデリクスを表す異名がもう一つある。それは――




『〈ブレイジングフォース〉』




 初めてヴィリーさんの桜色の唇から、術式の起動音声が飛び出した。


 服と鎧に覆われてない素肌を、アイスブルーの輝きが〝SEAL〟の幾何学模様を描いて駆け巡る。


 ヴィリーさんの背中に一メルトルほどのアイコン――炎で形作られた剣と鎧の意匠が浮かび上がった。それが光の粒子となって弾けて消える。


 次の瞬間、彼女の全身を猛火が覆った。真っ赤な――ではない。


 サファイアのように真っ青に揺らめく、火焔。


 彼女が持つもう一つの通り名――〝燃え誇る青薔薇(ブレイジングローズ)〟、それそのものであるかのごとく。


『き、きたァ――――――――ッッ!!』


 興奮が最高潮に達したような実況の絶叫。


 蒼く輝く炎の花弁を全身に纏ったヴィリーさんの一挙手一投足が、残光を引いて空間に軌跡を刻む。


『はぁああああッ……!』


 あれはおそらく攻防一体の術式だ。手に持った蒼い剣にまで炎は伝播し、その刀身を倍以上に伸長させる。全身を包んでなお余りある烈火は、身を守る鎧でありながら近付くもの全てを焼き尽くす。


 まるで青い太陽。


 そこから放たれる斬撃こそ、まさしく〝蒼き紅炎〟だ。


『はッ!』


 気合一閃。巻き上げるように放たれた逆袈裟の一撃が、眩き三日月形の蒼炎となり、鞭のごとくボックスコングへと襲い掛かった。向かってボックスコングの左脇腹から右肩までを、太い炎が舐め上げていく。


『GGGGGOOOAAAAWWWW――!』


 金属をやすりで削るような凄まじい音が響き渡り、ボックスコングが初めて悲鳴を上げた。


 ヴィリーさんの扱う蒼い火炎は、ただの炎ではないと聞いている。


 言うなれば、【質量を持った炎】というべきか。


 熱だけでなく物理的な力を持ち、対象を殴打し、刺突し、切断するというのだ。


『でたでたでたでたァ――――――――ッ! 剣嬢ヴィリーの十八番〈ブレイジングフォース〉だぁぁぁぁっ! 熱量と質量を併せ持つ唯一無二の炎! 背中から発動する器用さもさることながら、攻撃と防御の両方を強化するチート術式ィ! オリジナルだから誰にも真似できねぇすげえヤツだぁぁぁぁっ!』


 世の中の術式は、汎用術式とオリジナル術式の二種類に分けられる。


 簡単に言えば、前者はお金を出して購入することが出来る術式。後者はそうではない術式だ。オリジナル術式は、個人がコンポーネントを元に製作したワンオフなのだ。


 勿論、その気になれば汎用術式と同じように他人に複製品を譲渡することも、販売することも出来る。元を正せば汎用術式だって、最初はオリジナル術式だったのだから。


 けれど、誰もそうしない。そのほとんどが身内で継承させていく逸品だったり、特定の役割を担う人にしか渡してはいけないような特別製だからだ。


 ちなみに、術式を一から製作するのは非常に高度な技術と大量のコンポーネントが必要なので、素人にはまず不可能である。そのため一般人は購入するしかないのだけど、コピーにも情報資源としてコンポーネントが必要になるため、そのお値段はなかなかのものだったりする。


 さらに余談だけど、支援術式は他と比べて人気が低いため、価格が安かったりする。僕がそれなりの種類の術式を持っているのは、それが理由だ。


『――本領を発揮した剣嬢ヴィリーの連続攻撃ィ! とうとうボックスコングの足が止まったァッ!』


〈ブレイジングフォース〉を発動させたヴィリーさんは、剣士でありながら中距離攻撃すら可能とする。ボックスコングの間合いの外から無数の斬撃波を放ち、その場に釘付けにした。


 が、しかし。ボックスコングもただのSBではない。この階層のセキュリティを守る、最後の守護者――ゲートキーパーなのだ。


『GGGGGRRRRRRAAAAA!』


 ボックスコングが雄叫びを上げ、背を反らして激しくドラミング。超重量の金属がぶつかり合って、大気までもが激しく震動する。


 突然のことに、戦場の皆が一瞬だけ動きを止めた。それが隙となってしまった。


 ボックスコングが突如両腕を真横に真っ直ぐ広げたかと思うと、その腰から上が時計回りに回転し始めた。機械系だからこそ出来る芸当だ。


 あっというまに加速、回転数が上昇してボックスコングの上半身が一個の竜巻と化す。次いで腰の角度が傾き、凄まじい速度で回転する巨大な拳が、床面を削るような勢いで大気を掻き回す。まるで巨大な扇風機のごとく。


『――ッ!? 総員退避ッ!』


 咄嗟の指示がヴィリーさんの口から迸った直後、ボックスコングの下半身が猛然と走り出した。


 暴虐すぎるダブルラリアットが、『NPK』の戦闘班めがけて一直線に突き進む。


 衝突、巻き込み、荒れ狂う。


 色取り取りのフォトン・ブラッドが撒き散らされ、まるで玩具のように次々と人間の身体が吹き飛んでいった。


『うわあああああ!? なんてこったぁあぁぁぁっ! ボックスコングの奥の手だぁ! 『NPK』のメンバーが次々と餌食になっていくぅぅぅぅ!』


 大変なことになった。


 高速回転する巨大な拳に巻き込まれた人は、それだけでもう再起不能な状態だ。


 支援班のカレルレンさんが矢継ぎ早に指示を飛ばし、傷ついたメンバーの救助と回復にかかる。が、そのせいで陣形が崩れかかっている。そこに再びボックスコングが突っ込んできたら完全におしまいだ。


 だからだろう。


 ヴィリーさんがたった一人で、凶悪な形態に移行したボックスコングと対峙しだした。


 上半身を回転させながら走るボックスコングの背後に回り込み、炎の刃で何度も斬りつける。


『こっちを――向きなさいッ!』


 苛立たしげに叫んだ刹那、彼女の身を包む蒼炎がさらに激しく燃え上がった。


『――〈フェニックスレイブ〉ッ!』


 ヴィリーさんの背中に、無数の剣に囲まれた鳥のアイコンが現れた。剣術式だ。


 途端、ヴィリーさんが纏う蒼い火焔が文字通り翼を拡げ、巨大な鳥を形作った。


 アイコンが弾け、蒼い火の鳥と化したヴィリーさんが流星のごとく尾を引き、蹴っ飛ばされたような速度で飛んだ。ボックスコングとの間にあった距離が一瞬でゼロになる。


『はぁあああああッ!』


 剣術式〈フェニックスレイブ〉は〈ブレイジングフォース〉の力を利用した連続剣だと聞いている。けれど、百聞は一見にしかず。初めて直に見るそれは、そんな言葉では説明しきれないほど凄烈なものだった。


 これまでの斬撃が紅炎なら、〈フェニックスレイブ〉は太陽フレアだ。


 巨大な炎の剣が、目にも止まらぬ速度で縦横無尽に奔った。


 太陽面爆発にも似た威力の塊が、回転するボックスコングの中心、腰部に集中して――爆裂する。


 爆発が連続して起こっているような轟音が、割れながらスピーカーから飛び出した。


 わずか三セカドほどの間に放たれた斬撃は一体いくつだっただろうか。数える気にもならないほど速く、そして多かった。


『GGGGGGOOOOOOWWWWW――!?』


 あまりの威力に上半身と下半身の接合部が壊れ、ボックスコングの上半身が油の切れたような怪しい動きをしながら強制的に停止させられた。


 その瞬間だった。


 この時、火の鳥となったヴィリーさんの身は、攻撃の反動で宙に浮かび上がっていた。


 そこに、カレルレンさんの良く透る声が戦場に響き渡った。


『支援班! 総員〈ストレングス〉!』


 その電光石火の指示により、なんと支援班の全員が空中を舞うヴィリーさんに向けて、次々と支援術式〈ストレングス〉を発動させた。色違い総勢十個のアイコンが連続で弾け、攻撃力倍加の術式がヴィリーさんに殺到する。


 これこそ支援術式のあるべき使い方なのだ、と思わされる光景だった。


 そう。支援術式でどれだけ体感覚が狂おうとも、それがとどめの一撃なら関係ない。


 決まった、と頭のどこかで確信した。


 宙空にあるヴィリーさんが蒼い剣を両手で握り、大きく振りかぶった。




『〈ディヴァインエンド〉!』




 一撃必殺と名高い、ヴィリーさんの切り札の剣術式。


 一〇二四倍もの支援強化を受けたその一撃は、もはやゲートキーパーが何体集まろうとも耐えきれるものではなかっただろう。


 彼女を包んでいた全ての炎が剥ぎ取られ、剣の刀身に吸収された。


 ヴィリーさんが握る蒼い剣は、その銘を〝リヴァディーン〟――輝く炎の剣――という。その名の通り、蒼い火焔を貪欲に飲み込んで圧縮したその刃は、いまや彼女の髪よりも眩しい金色の光を放っている。


 光の剣を大上段から振り下ろし、着地する――ただそれだけのシンプルな攻撃。


 だけどその一振りで、灼けたナイフでバターを切るかのごとく、ボックスコングは一刀両断された。


『GOOOOWWW――!?』


 中心線に沿って光の線を刻まれたボックスコングの動きが、時が止まったかのように凍りつき――シャットダウン。


 巨体が青白い粒子にほどけながら、ゆっくりと消失していく。


 後に残るのは、通常のSBとは比べものにならないほど大きなコンポーネント。


 それもヴィリーさんの〝SEAL〟に吸収され――そうして、全てが終わった。


『――う、うおおおおおおおおおッ!! やった! やりやがったァ――――――――ッッ!! 俺達の女神がゲートキーパーのクソ野郎をぶっ殺したぞッラァ――――――ッッ!!』


 さっきから思っていたけど、この実況の人、かなりのヴィリーさんファンなのではなかろうか。今も何気に【俺達の】とか言っているし。


 ともあれ、そんな実況の声を皮切りに周囲の人々が一斉に歓声を上げた。いくつもの拳が宙を突き刺し、飛び上がる人、抱き合う人、手に持ったドリンクをかけ合う人、中には泣き出す人までいる。


 今日この瞬間、人類はまた一歩、過去の叡智へと近付いたのである。世界中がこの感動を共有していることだろう。


 衝動的な狂乱は、やがて勝者に送る拍手喝采へと変わっていく。


 僕もつられて手を叩きながら、隣のハヌに声を掛けた。


「――どうだった、ハヌ? すごかったでしょ?」


 返事はなかった。


 見るとハヌは腕を組んだまま、じっとARスクリーンを睨むように見つめていた。フードに隠されていない口元が、くふ、という形をとって笑っていた。


 よかった、ちょっとは楽しんでもらえたみたいだ。


 などと考えていた僕には、この時、外套の陰にあってなお爛々と輝く蒼と金のオッドアイにどのような企みが宿っていたのか、知る由もなかったのである。



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