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呪われ姫の絶唱  作者: 朝露ココア
第7章 文化祭
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未知なる影

慰霊碑の前で、クラスNの面々は無事に集合していた。

マインラートは憔悴しきった顔で頭を抱える。


「ったく……とんだ悪ふざけだ。いつか仕返ししてやるからな」


恨めし気な視線を受けるも、柳に風。

エルメンヒルデは作戦が成功してご満悦だ。


「け、結局……霊はいないということですね。私の予想通りです」


小刻みに震えながら気丈に振る舞うフリッツ。

二年生へのダメージは甚大だ。

しかしノーラが得た経験も大きい。

自分の魔術について深く知ることができた。


「ところで、ノーラは『どうして人が怖がるのか』を知りたかったんだよね? 答えはわかったかな?」


「ええとですね……たぶん、人は『理解できないもの』を怖がるのだと思います。わたしが初対面の人と接するのが苦手なように。知らないもの、得体の知れないものを怖がるのかと」


「なるほど……僕も勉強になったよ。未知を警戒するのは動物として自然の摂理。当たり前だけど、目から鱗が落ちる思いだ」


「ペー様、怖いものなしだもんな……」


ノーラ的には、幽霊よりも人間の方が怖い。

しかし逆の感性を持つ人もいるということだ。


「……ノーラ。お前が使った魔術、無闇に人には使うな。護身には悪くないだろうがな」


ヴェルナーの忠告にノーラはうなずいた。

今回、ノーラが使ったのは『怖いもの』を見せる魔術。

それではお化けだけではなく、トラウマを見せてしまう可能性がある。

お化け屋敷で使うには適さないだろう。


「俺が一番ビビったのは、火だるまになった人間みたいなのが追いかけてきたときだね。エルメンヒルデやん、割とえげつないことするなぁ……」


「ふふふ……一番情けない思いをしてほしいのはマインラート先輩でした。風景を焼きつける魔道具を持ってくればよかったなぁ……」


「俺に何の恨みがあるんだよ」


「日ごろから受けているセクハラの恨みです」


「お茶に誘ってるだけだろ……?」


マインラート的には、シュログリ教の巫女と良好な関係を築きたいと思っているだけなのだが……エルメンヒルデからすればナンパでしかない。

どちらの境遇も理解できるノーラは黙っているしかなかった。


「え、えっと……みなさん! 夜も遅いですし、そろそろ帰りましょうか。今回は付き合っていただき、ありがとうございました」


一同は森の入り口に戻る。

帰り道は幽霊などに遭遇することもなく。


 ◇◇◇◇


週明け。

ノーラはさっそくバレンシアに報告を行った。


「『未知のお化け屋敷』……?」


提案を受けたバレンシアは首を傾げた。


「そうそう。普通さ、お化け屋敷って定番の怪物が決まってるよね?」


「そうね。うごめく影のシャドウウォーカーズ、鏡から飛び出してくるミラーゴースト……考えただけでも寒気がしてくるわ……」


バレンシアが挙げた霊たちは、いずれもグラン帝国では著名なものだ。

お化け屋敷と言ったらこれを出す……という風習まである。

しかし、伝統的なお化けすぎて新鮮さも、未知ゆえの恐怖も薄れているのではないだろうか。

ノーラはそう考えて『未知のお化け屋敷』を提案したのだ。


「前例のない不気味なお化けや仕掛けを出すの。わたしたちでゼロから最恐のお化けを作るんだ……!」


「な、なるほど……わたくしはお化けが苦手だから、考えられそうもないけれど。どういうお化けを考えるの?」


「それはクラスのみんなで話し合うんだよ。デザインが得意な子も多いし、きっといいアイデアが出ると思う」


「たしかにそうね。ありがとう、ノーラ。これで案を提出してみるわ」


バレンシアは納得して提案を受け入れてくれた。

ノーラの案が通る可能性は低いが、友人に協力できて嬉しく思う。


二人が案を練るため、紙に内容を書き連ねていると……教室の入り口がざわついた。

何事かとノーラは顔を上げるが、人だかりができていて入り口が見えない。


「なんだろう?」


「人だかりができるときは、大抵その中心に有名人がいるものよ。クラスNのお方がノーラに用事があって来たんじゃない?」


「そっか……ちょっと見てくるね」


ペートルスやマインラートなど、彼らの周りにはいつも人がいる。

特に学園の廊下や食堂を歩けば黄色い声がしきりに飛ぶものだ。

人が多い場所では、ノーラも極力彼らと関わらないようにしているのだが……。


人だかりの隙間から中を覗く。

視線の先には……クラスNの生徒ではない者が立っていた。


彼は困ったように右往左往しながら、周囲を見渡している。

そして……覗き込むノーラを見るや否や駆け寄ってきた。


「ノーラ・ピルットさん! お探ししましたよ」


「でんっ……かっ!?」


グラン帝国第二王子デニス。

彼はぎこちない笑みを浮かべた。

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