前編
夜の公園に五人の男女が集まっていた。
カメラを持つリーダーのコウスケが、元気いっぱいに挨拶をする。
「どうも、事故物件探索会でーす! 今回もよろしくお願いしますー!」
それに合わせて他の四人が拍手で盛り上げた。
拍手の後、副リーダーのキョウが残念そうな顔で視聴者に告げる。
「さっそくですけど、メンバーのツヨシとカズオは休止になりました」
「二人とも失踪してましてね。警察にも相談して捜索中です」
「前回の撮影で呪われてたっぽいんで、たぶんその影響ですね!」
「まあ、事故物件の撮影は儲かるんでやめません! その辺りはご安心ください!」
コウスケの発言に、再び四人が拍手をした。
彼はカメラを動かして、端に立つ金髪の女をアップで映す。
「抜けた二人の代わりに、今回は新メンバーに来てもらいました! 自己紹介どうぞ」
「はーい。サオリでーす、よろしくお願いしまーす」
サオリはぺこりと頭を下げる。
挨拶が終わったところで、コウスケが歩き出した。
「じゃあさっそく事故物件に向かいましょう! ケンイチ、説明よろしく」
「今回の物件は呪われた家と呼ばれています。入居者が次々と不審死を遂げることから、現在は貸し出されていません。最後の家賃は一万円だったとか」
ケンイチはスマートフォンで概要を調べながら語る。
彼は画面をスクロールしながら話を続けた。
「家の中には女の霊が出るそうです。名前は……キザキミナコ」
「美人だったら告白しようぜ!」
「はっはっは! いいな、それ! 幽霊の彼女とか最高じゃん!」
コウスケとキョウは冗談を言い合って笑う。
他のメンバーもそれぞれ面白がっており、この状況に怯える者は誰もいなかった。
公園を出た五人は閑静な住宅街を進む。
数分後、とある一軒家の前で足を止めた。
コウスケはやや引きのアングルで外観を撮る。
「うわぁ、なんか不気味ですね。呪われた家って評判も間違ってなさそうです」
「なんか寒気がするかも……」
「いざとなったら俺が守ってやるよ」
「きゃっ、キョウ君かっこいい!」
抱き合うキョウとサオリをよそに、コウスケが玄関前に立つ。
彼はニヤリと笑い、インターホンのボタンに指を当てた。
「とりあえず挨拶してみましょうか」
次の瞬間、コウスケはインターホンを連打し始めた。
さらに深夜にもかかわらず、大声で遠慮なく呼びかける。
「こんにちはー! ごめんくださーい! 事故物件探索会でーす! 誰かいませんかーっ!」
家から反応はない。
それでも彼がめげずにボタンを押していると、ガラスの割れる音が鳴り響いた。
見れば庭に面した窓が砕け散っている。
そこには金属バットを持ったメンバーのユウシが立っていた。
彼は悪びれもせずに言う。
「開いたよ」
「ナイス! では呪われた家にお邪魔しましょう」
五人は土足で家に侵入した。




