第15話
「そこから退いてくれる?」
「はぁ? 何で?」
「貴方みたいな人に触られたくないのよ、私の席を」
水瀬は俺が今座っている席の机を指差す。
コイツってこのクラスだったのか……うん? この席って事はーー
「先輩かよ……」
俺は思わず頭を抱えた。
今居る教室は校舎の3階、つまりは3年生の教室。此処が彼女の席だって言うなら2つも上の先輩だって言う事になる。
「何? 知らなかったの? 私ってこれでも有名な部類だと思ってたんだけど」
水瀬は肩をすくめて両手を上げている……俺は先輩にもそれなりに交流関係がある。だが、だからと言って女子の話はした事がなかった。それが今になってこんな形で出るとは思わなかった。
俺はしょうがなく、隣へと席を移動する。
「……ちょっと、もっと離れなさいよ」
「嫌、此処から離れたら暑いんで」
「そんなの着てるから暑いんでしょ。その脂肪脱ぎなさいよ」
………麻衣みたいな事言うなよ。
「で、アンタは何でこんな所に?」
「答える必要あります?」
「先輩は敬うものでしょ?」
「俺、敬う人はちゃんと選ぶんで」
隣から「ふひゅ〜……」と大きく息を吐く音が聞こえて来るが、俺は気にしないで次のページを捲ろうとして、今何時だったかと黒板横にある時計を見た。
「あ」
「何よ」
「もう時間なんで、これで失礼しますね」
「貴方、お昼ご飯は食べないで良いの?」




