第12話 紹介 8/3 12:30
協力。
翌日俺は約束通り、水瀬に幼馴染の3人を紹介していたのだが……凄い変わり様でビビっていた。
「どうも初めまして〜! 入江君の友人の水瀬 澪って言います! 宜しくお願いします!!」
今まで見たことの無い様な満面の笑み、いつもの様なさっぱりとした花の様な匂いではなく、甘い蜂蜜の様な匂いが漂って来る。
そんな俺の隣に座っている水瀬を見た3人は、三者三様の反応を見せていた。
「俺は灘アレク、宜しくね」
「……斎藤春」
「俺は間宮翔太だよ。よろしく」
アレクはいつも通り猫を被り、春は無愛想に、翔太は少し照れながら答えている。
翔太よ、いつもの反応をしてれば良いんだぞ? もっと春を見習いなさい。その人もアレクと一緒で猫被ってるんだから。
そんな3人の他に、昨日と同様居るのはーー
「は、初めまして、古賀 唯華です」
新聞部の一年生。今年の夏休みの課題として、ウチの3人の取材をさせて欲しいと言うタレ目おっとり系女子。今の所3人を狙っている節はないが、要注意人物の1人である女子だ。
「良かったら仲良くしてくれると嬉しいな〜! 特に3人とは!!」
シャワーで濡れた髪を乾かし、ご飯を食べ終わった彼女は透明人間になる可能性はほぼゼロと言って良いだろう。だからこんなにテンションが高いのか、それとも3人の容姿が良くてテンションが高いのか。
コイツらを崩すのは至難の業だぞ? ふっ。
「俺も仲良くなれたら嬉しいよ、それよりも国史の知り合いって言ってたけど何処で知り合ったの?」
「街の喫茶店で偶々会って、仲良くなっちゃって」
ある意味仲良くはなったな。あっちが平気で下着姿を見せて来るような関係ではあるが……何と言うか、アレクはいつも通りデレデレだな。
「国史に女友達が出来るなんて思わなかった」
「その、色々あってな」
「そうなんだよね! 色々……あったんだよね!」
は、はい。
俺はそれに頷きを返し、視線を逸らした。
「まぁ、良いんだけどさ……何で此処に居るの?」
「いやー……その取材に興味があるみたいな?」
「なんで疑問系なんだよ……」
ど、どうにか誤魔化せたか? 春に関しては紹介、なんてされたら怒りそうだしな。
「水瀬さんって何処のクラスの人?」
「あぁ、それ俺も気になってた。何処のクラス?」
水瀬に興味を持っているのか、翔太が水瀬へと問い掛けている。それにアレクも同乗する。
そう言えば俺も聞いた事がなかった。この学校って言うのは分かってたけどクラスは知らない。
「2-Bだよ」
「「「「「!!」」」」」
に、2-Bって……
「俺達の一つ上だったんだ! 通りで大人びてるって思ったんだ」
「ご……すみません」
「そんな敬語じゃなくて良いよ〜、もっと楽にして貰った方が私も嬉しいから」
水瀬は笑顔で否定する様に両手を振った。
知らなかった……まさか年上だったとは。通りで知らない訳だ。同じ近所でも見た事がないのは、一つ学年が違うからか。
そんな事を思っていると、水瀬は机に頬杖を着きながら言った。
「それよりも、3人は毎日此処に集まってるんだよね? 此処で何してるの?」
水瀬に言われ、3人は顔を見合わせた。
「「「国史に言われたから」」」
「え……」
俺に言われたからって、もっと自分の意見はないんか。
「国史に夏休みの思い出を作ろうって言われたから俺達は集まってるんだ」
「態々こんな暑い中、自分の意志では来ないよね」
「俺は皆んなが集まってくれて嬉しい」
……ふむ、嬉しい事を言ってくれるじゃないか。でも未だに夏休みの計画が決まっていないのは悲しい事ではあるが。
そうして俺が涙をちょちょ切らしていると、水瀬と目が合う。水瀬は怪訝そうに俺の方を見ていた。
「何だよ」
「なんでもないわよ」
小声で話しかけると、いつも通りの強い口調で返ってくる。何なんだ一体?
そして、そんな口調ながらも猫を被った表情を崩さず、水瀬は言った。
「へ〜、3人って仲良いんだね。因みに聞きたい事があるんだけど……今3人って、彼女とか居る?」
それに俺は反射的に止めに入ろうと口を開いた所で、思い留まる。
俺が水瀬を連れて来たのは、3人を紹介する為だ。彼女が『運命の人を見つけたい』という要求、目的であると知りながら俺は連れて来た。
俺は彼女を止められる立場じゃない。
その彼女の発言から少し間を置いて、春が目を瞑ってダルそうに口を開く。
「一応、誰も居ないよ」
それに2人は何も言わず、水瀬の方を見つめていた。
「そうなんだ〜! それでさー、良かったら何だけど……今度の土曜日の午後、一緒に遊びに行かない?」
「……」
そして春が此方を見て来る。それに釣られて2人も見て来る。何故俺を見て来る……?
俺がその視線を無視していると、3人の視線が集まっているのが分かったのか、水瀬が此方を笑顔で見て来る。
「入江君は来るよね?」
……視線が「来い」と言っている。
「あぁ……偶に行ってみても面白いかもな」
「だよね〜!」
本音は行きたくない。だが俺には選択肢がないんだ!
俺は内心涙を流しながら対応する。その様子を見た3人は、顔を見合わせると頷いた。
「じゃあ、行ってみようか」
「まぁ、偶には……」
「楽しそう!」
「私も行きたいです!」
等々……色々あった結果、俺は皆んなと土曜日に遊びに行く事になり、昼休みがあっという間に終わった。
「ふぅー……」
俺は4人に別れを告げ、教室で水瀬と残っていた。そして水瀬は猫を被るのをやめ、大きく息を吐いて首を抑えながら左右に揺らしている。
「貴方、友人はイケメンなのね」
「まぁな」
少し言葉に棘はあるが……自慢の幼馴染だから嬉しいな。
「あ、アレク君からの返信! 早く返さないと……」
おぉ、いつの間に連絡先を交換してたんだ……。
俺はその時、昨日の事も含んでふと気になった。
「お前さ……何でそんなに恋愛に必死なんだ?」
今まで俺は恋愛に積極的だった。周りがアレクや春、翔太だったこともあるだろう。アイツ等はイケメンだった……その為、眉目秀麗な美女が周りを囲んでいた。
だから、その近くに居た俺も勘違いしてたんだ。あの時俺はバカだった……だからこそ気になる。あんな目にまで遭って恋愛したいと思うその気持ちが。
俺が聞くと、水瀬は持っていたスマホをしまって大きく溜息を吐いた後応えた。
「私にとって恋はやらなければならない事」
「……まぁ、将来の事を考えれば恋愛はしなくちゃいけないだろうけど」
そんな今から必死になってやる事だろうか? 折角の学生生活を楽しもうとは思わないのだろうか? 友達とバカやって遊んだりしないのだろうか?
コイツが本気になれば、猫を被って友達なんて直ぐに出来ると思うんだが違うのか?
そんな疑問が尽きない中、水瀬はダルそうに壁に寄りかかった。
「貴方さっきから恋愛って言ってるけど、私が言ってるのは『恋』……恋愛とは違うから」
「は?何が違うんだよ」
「『恋』は私がその人の事を強く想う事。心からその人を好きで居られる事。『恋愛』はその人を愛し、愛されないといけない関係」
「………だから?」
「……だから貴方は童貞って事」
そ、それは関係あるのか!? というか童貞かどうかなんて分からないだろ!?
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