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第10話 責任 20:52

変化。受け入れ。

「た、ただいまー……」

「おかえり、お兄ちゃん。こんな夜に突然走り出すのは終わった?」

「お、おう、盗んだバイクは無いから走りでな」


 俺が親指を立てて答えてると、麻衣は少し不憫そうな顔で俺を見つめる……誤魔化そうとテキトーに言った事バレてるな、これは。


「雨入って来るからさっさとドア閉めてシャワー入って。そのままじゃ風邪引くでしょ」

「はい……」


 俺は()()()()()()のを確認して玄関のドアを閉める。


「今の妹さん? 可愛いわね?」


 ーー結局は『家には入れない……門もあるし、扉も直ぐに閉まっちゃうから』と言われ、俺は水瀬を入れてしまった。家の前まで来られたら入れない訳にもいかなかった。外に居るまま風邪引かれても困るし、仕方なかったんだ。


「先にシャワー入って来いよ。俺は着替え持って来る」


 俺は内心自分に言い聞かせ、リビングに戻った麻衣に聞こえない様に小さな声で水瀬へと指示を行いながら、靴を脱いだ。


「……シャワー、か」

「上がったら、透明人間になってる間に上の俺の部屋まで来い。色々お前には話す事があるから、それからーー」


 俺が階段を上がろうとすると、裾を掴まれる。


「いやいや、何をしてるのよ。一緒に居ないとダメでしょ? 1人でにシャワーの音が聞こえて来てたら不気味過ぎない?」


 水瀬は無表情で淡々と答えた。

 ……つまりはなんだ。コイツは俺と一緒に風呂へと入ろうと言っているのか?




「いやいやいや!? 流石にダメだろ!?」

「? 何してるの?」

「あ、い、いや! 何でもない!!」


 思わず大きな声で言ってしまい、リビングに居た麻衣を身振り手振りでリビングへと追い返すと、一度大きく深呼吸する。


 やばいやばい……頭の中が一瞬真っ白になった。


「そんな顔真っ赤にして、何か誤解してない?」

「え?」


 ◇


「流石に、一緒に浴室に入るなんてないから」


 俺達は2階に服を取りに行った後、脱衣所でお互い背を向けていた。まぁ、普通に考えたらそうだ。なにも一緒に風呂に入らなくても、脱衣所に居れば何とか対処出来る。


「じゃあ、私が最初にお風呂入るから。こっち向かないでよね」

「はいはい……」


 俺は立っているのもなんだと座り、膝を基点に頬杖をついた。聞こえてくる布が肌と擦れる音、濡れている所為か、今彼女がどの様な事をしているか手に取る様に分かる。


「そう言えば、お前アイツの事どうしたんだ?」


 そんな事を自然と考えているの自分に嫌気が差し、気を紛らす為に俺は水瀬へと話し掛けた。


「アイツって?」

「あの喫茶店で一緒に居た奴だよ」


 結局は戻って来た時、女と一緒に居たアイツ。その何分か前まで水瀬と一緒に居た筈なのに、水瀬を心配する事なくゆっくりしてた奴だ。


「あぁ、もう一切連絡取ってないわよ」

「ま、流石にそうか」


 此処で連絡を取ってると言われたら、流石に精神を疑う。


「良い人だと思ったんだけどね……」

「男ってのは女にだけ良い格好する奴も居るからな。そう言う奴に限って同性に嫌われてたりする」

「でも本当に良い人ではあってーー」


 水瀬の声音からはまだアイツの事を想っている様な、そんな感情が聞き取れた。


「突然居なくなる女よりも、媚び売って身体を売って来る女の方がアイツには良かったって事だろ」

「……………そう」


 落ち込んだ声に、ガラガラガラっと風呂の扉が開いたのが分かった……少し言い過ぎたかもしれない。まぁ、今までの事を整理して事実を言ったまでだ。


 俺が大きく溜息を吐いていると、唐突に隣にあった脱衣所の扉が開かれる。


「! お兄ちゃん、そんな所で何してるの?」

「ま、麻衣!? お前、俺が服に脱いでたらどうするんだよ!?」


 俺は今の緊急事態に立ち上がり、浴室に居る水瀬に聞こえるよう少し大きめな声で叫ぶ。


「別に兄妹だし、良いじゃん」

「お兄ちゃんも年頃なの! 流石に恥ずかしくなって来るの!!」


 大袈裟に反応して麻衣の反応をなるべく此方に引き付ける。


「まぁ、良いけどさ、何で入ってないのにシャワー出してるの?」


 しかし俺が猛抗議してるにも関わらず、麻衣は冷静に浴室の方を見た。

 水瀬は多分麻衣が来ているのは分かってるだろう。だからと言って途中でシャワーが止まるのも可笑しいから止められずにいる……


「え、いや、その、なんだ、」

「……何かやましい事でもしてる?」


 ぎくっ。


「いや、ただシャワーの調子が最近悪くて暫くは冷水が出て来たりすんだよ。だから出してたんだ」


 ちょっと無理な言い訳をすると、麻衣は小さく溜息を吐いて浴室へ近づく。


「待て待て待て、ちょっと落ち着いたらどうだ

「離して、腐る」


 えー……。

 俺はあまりの暴言に麻衣の肩を掴んでいた手から力を抜いた。麻衣は俺の手を振り払うと、浴室の扉を大きく開いた。


「!!!」


 あ。


「普通じゃない。お湯も出てるし……お兄ちゃん?」

「……え? あー……そうみたいだな。今入る」

「シャワーの出しっ放しも水道代が上がるからなるべくやめてよね。分かった?」


 麻衣はそう言うと、脱衣所から出て行った。


 目の前には黒髪の先から水滴を落としている水瀬の姿。何故か、前見たよりも扇情的に見える。それなりにお互いを知っているからだろうか。


「あ、あの、わ、悪い……」

「ふぅー……」


 水瀬は落ち着き払い、手で大事な所を隠しながら、足で浴室の扉である引き戸を閉めた。とんでもない顔で此方を睨みつけながら……。




 それから暫くして、扉が開いて温かい空気が身体が包み込み込む。それは水瀬が浴室から出て来た事を示していた。後ろから聞こえる布の擦れ音。それが聞こえなくなり、水瀬は俺の隣へと来る。


「ん」

「……はい」


 首で浴室の方を指され、大人しく返事をして俺は服を脱いだ。そして扉を開けると同時に聞こえて来るーー


「責任とって貰うから」


 背後の水瀬の言葉に、この後の事を考えて憂鬱になりながらも俺はシャワーを浴びるのだった。

また書き溜めに入ります。1週間後までには、また2、3話投稿するつもりです。次の投稿となると、21時半以降にはなると思います。


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