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93.ブリジット教団

 ブリジット教への勧誘を受けてから、アイリスの視線が気になるようになった。

 というか間違いなく、こっちを見る回数が劇的に増えている。

 そのことは他の3人も感じ取っているようで、なにやら微妙な顔つきになっていた。


 その状態に耐え切れなくなったユーフィリアたちが話しかけてくる。


「あなたたち何してんの? すごい怪しいんだけど」


 ユーフィリアが腕を組んでこちらを見つめてくる。


「なにというわけではないんだが……」


 俺はアイリスに勧誘されている件を告げる。

 それを聞いた3人は盛大にため息をついた。


「ああ、そういうことですか」

「何がそういうことなんだ?」


 俺がティライザに問うが、ティライザはそっぽを向いて答えない。


「なんか怪しい雰囲気だったのよね。お互いよく見てるくせに、目線が会うと慌てて目をそらしたり」


 ユーフィリアがつぶやく。

 アイリスはそうだったかもしれないが、俺は目をそらしたりはしてないんだが。


「教団への勧誘なら仕方ないな。アイリスはそういうのには熱心だからな」


 ジェミーが遠い目をする。


「お前らも勧誘されたのか」


 俺の問いにジェミーは頷いた。


「ああ。アタシはダグザ神を信仰しているので断ったんだけどな」


 まあ冒険者で戦士なら、戦いの神を信仰しているのはよくあることだ。


「私たちも一応そうだったんだけどね」


 ユーフィリアが苦笑する。


「熱心じゃないというか、どの神にも全く興味はなかったので言われるがまま改宗しました」


 いろんなことに関心がないティライザが淡々と述べる。

 こんな信者増やしても意味がないような気もするが。


「信仰ってそんな簡単に変えていいのか」

「司祭は無理ですが、たいした信仰心もない入信者はコロコロ変えてますね。特にこのブリトンでは」

「それはそれで問題ですので、協定が出来ています」


 アイリスが口を挟む。


「協定?」

「はい。一度入信したら2年は同じ宗教を信仰しないといけないルールになりました。通称『二年縛り』です」

「ケータイかな」

「はい?」


 前世の言葉であるケータイという概念が通用するわけもなく、俺の言葉に4人は小首をかしげるのみであった。


「それを破ったら?」

「罰金があります」

「その教団生臭すぎない?」

「失礼な。全教団共通のルールです」


 アイリスは少し怒った顔になった。


「まあそういうわけで、ちょうど2年縛りが切れるタイミングだったこともあり、ブリジット教徒になったのです。私とユフィは」

「特に活動とかはしていないけどねえ」

「入信者なんてそんなもんです」


 ティライザとユーフィリアが何の気なしに会話をする。


「そういうわけで、入団する気になりましたか?」

「うーん」


 まあ特にめんどくさいことにならないのであれば、別に入ってもいい。

 冒険者ギルドだって登録はしているからな。

 全く利用してないので登録した意味はほとんどないけど。


「入る理由がない。メリットがわからない」

「ほう、ではアイリスに夜通し信仰のすばらしさを聞かされたいのですね」


 俺の答えにティライザが目を細めた。


「全力でお断りだ」

「じゃあそれがメリットです」

「もはや脅迫じゃねえか」


 俺は小声でうめく。



「解決策は?」

「どれかの教団に入ってしまえば『2年縛り』が発生しますので」

「俺なら罰金なんて楽勝で払えるな」

「じゃあ逃げ場はないですね。本気でダグザかアンガスを信仰するなら、アイリスもしぶしぶ納得するでしょう」


 そんな神を本気で信仰する気など起きないな。

 どうせ信仰するなら自分だろっていう。


「やはりブリジット教団のすばらしさを体験してもらうしかないですね」


 アイリスが「うふふふ」と不気味に笑う。


「さて、私たちは用事があるから……」


 3人はそんなアイリスを見てそそくさと立ち去った。

 裏切り者め。

 アイリスは俺の手を掴むと転移するのであった。






 俺たちはブリジット教団本部に入っていく。

 建物の案内をしながら、良さを説明でもするつもりだろう。


 しかし、慌てた職員がアイリスに駆け寄ってくる。


「アイリス高司祭、ちょうどよいところに。急患です」


 職員の説明を聞くと、アイリスは頷き走っていった。


「すいません。教団は医療施設も兼ねてますので」


 職員が謝罪する。ミックと名乗った。

 軽い怪我であれば薬草などをぬって済ますことも多いが、重症となると魔法に頼るほかない。

 優秀なヒーラーは引く手あまたということだ。


「別にいいさ。じゃあ俺は帰るかな」

「そ、それは困ります。俺が怒られてしまうので案内させてください」

「いや、この建物にそこまで興味あるわけじゃないからさ」

「ああ。なるほど……」


 ミックはいやらしい笑みを浮かべる。


「そちら狙いでしたか」

「何の話かな」

「むっふっふ。アイリス高司祭に興味があるんでしょう?」


 ミックは人の話を聞かず、一気にまくし立てる。


「ブリジット教団は最近男性信者が急増中ですからね。みんなアイリス高司祭狙いですよ」

「いや、だからさ」

「狙いって言ったって本気な奴はそんなにいませんけどね。誰でも分け隔てなく接してくれるので、それだけで満足なんですよ」

「お、おう……」


 俺は若干引き気味である。

 まあアイリスが美少女なのは間違いがない。

 慈愛の神の敬虔(けいけん)な司祭。


 冒険者としてもヒーラーとしても、非常に高い能力を持つ。

 勇者パーティーの一員ということもあり、その評判はローダンだけには留まらない。

 しかもお高く止まった司祭とは違い、一般信徒と触れ合うのだから人気が出ないわけがない。


「そういうわけで入団ということでよろしいですね?」

「いや、よくないけど」

「むむ。なかなか粘りますね。でもこういう時用の秘密兵器があるんですよ」


 ミックは1枚の写真を取り出した。

 アイリスの写真である。

 何気ない日常の盗撮写真であった。 


「へっへー。いいでしょう。通常1枚100ポンドです」

「高すぎぃ」

「真夏の薄着のときの写真もありますよ。それはもうムッチムチでエロエロです。入信者限定販売ですがね」

「この教団色々ダメなんじゃないかな」

「……私もそう思います」


 後ろから声がかかった。よく知った声が。


「はあああぁぁ。アイリス高司祭っ」


 アイリスはさっさと治療を終えて戻ってきたようだ。

 ミックは激しく動揺し、その場から逃げ出そうとする。

 しかしアイリスに腕をひねられ、身動きが取れなくなった。

 

「あなたたち……まだ神の教えが分かっていないようですね」


 アイリスの目つきが怖い。これヤバイ奴だ。


「ちょっと待ってほしい。俺は関係ないんじゃ」

「問答無用っ」


 俺とミックは腕をつかまれ、懺悔(ざんげ)室へと連れて行かれた。

 そして数時間にわたって説教をうけるのであった。

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