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それでも異世界は輪廻っている  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第一部 ゲームから出られなくなった俺を助けてくれたのは、キモデブ悪役令息と犬耳幼女メイドだけでした
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第8話 冒険者登録


 俺がアルのダンジョンのパーティーメンバーになってパシられることを、クラスメイトに告げるとみんな何とも言えない顔になった。


「上位貴族の方たちに女みたいに扱われて一生その傷を背負って生きていくのと、3年間こき使われるのとどっちがいいと思う?」


 そう言うとどちらも嫌だが、その二択だとならと納得してくれた。


 カイルたちとすれ違ったときにプラムちゃんはごめんねって言ってくれたし、アイリスは非常に申し訳なさそうに俺を見ていた。

 女の子たちはまともで優しい。


 でもカイル、お前はダメだ。クソ不正プレイヤーが!


 ぜってぇー目にもの見せてやる。

 お前が女の子に鼻の下を伸ばしている間にこのゲームを終わらせてやるんだ。

 全部攻略できなくして、ざまぁしてやる!


 それでアルたちと一緒に、俺の冒険者登録とパーティー登録をするために週末に冒険者ギルドにいくことになった。




 この世界は異世界なのに、日本と同じ曜日や時間でクリスマスなどのイベントもあった。


「本当は似た行事なんだけど、僕らがそう認識していると思っていいよ」


 とのことである。


 土曜日になって待ち合わせ場所である冒険者ギルドのロビーに向かうといつもと違うローブ姿のアルがベンチに座っていた。なにやら薄茶色のフカフカのぬいぐるみを膝にのせている。

 冒険者の女性たちがなにやら話かけていたが、アルは微笑みながらいなしていた。

 クソっ、これだからイケメンってヤツは。

 アイツ、ぜってぇーたらしだな。


 俺の非難の眼差しに気が付いたのか、アルはこちらを向いた。


「やぁ、リアン」


「こんにちは、リアンさん」


 フカフカのぬいぐるみもこちらを向いて挨拶してきた。エリーちゃんだった。

 長い耳が折れている。斜め掛けのメッセンジャーバッグを持っている。

 こんな格好、ゲームにないぞ?


「どうしたの? エリーちゃんはなんでそんな格好?」


「いつもの姿だと僕がアルフォンスだとばれるだろ。それにこれは戦闘用のパワースーツなんだよ。ちなみに兎だ」


 ワンコなのに? なぜに?


「これきると、ものすごく早くはしれる、けりがとくいになるの、そーげんむきよ」


 エリーちゃんはやる気に満ち溢れている。

 2人はニコニコしていたが、シャドウキックボクシングを見せてくれてなかなか物騒だ。



「今日はリアンの初討伐だから、草原で薬草と兎を狩ってもらう。僕たちも狩るけどメインは君だ」


「OK、これでも魔法剣士だから。ちゃっちゃとやるよ」


 このゲームでは初めてだけど、VRでの戦闘は慣れている。魔法剣士職についたこともある。それにリアンは戦闘経験が豊富でかなり動けるキャラなのだ。


「草原は火が回りやすいので火魔法禁止だ。他も使えるか?」


「風も使える」


 ステータスが見られないから、授業で確認済みだ。

 水も使えたらよかったなぁ。攻略の時に水筒を持っていかないといけない。


「わかった。では兎を探しつつ、薬草を取っていこう」


 登録を済ませると、俺だけ冒険者のルールのレクチャーがあるそうな。

 待たせて悪いなぁと思ったら、「僕らは指名依頼があるみたいだから、ゆっくり聞いててくれ」だそうだ。



 俺はギルドの受付のお姉さんの話を聞いた。

 この人も冒険者編で攻略ヒロインになるマーガレットさんだ。マギーと呼ばれている。淡い金髪に濃い黄色の瞳の持ち主で、清楚な容姿だがなかなかの元気者キャラだ。


「それではリアンさん。簡単に冒険者の仕組みをお伝えしますね。冒険者はランク制で下はFからE-D-C-B-Aと上がり、国に貢献するような英雄にはSランクが与えられます。あなたは今日からなのでFランクです。優秀なアル君がついているのですぐに上がりますので頑張ってくださいね」


「はい、ちなみにアルって何ランクなんですか?」


「彼はDランクですが、いつでもC、いえBに上がれます。エリーちゃんがEランクなので、急いであげたくないそうなんです。妹思いですよねー。エリーちゃんはどんな面倒な雑用でも丁寧にやってくれて街の人気者なんですよ。いつもフカフカの着ぐるみ着てるんですけど、抱っこさせてくれないのが残念です。リアンさんはもう抱っこされました?」


「いえ、俺もないです」


「ですよねー。抱っこさせてもらっていたら、嫉妬でぶん殴ろうかと思っていました」


 やめてください。結構過激だな、マギーさん。


「依頼はランクごとに受けられるものが変わります。リアンさんですと1つ上のEまでです。アル君と一緒なら、Cのソロ向けの依頼も受けられますけど足手まといなるのでやめてくださいね」


 だんだん口が悪くなってきた。こっちが本性だな。

 つまりランクはパーティーメンバーの一番上に合わせることになるってことか。

 やめろって言われたのは、レベル上げの養殖は推奨しないってことだ。



「パーティー内での取り分などは自分たちで決めてくださいね。ギルドはそう言ったことに口を挟みません。個人的に指名された仕事の取り分もきっちり決めてくださいね。アル君はそういうみみっちいことを言いませんが、他はパーティーにお金を入れろという人は多いです」


「そういうのでもめるケースってどういう時ですか?」


「一番多いのが回復術士ですね。治療院などから指名依頼が来ることがあるんですよ。でもその人がいない間、メンバーが欠けることになるので高レベルの仕事ができないじゃないですか。つまりケガしない程度の実入りの悪い仕事をすることになる。だから金を寄こせって話になるんです」


 でもやってもいない仕事の金を寄こせってひどい話だな。

 確かにアルはそんなことを言わないだろう。国一番の金持ちの子どもなんだから。


「あと冒険者同士のケンカはご法度です。そういうのは闘技場で決闘を行ってください。ギルドが立会い、勝敗を決めます。その決闘は見世物となり、収入はギルドのものです」


「でも高ランクから吹っかけられたら勝てないじゃないですか?」


「自分より低いランクの冒険者に決闘は申し込めません。ただそれを悪用してDやCランク相当の冒険者がEランクのふりをしていることがあります。装備のいい冒険者から巻き上げることで生計を立ててるんです。絡まれたくなければあまりいい装備でギルドに来ないことです」


「わかりました」


 ケンカすら金儲けに利用するってことか。でも公正になるからその手間賃と考えれば高くない。

 初期から高額装備にするのはPKを呼び込むだけだから、それと同じだな。


「死亡した冒険者を発見した時にはギルドカードを持ち帰ってください。カードを持ち帰った場合だけ、なくなった方の財産である装備や持ち物を受け継げます。持ち帰れない場合でも報告義務があります。わざと死地に追いやったりする悪い冒険者もいますので、気を付けてくださいね。ギルドはよほど目に余る場合でないと調査できませんのであしからず」


 はいはい、自分の身は自分で守れってことね。


 あと報酬受け取りのための口座が作れるので、個人のだけ作っておくことにした。

 アルにパーティー用口座を作るか聞いておかなければ。


 他にもスタンピードの時は全員出動しなくてはならないなどを聞いて説明は終わった。



お読みいただきありがとうございます。


アルのセリフが「アルフォンスだとバレる」とありますが、亡くなった本物のアルフォンス=レッドグレイブのことをアルフォンス君、アルフォンス=レッドグレイブの存在のことをアルフォンスと言っています。誤字ではありません。

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