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それでも異世界は輪廻っている  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第一部 ゲームから出られなくなった俺を助けてくれたのは、キモデブ悪役令息と犬耳幼女メイドだけでした
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第61話 全部ハリケーンのせい


 逃げるようにアイリスの前から立ち去った俺は一緒に帰ろうと待ってくれていたサリーたちにそのことを伝えると2人は絶句していた。そんなことになるとは思ってもいなかったようだ。彼女たちだけでこの要望を断ることは出来ないだろう。


「まさかお金の無心をアイリス様にされるとは思ってなかったわ」


 サリーの気持ちはよくわかる。俺もまさかあの清廉潔白な彼女が俺を脅すようなことを言うなんて思ってもみなかった。


「私にプラムさんの代わりに魔力を使えってことなの? あの人まあまあ強いよね?」


「正直、どのくらい強いのか俺にもよくわからないんだ。確かに君の魔法陣を使えばそれなりに魔力の温存になるとは思う。でも君たちの能力はとてもじゃないが魔王城まで行けるとは思えない。だけど俺の立場では断れないんだ。申し訳ないが自分で断って欲しい」


「そんなの……できるわけない」


「だよなぁ」


 平民にとって貴族からの命令は絶対なのだ。そうしなければ殺されても文句は言えない。サリーが不安そうに聞いてきた。


「リアン、どのくらいお金を払えば解放してもらえると思う?」


「わからないがウォルフォード伯爵家の借金が返せるくらいじゃないか? たぶん魔王討伐について行った方が安上がりだと思う」


「あの伯爵領が買えるくらいってことよね。ウチの店でもさすがに払えないわ」


「チェリーに関しては、他の魔法陣士を差し出す以外ないと思う……でもそんなのいたら、すでに誘っているよな」


「そうね、魔法陣士は器用さと頭がいるから、なり手が少ないの。私がキースと婚約できそうなのもそのおかげだもの」


 3人でお通夜みたいになってしまった。今のままならほぼ死にに行くようなものだ。俺はなんとか2人が魔王討伐に行かなくてすむ方法を考えて誘導することにした。



「誰かアイリス様を止めてくれるような人はいないだろうか?」


「生徒会長のリリー・ペンシルトン様は? あの方なら幼馴染で親しいと伺っているわ」


「俺は音楽の授業で一緒だけれど、知り合いでもないのに声を掛けていいんだろうか? 中等部から一緒のチェリーの方がまだいいんじゃないか?」


「だ、ダメよ! 私だってお話したことないもの」


「そっか、じゃあ他に誰かいないか? 教師とかなら紹介されてなくても話しかけられるよな」


「ペンシルトン公爵家に頼みごとが出来るような教師なんかいないわ。ウチも取引はあるけどあちらのご要望がない限り、みだりに近寄れないし」



 あーだこーだしばらくやりとりして、やっとチェリーから俺の期待する提案が飛び出した。


「婚約者で次期伯爵様の、アルフォンス=レッドグレイブ様は?」


「生徒会長と同じじゃねーか? 伝手がないと話しかけられない」


「チェリー、キースに頼めないかしら? 今は同じ男爵家じゃない」


「彼に迷惑を掛けたくないんだけど……」


「迷惑かどうかは聞いてみたらどうだ? そうすれば2人を行かせないようにできるかもしれないし。死んだら元も子もないんだぞ」


 ホントのこと言うと俺が直接アルに言えばいいんだが、理由もなく2人を連れて行かないように言ってもらう訳にはいかないからな。


 それでこのままキースの元へ向かうことになった。



 一応チェリーは内々定の婚約者なので、ドレナー男爵家の客間へ通された。キースは夕食が済んだばかりのようできちんとしたドレスジャケット姿で現れた。


「一体どうしたんだい? こんな急な呼び出しはマナー違反だよ」


 基本的に貴族との面会は前もっての約束が必要だ。身なりを整えたり、おもてなしの準備をしたり出来ないからだ。でも緊急事態の場合は別だ。


「ごめんなさい。アイリス様がリアンだけじゃなく、私やサリーも魔王討伐に連れて行くというの」


「申し訳ありません。俺がアイリス様に目をつけられたばっかりに……」


 俺がアイリスに誘われたときに、2人とパーティーを解消されないように連れて行きますよって言ったのが良くなかったのかな。まさかこんなに弱いのに連れて行くなんて本気なのか?


「いや、それはわかっていたが、君たちはまだそんな能力がないだろ?」


「サリーは財力を、チェリーは魔力を当てにされています。なんだか相当焦っているご様子です」


 キースはそれを聞いて顎に手を当てて考え込んでいるようだ。


「確かにチェリーは魔法陣を扱えるようになりましたし、全属性で魔力も強いです。それで功績を立てるために魔王討伐と言うのは危険すぎます」


「うん、そうだね」


「同じ年頃で魔法陣士の女性は他に見つからないと思いますよ?」


「ああ、それは間違いない。チェリーとの婚約が父に認められたのも彼女が魔法陣士の才能があるからだし」


「キース様の身売りの危険を避けるためにも、彼女との婚約は継続した方がいいと思われます。魔王討伐でなくても、新しい魔法陣の開発などで功績を上げればいいんです。それでアイリス様を止めるためにもアルフォンス=レッドグレイブ様をご紹介いただきたいのです」


 するとキースはものすごく困った顔になった。


「難しいのですか?」


「いや、できなくはない。ないけど……返せないほどではないがウチも借金がある。できれば近寄りたくないというのが本音だ」


「ではリリー・ペンシルトン様では?」


「母が入っている派閥と少し違うんだ。母は現王妃様の派閥で、王太子妃様はご自分の派閥を作っておられるからね」


 現王妃様はペンシルトン公爵家と違う公爵家の出で、以前は対立もしていたそうだ。だが3年前のハリケーンで大きな被害に遭い、今は力を落としている。それでも派閥としてはこの国最大のものだ。王太子妃が王妃の派閥に入ってくれればすんなりと行ったが、以前の対立もあり別派閥を立ち上げているので親しくしづらいという。


「元々ペンシルトン公爵は宰相をされているので、権力の一極集中を防ぐため王太子妃は別の方だったのだよ。だがその方の領地もハリケーンでの被害が大きく、王太子妃を辞退されて支援目当てに他国へ嫁がれたのだ。それでペンシルトン家のご令嬢が嫁がれることになったんだ」


「確か婚礼直前だったよね。ハリケーンで公爵様が亡くなられて、お若い弟君が公爵位を継がれてとても持参金を出せないからって辞退したのよ」



 うわぁ、ぜんぶ3年前のハリケーンのせいじゃん。

 アルフォンス君との婚約で剣聖アイリスの力を削ぎ、復興のために財力を減らし、貴族たちを流出させて国力を下げる。どうすればこの国に大打撃を与えることが出来るのか悪魔の方も考え抜いて起こしたんだ。相手はたった一撃でそれを達成したのだ。


 俺の考えをよそに、キースとサリーの話は続いて行く。


「サリー、良く知っているな」


「ウチの店がご令嬢の婚礼道具を注文いただいていたの。全部キャンセルになって大変なことになるところだったわ」


「ならなかったの?」


 チェリーが素朴な疑問を持った。それなら相当な損失だからな。


「そのままペンシルトン公爵家のご令嬢用になったの。婚礼道具は王家からの注文でもあったし、外国の要人も招いていたから結婚式の日取りを変えられなかったの。ハリケーンにやられても健在であることを示すためにね」


 そっか、つまり花嫁を差し替えることで面目を保ったのか、でも一生に一度の結婚式が他の人の支度だったってのはちょっとかわいそうだな。それもあって王妃の派閥に入りたくなかったのかもしれない。

 っていうかサリーの家って王室御用達じゃん。その跡取り娘ならそれはかなりの逆玉だ。花の名前だったら絶対ヒロインだったよな。


「今ペンシルトン家に声を掛けるくらいなら、まだレッドグレイブ家の方がマシだ。手紙を書く許可をもらうから、数日待って欲しい」



 そうしてドレナー家からレッドグレイブ家への紹介状をしたためてもらい、面会の希望とその目的を提出すると答えは面会しないだった。

 理由はアイリスとの婚約解消に動いているため、彼女を説得する気はないとのことだった。


 アル~! それじゃダメなんだよ‼


お読みいただきありがとうございます。


3日ごと19時と決めていたのですが、自転車操業ではやっぱり難しいですね。ためてからアップした方がいいかと悩んでおります。

どうぞよろしくお願いいたします。

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