第50話 2度目の冒険者登録
サリーたちとの話し合いの2日後、今度はキースがやって来た。
「Bクラスのキース=ドレナーだ」
もちろん知ってるけど、貴族しかいないBクラスと聞いて慌て跪いて貴族に対する礼を取ったようにふるまった。リセットのせいでみんなの記憶がない。面倒くさいな。
「Cクラスのリアン=マクドナルドでございます。何か御用でしょうか?」
「私は男爵家の人間と言っても三男でほぼ平民に近い。そんなにかしこまらなくていい」
「恐れ入ります」
「先日、私がリーダーを務めるダンジョンパーティーのメンバーが君と組みたいと言ってきたと思う」
「サラ=リッドさんとチェリー=ウィンターさんですね」
「そうだ。それで君は受けるつもりなのか?」
「2人がそちらを辞めて来ると言うなら受け入れるつもりでした。ではドレナー様のご用件はその断りでしょうか?」
「いや、まだそこまでは決めていない。サリーが私の仲間を恐れていることはわかっているし、チェリーもまた邪険にされているのも残念ながら事実なのだ。話と言うのは別のことで魔法陣の事だ」
ああそういや、ドレナー男爵家は魔法陣士の家柄なんだっけ。
それで俺はキースからどういった形で刺繍の魔法陣を見たのか聞かれた。リアン君が見たことがあるのは浄化と防御陣だ。北部ではケガ人を手当するところにデーモンや獣が来ないように魔法陣が刺されたテントがあるのだ。同じ刺繍かは知らないが、確かそんな感じだったと思う。
「なるほど、最前線ではそういうものが使われているのか……」
「はい、ですが北部でも貴重なもので俺も1度しか見たことがありません」
「君はチェリーにそれが出来ると思っているのか?」
「……正直、わかりません。刺繍の技術だけなら可能だと思いました。ですが彼女は何というか覇気がありません。Cクラスの座学にはついていけると聞いていますが、戦闘になるともっと敵を倒そうとか、みんなと戦おうとかそういう強い気持ちも必要です。向上心はあるけど程ほどでいいという甘えのようなものも感じます」
「厳しいな……、でも最前線にいたらそうなるだろうね。今貴族社会ではあまり突出することを望まれていない。彼女はそれを見越して控えめにしているのだと思う」
それはちょっと違う。キースと婚約した途端、急に張り切り出したし、実力が伴わず空回りしていた。実力を出すにもそれなりに準備が必要なんだよ。多くの人が初めて触った知識のないゲームで高得点なんか叩き出せないのと同じだ。あと目標がはっきりあるといいのかもね。
「もしかしたら何かご褒美のようなものが必要なのではないでしょうか? 魔法陣が上手く言ったら待遇を改善するとか、願いを叶えてあげるとか。ですが俺は彼女たちの事を良く知りません。それはドレナー様の方がよくご存じでしょう」
ふむとキースは考え込んだようだ。
「貴重な情報をありがとう。一つ忠告だがそんなに情報を簡単に流さず、自分の利を求めることも必要だよ」
「こちらこそ貴重な助言をありがとうございます。ですが俺はこの魔法学園では右も左もわからない新参者です。ドレナー様とのお近づきの印ということでお願いいたします」
俺だって例えば北部に帰って防御の魔法陣を写してこいとか言われたらちゃんと断るよ。それくらいの判断はしている。
それで俺は前回と同じく、アルと接触を試みることにした。というか庭で水やりをしているエリーちゃんに近づくことにしたのだ。
だけどいくら探しても彼女はいない。どういうことだ?
毎日日課のように朝食後は花壇や木々に水やりして、時間があればおつかいクエストに行くんじゃないのか?
いくらなんでも面識もないのに平民同然の俺が直接貴族寮に向かう訳にも行かない。夜になってもどうすることも出来なくてウンウン悩んでいたら、俺の部屋の窓を小さく叩く音がした、窓に駆け寄るとそこにはミランダがいて、口に手紙を咥えていた。
「ありがとう、ミラ」
(どういたしましてなの。これ、よろしくなの)
俺が手紙を受け取ると彼女は尻尾で俺の頬を撫でて帰っていった。
内容は出来るだけゲームに似せた状態にして、カイルを油断させて早急に魔王討伐に行くとのこと。だから俺にアルやエリカとの接触は表立ってはしないようにと書いてあった。エリーちゃんは姿を隠しているとのこと。
俺にはどこかのダンジョンパーティーに入る努力をしながら入らないようにすること。そして入れなかったために冒険者ギルドに行ってレベル上げすることを宣言し、出来るだけ早い段階で登録すること。
そうしたらアルフォンスとは出会わなくても、冒険者アルとエリーには会えるのでそこでパーティーを組む事にすることとあった。
その指示に従って翌日も俺はダンジョンメンバーを頑張って探すことにした。
まずは俺にいろいろ情報を教えてくれた例の文官科のヤツに声を掛けてみる。彼は他のメンバーよりも人当たりがいいので、同じパーティーの女子と仲がいいから余裕がある。しかもBクラスの貴族もメンバーで今すぐ新規メンバーを決められないのだ。
「頼むよ。助っ人でもいいから1度入れてくれないか?」
「俺はいいけどみんなが何て言うが……」
「じゃあちょっとだけでいいから聞いてみて。頼むよ。俺みんなに能力が伝わるように冒険者になってレベル上げするからさ」
「うーん、じゃあ聞いてみるだけな。期待しないでくれよ」
これで冒険者ギルドに行く宣言も出来た。つまり今日の内にギルドに行けってことだな。
1度経験しているおかげで、特に怪しまれずに済んでいるみたいだ。それにしてもリアン君はどうやってパーティーを組めたんだろう? 本当に誰も入れてくれなかったよ。
2度目の冒険者登録のためギルドに行くと、そこにはエリーちゃんがウサギの着ぐるみを着て俺を待っていてくれた。この世界に着ぐるみなんかないんだけど、これを着ることで彼女が聖霊と認識されないようになっているんだそうだ。
「エリーちゃん、会えてよかった。2,3日会ってなかっただけなのに、なんだかとっても久しぶりな気がする」
「ごめんね、リアン。わたし、ごようじがあったの」
「もう大丈夫なの?」
「うん、おにいさまがあとではなしがあるって。だからさきにとうろくをすませてね」
俺は窓口でマギーさんにエリーちゃんのことで嫉妬されながらも冒険者のルールを聞いて2人の所に向かった。
「これから魔王城へ行く」
うっ! わかっていたけど、俺のレベルで大丈夫だろうか?
これで負けたら、俺は帰れなくなるかもしれない……。
「カイルは君のアカウントを不正利用しているから、君が魔王を倒せばこのゲームは終了するはずだ。基本的には主人公が勇者になるけれど、ゲームのログとしては勇者パーティーは魔王を倒したと出るから、君が勇者である必要はないと思う。必要な物資は僕のストレージにある。君は魔王に止めを刺して、生き残るだけでいい。何か質問は?」
「勇者にならないから、レベル上げも必要ないってことか?」
「それもあるけど、君はすでに下級デーモンを倒しているから、魔王城への切符を手にしているからだ。ダンジョンでの妨害工作のおかげだね」
怪我の功名って、こういう時に使うんだっけ?
何かに失敗したわけじゃないから違うか。
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